Archive for August 2008

31 August

「ドームプロジェクト」

artist file "tanebito" [Archives #6] 
小林 一郎 さん(ドームビルダー / Dome Project




___まず、「フラー・ドーム」を開発したバックミンスター・フラー(1895〜1983米国)の話から伺わせてください。

 フラーがドームのことを考えたのは、1960年代後半です。だけどドーム以外にもいろいろなことを考えていて、世界を一つの生命体と捉えて、地球の様々な問題をシミュレートする「ワールドゲーム」というものを考案したりして、ノーベル平和賞の候補になったこともある。「宇宙船地球号」というのは、フラーが唱えた言葉なんです。
  それ以前にも、T型フォードの時代に流線型の車を作ったり、航空機産業の技術から、B29戦闘機の合成金属を使って円形の家を作っていたんです。ユニットバスの原型もフラーが提示したんです。それから、地球を正20面体で表して「ダイマクション・マップ」という世界地図を考案しました。地球儀を、一番歪まない平面で表すことが出来る。
 本当は、ドームは球体なのですが、地球は引力があるから仕方なく半分に切っている。どこかに置かなくちゃいけないですからね。球だと一点で支えることになってしまう。でも宇宙に打ち上げてしまえば、丸い方が自然でしょ。惑星だって丸いし。雨も無いし、空気抵抗も無いし、力のバランスだけ。そこで最少の材料で強いものを作ると言ったら、球体にならざるを得ない。
 ただし、これが現実的かと言ったら、ドームという発想までは良いけど、ハウスとなると確かに問題がありますよね。「そこから先は君たちがやってくれ」とフラーが言っているような気がします。(笑)

___フラーは、その辺について何かヴィジョンを持っていたのでしょうか?

 フラーは、もっと先へ行っちゃったみたいですね。

___もっと先?

 コンクリートで大きな球を作る。直径7kmの!(笑)
 そうして、外より温度を2℃高くすると、風船のように浮くと言ってるんです。空中浮遊都市。
 それはNASAから予算をもらって、当時の建築技術で可能だ、というところまで行ったけど、それで終わっちゃった。核戦争で放射能だらけになったらこれしかないだろう、という発想だったようです。

___フラーはそこまで考えていたんですね!

 発想が大きすぎて着いて行けなかったのかも知れないですね。今になってフラーの予言が証明されたりしています。フラーレーンと呼ばれる炭素原子の最強構造も、90年代になって見つかりました 。

___フラーについてはかなり研究されたんですか?

 英語の本を読める訳ではないのですが、面白い出逢いがあったんです。
 フラーの晩年に、2年間助手をしていた梶川泰司さんという方がいて、フラーが亡くなった後、帰国して広島大学でフラーの研究所を持っていたんです。それが引っ越すという時に、たまたま縁があって、小田原で研究室を構えていたんです。その梶川さんが南足柄の丸太の森でワークショップをなさる、というのを偶然に新聞で見て、すぐに会いにいって自己紹介したんです。その頃ちょうど、寄(やどろぎ)の山の中にドームを作っていたのでお連れしたら、「一緒に仕事をやらないか」と誘われた。
 梶川さんは東京でドームの会社を興そうとしていたんですね。ところが、実際に建築の知識のある人がいなかった。梶川さんは日本人で唯一フラーと懇意にしていた方ですから、非常に名誉のあるお誘いだったんですが、僕は組織に入るのが嫌だったので、木造ドームのキットを供給するという形にしたんです。それで、2年間ほど『ドームプロジェクト』の名前を伏せて、梶川さんの『デザインサイエンス社』を通して仕事していました。
 なんと隣町にそんな人が越してくるなんて、奇跡ですよね。(笑)



___最初は、四畳半の部屋の中に「フラー・ドーム」を作ったそうですね。

 アマチュアバンドやっていたので、友達の庭にログハウスでスタジオを作ってしまおう、ということが始まりでした。
 『ウッディライフ』とかアウトドアの本を読んでいたら、たまたまそこに「フラー・ドーム」が出ていて、面白いなと思って画用紙で模型を作ったんです。そうしたら、どうしても中に入ってみたくなってしまった。(笑)
 「これのデカイのを作れば、それは家だしスタジオじゃないか」って思って、真四角の四畳半にピッタリ収まるように逆算して、ケント紙で三角形を百数十枚使って作ったんです。「四畳半内接フラー・ドーム」ですね。
 それで、内側へ入って、人生変わっちゃった。サラリーマンやってる場合じゃない、って。(笑)

___それほど衝撃的だったのですね。

 家を建てるというのは、四角い物の集合だとしか思ってなかった。それが三角形で出来る、柱が要らない。最少の材料で、広い空間で、しかも丈夫。
 三角形という平面をくっ付けていって丸くなるからドームは面白いんです。僕はそこに惹かれたんです。ツルツルの丸い壁が出来ても、ポスターも貼れないし(笑)。自然界のものを見ると「正方形」なんて無いでしょ? 今は四角いものばかり建っているから丸いものが目立ちますけど、そのうち逆になるかも知れないですよね(笑)。
 まぁ、建材が四角いものばかりですし、四角い方が便利だというのも分かりますが。

___集合住宅となると、四角い方が効率が良い?

 地震があって急いで住宅を作るような時に、確かにドームならば大きくて丈夫な空間をあっという間に作れるので良いのですが、プライバシーということになって仕切ってしまえば、ドームでも何でも構わなくなってしまう。かと言って、小さいドームをいっぱい作っても、道路は四角いから、四角で囲われた中では効率よく配置出来ない。やっぱりドームは若干不利になりますね。
 それ以上に、僕は音楽をやっていたので、内部にスピーカーをセットしたら、今までと全く違う感覚があった。スピーカーと自分の位置の組み合わせを偶然見つて、ビックリするような音像を体験したんです。まだデジタルの時代ではなかったので、テープに録った音楽にはノイズがあったんですが、それが相殺されちゃうんです。しかも、音源の位置が分からなくなって、空中にいたままヘッドホンをしたような感覚になる。「これはスゴイ!」とビックリして、それから半年はそこへ籠ってた。(笑)
 その頃、アメリカにドーム建材のメーカーが2社あって、キットを日本で輸入していたんです。僕もそれを買って一棟建てようと思ったんですが、すごく高い値段だった。本来は最少資源で作れるものなのに、それはおかしいと思って「じゃぁ自分で作ろう」となったんです。無謀にもそれから一年後に会社を辞めて、建築は全くの素人だったのですが、最初は失敗もしましたが3年目くらいで工法を確立しました。

___当時、日本ではドーム建築を手がけている会社はなかったんですか?

 まだインターネットのない時代でしたから雑誌などで調べたら、村上さんという方がいらして、その方が『ドームプロジェクト』という名前で8棟ほどドームを建てていたんですが、辞めて全く違う分野に行ってしまった。
 その『ドームプロジェクト』という名前が良かったので、僕が名前だけ引き継いで、その後100棟ほど組み立てました。



___ドームハウスの魅力はどんな点でしょうか?

 僕が最初に組み立てたのは四畳半に内接させたドームでしたが、その時は空間の面白さに圧倒されました。ドームを組み立てる時に、最後の頂点の部分は必ず僕が仕上げるのですが、その度に美しいと思うんです。僕は高所恐怖症なのですが、丸い上は大丈夫。(笑)

___内部の空間が丸いということで、居住性や居心地はいかがでしょう?

 よく「丸いと不便ではないか」と言われますが、壁に家具を密着させる必要はないんです。家具で間仕切りにする、という発想にしてもらえればいい。
 それから、ほとんどの場合、中二階になさいますね。土地が大きい場合は全二階にして、上は本当のワンルーム。

___空気の対流にも都合が良い。

 四角い家だと、四隅に空気が溜まるんです。長い間には、四隅からカビが生えてくる。
 ドームでは、温かい空気が上で冷やされて壁沿いに降りてくる。頂点にシーリング・ファンを付けるだけで、冷暖房は物凄く効率が良い。

___エコな建築ですね!

 エコです。そもそもフラーの「最少資源で最大効果」という考えに僕は惹かれたんです。三角形のパネルを組み合わせるというのも、全部が筋交いになるわけですから、これほど合理的なことはない。

___小林さんの組み立てたドームで、実際に暮らしている方がいらっしゃるんですね。

 最初の2〜3年は、ほとんど別荘ばかりでした。それも、フラーということで惹かれて建てた方ばかり。キットだけ渡してセルフビルドで組み立てるというワケには行かない人が多かったので、僕も現地に行って建築を手伝いました。そのうち建築会社と組むようになって建築を指導したり、自宅としての需要も増えてきました。

___ドームハウスは魅力的ですが、土地が必要ですね。

 まぁ、そうですね。土地は必要です。(笑)
 ただ、同じ容積で較べると建築費がかなり安く済む。

___建材が少なくて済む、ということですね。

 普通に考えれば、一つの空間といえば12畳くらいが限界でしょう。それ以上になると、柱や梁や壁が必要になる。ドームならば、僕が手がけたうちの最大は、直径13.5m。それでも柱が要らない。とにかく、空間が広い。しかも、組み立てはプロの人がいなくても2日くらいで出来てしまう。

___ドームハウスの建築は、受注でなさっているのですか?

 ここ7〜8年は、多い時で年間10棟くらい建築しました。
 昨年は、横浜で学童保育の為の建物を手がけました。直径10mのサッカードームで、正五角形と正六角形のパネルを組み合わせたタイプです。2棟を隣接させて、キッチンやトイレやバスなど家としての機能は片側につくって、もう片側は子どもたちのスペースとして広く空間をとりました。中はどんな区切りにも出来ます。中二階がつくれるほどの高さがありますが、ここではあえてワンルームで使っています。

___広い空間がつくれるだけでなく、天井が高いですね。

 天井が高いのは気持ち良いですよ!
 国産でドームハウスを組み立てているのは、僕ともう一人九州でやっておられる方と、二人だけなんです。大手の建築会社でアメリカからの輸入物を扱っているところがありますが、輸入物は価格が高いこととサイズが大雑把なものしかないのですが、ウチはバリエーションもあって細かいことも出来るし、しかも安く組み立てることが出来ます。競合になれば負けない自身があります。
 ただ、なかなか良さを分かってもらえなくて、まだまだ需要が低いです。

___何がドームハウスの普及を阻んでいるのでしょう?

 やはり土地が狭いので、四角い土地に丸いドームを作る余裕がないのでしょう。四隅が余ってしまいますから。
 四角い土地に対応したドームのアイデアも持っているのですが、今は開発途上です。効率が良いとか丈夫だとか、それが全てではないですし、皆さんが四角い建物に慣れてしまっていることは大きいですね。

___四角いドーム?

 肉まんを二人で分けて食べる時のように、ドームを直角に分割するんです。意匠登録までは済んだので、これからそれを提案して行こうと思っています。ドームの一番の良さは開放感ですから、四角い家でも皆が集う部分はドームにしたらいかがですか、という提案です。

___ということは、やはり先進的な意識を持ってらっしゃる方に限られてしまう?

 そうですね。
 ですから、ログハウスとドームハウスとで迷ったり、途中で止めたりする方はほとんどいません。



___ドーム建築の普及のためのキャンペーンもなさっているのでしょうか?

 『メビウスの卵展』というイベントに参加してやっていたのですが、主催する自治体の予算の都合で一昨年になくなってしまいました。10年ほど続いた恒例のイベントだったのですが、残念です。建築ではないのですが、段ボールで模型をつくるようなワークショップでした。

___ドームの中に入ってみたいです!

 「これだったら孫が来てくれる」と言ってブランコを取り付けた施主さんもいらっしゃいます。(笑)

___なるほど! この空間ならそういうことをしたくなります!

 フリークライミングをなさっている方は、内側に上までフックを付けて登れるようにしたそうです。京都にはライブハウスにしている所があるようです。

___音響効果も良いんですね。

 そのままでは反射し過ぎてしまうのですが、それを吸音材などで少し遮れば面白いですね。アコースティックな小さい楽器のソロ演奏には向いています。独特な反響を利用して、両端で掛け合いの演奏をするのも面白い演出ですし、周囲の壁沿いに客席を置いて中央でパフォーマンスをする設営も良いですね。但し、大音量の演奏には向かないです。

___今仕掛けてらっしゃる展開はないのですか?

 いろいろ構想はあります。
 「フラードーム」は、世界的にみるとアメリカ・日本・カナダ・オーストラリアに集中していて、アジアや旧共産圏には無いんですね。なぜ普及していないかを調べるところまでは行っていないのですが、むしろ日本よりドームに向く風土があると思うんです。だから、僕はそっちへ行ってみたい。

___なるほど。土地はあるし、かえって環境が過酷な場所の方が威力を発揮する。

 実は、縁があってインドネシアへ行く予定だったんですが、津波があって話も流れてしまった。復興の支援も考えたんですが、ツテが無かったことと、準備が足りなかった。
 パオのドーム版なども考えていますが、今は設計段階です。


20:00:00 | milkyshadows | |

24 August

『Eco Surfer (エコサーファー)』

artist file "tanebito" [Archives #5] 
堀 直也さん(サーファー / Eco Surfer


___「Eco Surfer(エコサーファー)」というネーミングはユニークですね。

 自分の屋号なので、いろいろ考えました。
 「環境」と「サーフィン」ということをネーミングから浮かびやすいものにしたくて、辞書で調べて「Environmental Surfer」とか「Green Surfer」とか考えたんですが、長過ぎたりゴロが悪かったりで。
 「Eco Surfer(エコサーファー)」というのは単純にリズムが良くて覚えやすいし、直球ですね。

___「エコサーファー」と名乗るようになってからは何年くらいなんですか?

 5年弱です。
 25歳くらいまでは、普通に土日だけサーフィンして、普通にサラリーマンやって、という毎日でした。ある時、人生このままでいいのかなって真剣に考えて、考え抜いて、その時に「エコサーファー」の軸になるようなものがモヤモヤと浮かび上がったんです。
 その時、横須賀から藤沢の会社に通っていたんですけど、辻堂で一人暮らしすることにしたんです。それで、そのモヤモヤの一つのカタチとして「毎朝会社に行く前に必ずビーチクリーンをしよう!」と決めて、その日から、たった15分だけですが、365日のうち320〜330日はビーチクリーンをしました。毎朝、同じ時間に。
 でもやっているうちに、だんだん、正直イヤになってきたんです。やってもやってもゴミは減らないし、手伝ってくれる人もいないし。「あれ、、思ったのと違うな、、」って。
 それで、「この海の向こうにはアメリカがあるんだな」とか単純に思うようになってきたんです。ハワイとかカリフォルニアとか、サーフィンの盛んな国へ行って、彼らの海の守り方とかサーフィンのスタイルとか、エコロジーも含めてビーチカルチャーを学ぶ一人旅がしたいと思ったんです。
 それから一年間、ビーチクリーンをしながら計画をして、お金を貯めて、英語の勉強もちょこちょこして、アメリカに渡りました。
 「Eco Surfer(エコサーファー)」という言葉は、向こうへ行って半年くらいの時に出て来ました。ホームページを立ち上げて、アメリカにいる一人の日本男児のサーファーだ、って。それからどんどん太くなって、今に至ります。

___海外でステイされたことがあるそうですね。

 5年間の学生ビザを取って、アメリカに行きました。最初はLA、それからハワイ。
 英語の学校に入って、最初の4ヶ月くらいは一生懸命勉強しました。早く学校に行って予習して、その後に図書館へ行って、1日15時間くらい英語の勉強をしたんだけど、周りは日本人ばかりで勉強はつまらないし、英語も全く上達しなかった。
 それだったら行きたい所へどんどん行ってしまおうと思って、たまたまインターネットでWWOOF(ウーフ) という非営利の組織を見つけたんです。それは、農園や農場でマンパワーを募集している人たちと、体力はあるけどお金がなくて、でもいろいろなことを手伝いたい、泊まる所とゴハンは提供してもらいたい、という人たちを繋げるシステムで、そのグループに約20$払うと、そういうマンパワーを欲しがっている農園のリストが送られてくるんですよ。
 それで、カリフォルニア州のリストをもらって見てみると、ソーラーパネルで、お水は雨水を貯めて、環境にやさしい有機野菜をつくっている、という農園があったんです。そこは、サンフランシスコと言っても本当に田舎で、それこそ隣の家まで車で10分というような場所。もう日本人なんか絶対にいない。
 そこへ行ってその人たちと生活をしながら、朝早く起きて水やりをしたり、土を混ぜて苗を植えたり、トラクターで開墾したり、ソーラーシステムの電池を交換したり、あっという間に1ヶ月が過ぎた。そこですごく英語が上達したんです。そこにはもうアメリカ人しかいないので。
 実は、そのサンフランシスコで『エコサーファー』というグループを立ち上げました。僕のヴィジョンを農家の人たちも知っていたし、協力してくれていたので、心良く「旅立っていけ」ということで、今度はハワイ州のリストをゲットしたんです。ホストがサーファー、海まで歩いて行ける、という条件で探しました。それでハワイ島へ行って、そこから毎日サーフィンです。

___サーフィン、本当にお好きなんですね。

 サーフィンは、ライフスタイルなんですよ。
 海は母などと言われるけど、精神的にもリセットされるし、とにかく気持ちが良いんです。とても健康的な生活を送ることができます。
 朝と夕方に波がキレイにまとまることが多いんです。風が吹かないことが多いんですね。岸の遥か沖から吹いてくる風によって波はつくられ、今度は岸から海に向かって吹く風(オフショア)が吹き始めると波の表面がキレイに整えられ、サーファーにとって最高の波になるんです。でも、あまりにオフショアが強く吹き過ぎると、今度は波が消えちゃうんですね。だから、そのわずかな瞬間っていうのがすごくおもしろい。
 波があれば、朝4時には起きちゃうし、夜は11時には寝ちゃう。4時に起きて、2〜3時間サーフィンやって、朝食をモリモリと食べて、潮臭いまま会社行って、また11時くらいに寝て・・・って、すごく健康的な生活でしょう?
 次の日に波があると分かっていれば、お酒も極力飲まないし、肺活量が必要だからタバコを吸わない人が多くなっているし、体だって柔らかい方がいいからストレッチやヨーガをやったり。食事にも気をつけてベジタリアンになる人もいるし、もっとディープに入っていくとスピリチュアル的要素も入ってくる。サーフィンをしてる時は時間がストップしていて、「瞑想」の時間だと言う人もたくさんいる。自分にとっては「内観」の時間だったりもするんです。
 プロになれるほど上手くはないけど、「伝える」という使命を感じているんです。難しい言葉は知らないけど、分かりやすく書くことは得意かも知れないですね。どうしたら伝わるかな、って。それでも伝えられることはあると思うし、自分の経験からきていることなので、自信はあります。
 最近「ビーチマネー」というプロジェクトも始めました。

___ 「ビーチマネー」とは、どんなプロジェクトなんですか?

 海岸に行くと、どこの海岸でもビーチグラスが落ちているんです。
 ビーチグラスというのは、もともとはビールやワインのビンだったりしたものが川の上流で捨てられたりして、最終的に海まで流れる間に砕けて、長い時間かけて砂や石にもまれて角が丸まって宝石みたいになったものです。このキラキラした宝石のようなものが湘南のイメージと合うと思って、これを何かに使えないか、ということだったんです。
 ビーチグラスは結局ガラスですから、拾うことは海をキレイにすることになるでしょ? だから、たとえばフリーマーケットの時にお客さんが持って来てくれたらサービスをしたりディスカウントしてあげようか、ということが第一歩でした。
 この第一歩の大きな力になってくれたのは、今僕が勤めている「がんこ本舗」という会社なんです。社長がとてもユニークな方で「じゃあ、ビーチグラスが使える1店舗目になっちゃおう!」って言ってくれたんですね。
 それで、きっと他のお店でも、探せばきっと協力店が増えると思って、自分から営業に行ったんです。今では湘南中の50店舗のお店が「ウチも協力するよ」と行ってくれて、ビーチグラスを持って行ったら何かしらのサービスやディスカウントをしてくれるシステムが確立し始めてるんです。

___面白いアイデアですね!

 中には宝物にしたいほどキレイなビーチグラスもあるんです。
 これを、例えば僕がすぐそこのアイスクリーム屋さんに持って行って、一つ渡すと300円のアイスにチョコチップをトッピングしてくれるんです。今度は、アイスクリーム屋さんにビーチグラスがどんどん貯まって、オーナーが「これはキレイだから取っておこう。でも、これはよくある色だから使っちゃおう」と、50店舗のリストを見て「あ、今日はパンが食べたいな」とパン屋さんへ行って、それが今度はコロッケパンに化けちゃう。そうして、パン屋さんのオーナーは「飲みに行こう」と言ってバーへ行って、そこでも使える、と。
 今の時代、ディスカウントストアへ行って安く買って、コミュニケーションなし。だから商店街が元気無くなっちゃってきているけど、この「ビーチマネー」があることで、お店とお店を繋ぐ役割を持っていて、地域活性に繋がる。
 本当にその地域が好きだったら、商店街を盛り上げたいと思うし、理にかなったシステムが出来たと思っています。

___ビーチグラスを拾うと同時にゴミも拾おうよ、ということですね。

 そうそうそう! それが大事なこと!
 ただ「お金として使えるから拾いに行こうよ」じゃなくて、そこで「海」を感じて欲しいんです。

___そこが、エコサーファーのコンセプト「ゴミを捨てないような精神を持った人を増やす」ということに繋がる。

 結局、モラルだと思うんです。
 モラルがあれば、ゴミを捨てないのは当たり前なんだけど、モラルが無ければ無いで育んでいけばいい。じゃぁどうしよう、と言った時に、「ビーチマネー」のような仕組みがあれば、人が海へ行くキッカケになるだろうと思うんです。
 最初は単純に「お金だから拾いに行こう」で良いんです。海に行けば下を見るので、「あぁ、こんな物が落ちてるんだ」とか「思ったより砂がサラサラしてる」とか「温かい」とか、意識は無くても必ずお土産がついてくるハズなんです。そこから、何か変わるんじゃないか、と言うか、気づくんじゃないか、って。
 「ゴミ拾えよ」って上から言うんじゃなくて、それぞれの感性で感じてください、動いてください、ということです。

___ナオヤさんにとっては、何がモチベーションなのでしょう?

 シンプルに、こういうことが好きなんだと思います。
 海が好き、サーフィンが好き、というよりも「人」が好きなんです。寂しがり屋だし。(笑)
 いろいろな人と知り合いたいし、人と話すことが好きなんです。人と話すことで、自分が成長できる。本を読んだり勉強したりというよりも、僕は「人」から多くを学んでいます。目と目を見て話せば、相手のことも一歩深く知ることが出来る。そこには温度もあるし、全部リアルに伝わるから。
 『ES』の活動やフリーマガジンが繋ぎ役になって、いろいろな人と出逢える。その出逢いをそこでキチンと消化すれば、それだけ自分も人として大きくなっていくと思うんです。
 どうせ生きるならカッコ良く生きたいし、自分らしく生きたい。そういう自分が好きなんです。

___これからのビジョンは、何かイメージがありますか?

 やっぱり、地域に貢献したいですね。
 愛情いっぱいに育ててくれた両親に恩返ししたいし、海にも感謝したい。広告を出してサポートしてくれた方々にも恩返しをしたい。そうすると、大きなことを言うよりも「地域」なんです。
 地域に根を張って、地域が潤うようなことをどんどん仕掛けて行きたいと思っています。それはもちろん「エコ」であるし、ずっと継続できるシステムであって、「自然」も喜んでくれることをやりたい。
 良いバイブを届けて行きたいですね。

___伝え手として、どんなことを伝えていきたいですか?

 「LIFE」なんだと思います。「生きる」。
 「森羅万象」という言葉がとても好きで、自然の中でサーフィンをやっていると、全部が繋がっていることに気づくんです。今ココに在るものすべてが必要なんだ、ということが根底にありますね。英語で言うと、「be there」。
 自分なりの生き様を、自分なりに伝えて行きたい。

___そのことのキーワードとして「エコ」がある。

 そうですね。

___ナオヤさんにとって、「エコ」って何ですか?

 今こういう時代だから盛んに叫ばれていますが、海で真剣にサーフィンしてる人たちは、そんなことみんな知っています。ゴミがあれば悲しいから、ゴミは捨てなくなるし、それを人に伝えたくなる。
 要するに、「おまけ」ですね。

___「おまけ」?

 真剣に生きていれば、「エコ」は勝手について来るんです。
 真剣に生活をしていれば、「これ、もう一回使おう」とか「節約しよう」と思う。真剣に暮らしていれば、「これが流れて海へ行って、海で俺たち泳いで、魚を食べて、、、」って、真剣に考えて理解しようとする。
 今使っている洗剤がヤバイこと、今食べている魚がどこの産地で何なのか分からなくてヤバイこと、本当は原子力がヤバイこと。。。
 『エコサーファー』も、サーフィンを真剣にやっていれば、「エコ」はおまけでついて来る。自分が本当に好きで楽しんでやっているということが何かのキッカケで相手に伝われば、その瞬間に「オレも入れて!」ってなりますよね。
 誰でもそうだと思うんです。人生をenjoyしてる人でなければ付いて行けないし、一緒に遊ぼうとは思わないですよね。(笑)


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17 August

「ケ」のジュエリー

artist file "tanebito" [Archives #4] 
藤沢 泉さん( izumi ジュエリー・シマノ


___『アクセサリー・スクール』を始めてからどのくらいになるのですか?

 今年で10年になります。

___ 当初から大盛況だったそうですが、延べにすると何人くらいの生徒さんがいらっしゃったのでしょう?

 月30〜40人ですから、年400人、10年で4000人ですね。本当にありがたいことです。
 皆さんとても良い方ばかりで、どこかで繋がりを持ちたいと思いながらもその教室の時間で別れてしまうんですが、教室展やパーティをやることで個人的な繋がりも出来てきて、とても楽しいみたいですね。
 その間ずっと通って下さっている方もいらっしゃいますが、ウチは入会金もなく、コンスタントに通わなくても良いシステムになっていて、どんなに長い方でも一回一回申し込んでいただく形なんです。
 それは私にとっては厳しいことで、作品がつまらないものだったら人が少なくなるだろうし。だけどそれを縛らないで、やりたい時に自由に、という考えです。
 その人の人生において、いろいろ波があると思うんです。すごくアクセサリーを作りたい時もあるし、他のことに興味がある時もあると思うので、長い目で見ておつき合いして頂きたいと思ってこういうシステムをとっています。
 毎月申し込んでいただく方は本当にありがたいと思いますし、子育てで2〜3年休んで復帰される方もいて、それは自由で本当の形かなと思っているんです。それが長く続いた秘訣かな。
 縛らない。自由。(笑)

___生徒さんも、いろいろな体験をなさっているのでは?

 そうだと思います。
 あまりつぶさには聞かないのですが、表情で分かりますよね。自分の力ではどうにもならない、天然の石の難しさに皆さん辟易としていることがあるんですよ。(笑)
 だけど、2時間3時間やっていると、なんとか形になっていく。そうすると、やっぱり、お顔が輝きますよね。
 「本当に来て良かった」「本当に楽しかった」って言ってくださって、その顔を見せていただくと本当に私も嬉しいです。
 石の色を見たり、触ることでその温度の冷たさを感じたり、それがすごくヒーリングになるとおっしゃってくれます。「何を作る」とか「そのアクセサリーが自分に必要か」ではなくて、ただ「石を触りたい」ということで来られる方もいらっしゃいます。

___「作る」という行為の過程では、いろいろな「気づき」があったりしますよね。

 私自身、あんまり考えずに作る時と、デザインを絵に描く時と、いろいろなやり方で作りますが、天然石というのは人間が作ったものではないので、予想外のことがあります。それによって引っ張られて行くようで、スランプがないです。
 もし同じ材料を使って新しいものを生み出そうとしたら、きっとどこかでつまずくんでしょうが、新しい形のものを発見したり、自然から出た色に感動したり、思っていたものと全然違ったり、それが楽しいところですね。

___教室では、自由にやらせることとキチンと伝えることとのバランスがお上手だと感じました。

 聞いていただいたら教える、という感じなんです。
 他所の教室だったら、「先生」と呼ばれて、テキストがキチンとあって、段階を踏んで、というふうにしますけど、できるだけ私は「先生」と呼ばれたくなくて(笑)
 必要なテクニックを必要な時に体得していただくような形が「大人の習い事」なのかな、と思っているんです。

___天然石はブームですが、石選びの相談は受けますか?

 私は、その人がピンと来たものを買っていただくのが良いと思っています。自分が今欲している石を選んでいただく、そういう強さが皆さんにあって欲しい、といつも思うんです。
 ですから、石の効能とか、そういう話はあまりせずに、インスピレーションで選んでいただきたいと思っています。

___教室を始めた10年前というと、ビーズや天然石のブームより早かったのでは?

 ビーズブームが始まった頃でした。私は宝石を扱っていたので、天然石だけを使ったアクセサリーを作る講習会をやってみたらどうか、ということから始まったんです。
 ビーズブームの中で私に期待していたことは、ビーズで編むストラップやネックレスを、素材の良い天然石に置き換えて作る、というニーズだったんですね。だから初めは、天然石なんだけどカットの揃ったものを使って、ビーズで作るのと似たような技法で教えなきゃいけなかったんです。
 でも、私のやりたいのはそれとは違った。

___と、おっしゃいますと?

 天然石である以上、本来その石にあったカットにするべきなんです。例えば、トルコ石だったら、4ミリにカットしたりする必要はなくて、ただゴロゴロとした石をそのまま活かしたい。
 でも流行っていたのは3ミリや4ミリの細かい雰囲気のものだったので、ちょっとバランスをとるのは難しかったです。

___そういう意味では、時代が流れてきましたね。

 そうですね。皆さん、一通りやったと思います。(笑)
 それで今、興味があって残っている方は、もっと上のものを目指してる。そうなると、ちょうどウチみたいに天然石を活かすアクセサリー作りをしてる所へ来るとビックリして、「あ、私のやりたいのはこれだった!」って言ってくださいます。


___これからの展開については、どんなお考えですか?

 ジュエリーが今まで持っていたイメージをどこかで破壊したいような気がいつもあるんです。ジュエリーを買いにいらっしゃるお客さまは、女性だったら働いていてお金を自由に使える方だったり、男性だったら年に一回クリスマスやお誕生日に買いに来るとか、そういうイメージが普通のジュエリーショップだと思うんですけど、全く逆にしたかったんです(笑)。
 そこに情報が集まっていて、毎日寄っちゃうようなお店。

___とすると、どんな方にどんな形で広めていこうと考えてらしたんですか?

 大胆なんですけど、本当に老若男女なんです(笑)。
 カフェがあることで、3歳のお子さんにお気に入りのメニューがあったり、80歳の方も入ってこられるし、お教室もこの空間でやっています。私の思惑通り(笑)。
 これは既存のジュエリーショップには絶対ないことだと思うんです。

___ワクワクしますね!

 常識的には有り得ない、と言う方もいらっしゃいます。でも、そのくらいのインパクトが小田原には必要だと思うんです。
 「ハレ」と「ケ」ということで言えば、ジュエリーは「ハレ」だという感覚があると思うんですが、対極の「ケ」をやってしまおうという感じなんです。だから、普段は買い物をしなくていいと私は思っていて、一週間に何度でもただ顔を出す、という不思議なジュエリーショップ。
 ジュエリーと言っても、3000円のモノから100万円のモノまであって、「あなたに必要なのはダイヤモンドかも知れないけれど、同時に水晶の石ころかも知れない」ということを提案したいんです。それは、日々、毎日のように顔を合わせてお話をしていくことで分かることだろうと思うんです。

___「ケ」のジュエリーというと、どのようなイメージでしょう?

 宝飾品というと、ダイヤだとかルビーだとかサファイヤだとか、とても高い物ですから、一度買ったらずっと身に着ける。そういうメモリアルなジュエリーというのは、凄く大切で、代々伝えていくような「ハレ」の部分だと思っているんです。
 それに対して、季節季節にジュエリーがあったら楽しいと思ったのが、天然石ビーズを扱っている部分なんです。お洋服より安いかも知れない。それで、時代の気分をいつも纏える。今必要なものを、すぐに、誰でも買える。
 そのビンに入っている石は、宝石と同じものなんだけど、ちょっと濁っているというだけで10円だったりする。それは3歳の子でも買える。
 それが「ケ」だと思っていて、その部分も扱っていきたい。
 今までのジュエリーショップでは分断してしまっていて、その部分はパワーストーン屋さんだったりビーズアクセサリー屋さんだったり、宝石屋さんは別だった。私はその中間に立っていて、どちらも扱って、どちらも同等に素晴らしくて価値のある物だと思って、それが、誰でも来られるということに繋がっています。

___伝統的な宝石というと、権威的な価値観があります。

 今の時代は一つの価値観では計れなくて、個人個人価値観があるし、個人の中にもいろいろな部分があります。
 一人の人の中に、「最高のダイヤモンドを手に入れたい」という気持ちと「この石ころも素敵」という部分があって、キレイなものが好きということでは全然変わりがないと思うんです。
 自分もそうですが、ダイヤモンドを扱っていると「4C(カット・カラット・クラリティ・カラー)」を説明したりするのですが、人間はこれほど素晴らしいカットが出来るということにリスペクトがあって、それに挑戦していく力についても凄く惹かれるんです。それと同時に、何もカットされずに転がっている石の中に「キレイ」を見出すということも自分の中にあって、不思議だなと思います。
 素直になりたいですね。
 高額な宝石を売る為に、権威的な部分に自分がいなければと思って石ころには関わらないというのが、今までの宝石屋さんの考え方だったと思うんです。

___皆さんの反応はいかがですか?

 業界の方は驚いて、「何がやりたいの?」とか(笑)。でも、一般の方は「楽しい」。
 複合ショップをオープンする前、3年間、路面店を休んでビルの3階で事務所だけにしていた時期があるんです。必要最低限の仕事だけをして。
 それが良かったと思うのは、冷静に業界を見ていたんじゃないかな。何か嫌だと思っていた部分がハッキリした。不自然なことをしていた気がするんです。
 その時に、今度やる店は普通の宝石屋さんじゃないだろうな、という気がしていました(笑)。


___ジュエリーショップというと「街」と切り離せない。「街」の中での存在。かたや「スローライフ」など、「街」から離れることへの価値観がある。その辺は、どうお考えですか?

 出来れば「街」から離れたいかも知れない。
 高価なダイヤモンドを見る時も、もっと空気のキレイな所で見た方が良いと思うんです。 アクセサリー・スクールも、すごく風の入る所で出来たら気持ち良いと思う。光とか。空気感。
 ジュエリーショップというと、黒が基調でピンスポットが当たったいるような暗いお店がいっぱいありますが、私は違うと思うんです。もっとナチュラルな場所で見た方が、本当の色も分かるし、嘘がない。そういう所で見た方が良いし、選んで欲しいと思う。

___貴金属についても、「街」を離れて商売が成り立つと思いますか?

 やってみないと分かりませんが、ナチュラルなストーンの場合は、かえってその方が良いと思います。
 都会的なもの、都会にいる人が選ぶジュエリーは、少し難しいかも知れないですが、逆にそれを価値を思って買いに来てくれる人はいると思うので、やってみればまぁまぁ成功の方じゃないかと思います。

___私も美容師として「街」との繋がりはテーマなんです。流行と切り離してのファッションは有り得ないので。
 でも、「美」という精神性が経済システムに取り込まれていることに、違和感を感じています。


 私もそういう仕事に関わっていて、いつも居心地が悪いことは悪いですね。

___藤沢さんの場合は、「天然石」というのが一つの突破口なのでしょうか?

 「自分が息が出来る」というか「自然」になれるところのような気がします。高価な貴金属だけでは息が詰まるところがあって。
 でもかたや「流行」は面白いですよね。都会から切り離された所に移って行ったら、それが新たな悩みになるかも知れないですね。 流行のものを置いてもあまり意味がなくなる。

___ 最先端のものと、地に根を張るもの。 私たちが両方見れるアンテナを持って「媒介」になれば良いのかな?

 そうですね。
 あとは、「街」そのものについても考えた方が良いかも知れないですね。ココにいながら、この街がもっと自然に近づくようなことを考える。
 街の良さは、人がたくさんいて、人が簡単に出逢えたり、情報を直ぐに分かち合えたりすることだろうと思います。街角に店をつくることは、出来るだけ長い時間店を開けて、たくさんの人が入り込めるような場所をつくる義務があるような気がするんです。
 私がココにお店を出して人と人が繋がっていく場所をつくることによって、どういうカタチか分からないけども、自然にみんながこの街を居心地の良い空間にしていくような努力を協力してできるような、そういう流れがつくれたらいいと思っています。

___人が集まる場所を提供するということは、すごく大きな意義がありますね。

 それは商売をやっていく人だったら義務みたいなものだと思っているんです。
 それで私たちも生活させていただいているのですから、いろいろな人と逢う機会があって、より良い何かを生み出す力が生まれるような場所を、いつもここに作っておくということがとても必要ですよね。




20:00:00 | milkyshadows | |

10 August

川の流れの如く

artist file "tanebito" [Archives #3] 
土屋 譲 さん(打楽器プレーヤー)

自然に生かされている。それが僕にとっては一番の深い感覚なんです。
朝、ドアを開けると、鳥が目の前の木にとまって「ちゅんちゅんちゅん」て囁くんですよ。
それを聞いた時に、僕たちが出してる音ってみんな雑音だな、って思いましたね。

___いつもドラムを演奏しながら何を考えてるんですか? 気持ち良さそうに叩いてますネ。

 考えてないですよ、何も(笑)。
 何かの為に演奏する、というのは有り得ないですね。僕は「自然」というのをテーマにしてる。ずぅっと遡って、人類がこの世に生まれる前に「自然」はあるわけですよ。海があって、山があって。人も自然に生かされている。それが僕にとっては一番の深い感覚なんです。
 僕自身、自然の中に行こうと思った時期があったんですよ。寄(やどろぎ)っていう所なんですが、そこで、山の中で暮らそうと思った。音楽だとか考えなくて。
 山があって、川があって、谷の端にログハウスがあって、「そこで暮らせば?」と言われて2年ほど暮らしたんです。丸太の間から隙間風が凄くて、寒いし。でも、朝、ドアを開けると、鳥が目の前の木にとまって「ちゅんちゅんちゅん」て囁くんですよ。その音色がものすごくキレイなんですよ。それが谷間に響くんですよ。
 それを聞いた時に、僕たちが出してる音ってみんな雑音だな、って思いましたね。

___音楽家の演奏も雑音?

 どんなに上手いクラシックの演奏家でもそこまでは行けないかな。鳥のさえずりを聞いて、僕は愕然としましたね。
 特に僕なんか打楽器じゃないですか。「こんなキレイな自然ってあるんだ」と思うと、到底追いつけないし、しばらく音が出せなくなった。
 参りました m(_ _)m っていう感じ(笑)。

___そのログハウスにはドラムセットを持ち込んだんですか?

 もちろん持ち込みました。
 実は、自分のドラミングや音楽性を変えようとして自然の中へ行ったのに、しばらくはドラムセットに向かえなかった。

___どのくらいの期間ドラムを叩けなかったんですか?

 半年くらいは叩けなかった。
 その間、情けないことに、お酒を飲んだり、川の流れを眺めながら鳥の音を聴いたり、夜はたき火をしたりして。
 本当に「自然」っていうのは無駄な音が無くて、安らいじゃう。でも、だんだんその安らぎが危険だなって思い始めたんですよ。「自分はまた音楽ができるのかな?」って。
 今感じているのは大事なことだけど、「でも俺は音を出して何かやらなければいけないんじゃないか?」って、このままボーッとしたままになってしまうこととの、精神的な戦いになりました。そして、そういうことを感じた土屋譲が良い音を出せばいいんじゃないか、って無理矢理自分に言い聞かせた。

川の流れってJazzのスイング感そのものなんですよ。
決して一定ではないんだけど、流れて行く。そして、優しい。


 そんな体験がすごく役に立っているし、音を大事にするようになりましたよ。
 例えばシンバルって金物系って言うんですけど、キンキンするじゃないですか。でも、叩いてるスティックは木ですよね。木と金属をどうやって交わらせるのか。その間に僕が入って、僕の奏法があれば、絶対に良い音が出せる。
 同じことを、僕は川の流れで感じたんです。川が流れて行く時って「ザァー」って流れて行くんだけど、よく聞くと抵抗もあるじゃないですか。海の満ち引きの音は例えばブラシを使って表現できるんですけど、川の流れってJazzのスイング感そのものなんですよ。決して一定ではないんだけど、流れて行く、そして、優しい。 
 Jazzではトップシンバルを中心に音楽が動いて行くんですが、僕はそのシンバルレガートが川の流れの如く動いて行ければいいなぁって、それをイメージして叩いてきたんです。そうしたら、Jazzだとかジャンルにこだわりが無くなった。自然に音が出ることさえ思っていれば、どんな音楽でも出来るんだっていうことが分かった。
 流れてるでしょ。毎回違うんですよ。変化してるんですよ。川だけじゃなくて、すべて、毎日が、川の流れの如く。時の流れを感じるのかな、川の流れを見ていると。

___「唄心」ということについては、自然の中で暮らすことで変化がありましたか?

 それについては違いはないですね。
 でも、昔は荒かったかな。唄ってるというよりは、単純にリズムを楽しんでるだけだった。結局は今またそこへ戻ってきているんだけど、無駄な音を出すくらいだったら暴走族と同じだろ(笑)。

___それを自己表現だからと許される境目って何でしょう?

 どんな形であれ、他人がうるさいと思うものはうるさいんですよ。ただそれだけ。そこに境目は無い。
 川の流れや、空気の匂いだとか。すべてが漂っていて、それを感じちゃうと、音を出すのが怖くなる。

目の前で生きている花を感じること。それが「宇宙」だと思うんです。
瞬間瞬間でいろんなことがあって、過去からずっと思っている事もシンコペーションしてますから、
毎日同じ演奏をしていたらオカシイんです。


___そのうえで、今の地球や社会に対して、ミュージシャンとしてどんなメッセージを送ろうとしていますか?

 僕にとっては、目の前で生きている花を感じること。それが「宇宙」だと思うんです。それを感じられない人には、デカイことは感じられない。
 音楽も同じで、小さなことから始まるんです。ドラムセットが無くても、その辺を叩けば音は出るでしょ? 「音」ってそういうものなんです。「ポーン」と叩いて、「なんでこんなに響きが良いんだろう」とか感じる。それを拡大すればいいんです。
 身の回りには「小宇宙」があるので、それを感じていれば、小さいところから始まると思います。

___「自然」の中で、リズムセクションとしての立場はどう感じていますか?

 自分は「土」かな。「海」にはなれない。名前が「土屋」だから(笑)。

___「土」として「畑」のように育んでいるものがありますか?

 瞬間瞬間でいろんなことがあって、その日に感じた事や、過去からずっと思っている事もシンコペーションしてますから、それを全部含めて、僕は演奏の中に取り入れて太鼓を叩いています。だから、何が起こるか分からないですよ。

___毎日の夕陽の色が違うみたいに。。

 そう!
 毎日同じ人はいない訳だから、毎日同じ演奏をしていたらオカシイんです。だから、その日の自分に素直に演奏することがミュージシャンなんだと、僕は思います。

___お客さんも一期一会の音を聴く。

 だと思います。
 それを楽しみにしてくれる人が多いので、それが僕の励みにもなるし、楽しい演奏を聴いて帰って欲しいので、精一杯ふりしぼって演奏してます。

もともと日本人はゆったりとした大きいリズムを相として持っているのに、
せわしないリズムに行きたがる。刺激を求めたがるんだと思います。


___人間のリズムの基本は、心臓の鼓動から来ている?

 「ドクンドクン」だから、聞こえている音だけから言ったら2つの音。

___2拍子ですか?

 でもこれは、最後まで聴くと3つになるんです。「ド・ク・ン / ド・ク・ン」という刻みなんです。3拍子。
 僕なんかJazzじゃないですか。Jazzのビートも、基本的には3つなんですよ。その中にいろいろな音符が入っていますけど、構成としては3連符を刻んでる。それが早いか遅いか、というだけ。
 それが、Rockなど8ビートのサウンドが受けている理由につながるんです。
 ヒトが持っている基本的なリズムが3拍子だから、『スケーターワルツ』のような3/4の曲は人が和むんです。で、それに逆らって、1拍の中で「タタタタ」と4つ刻んだら「アレ!?」っと思うでしょ?

___刺激的なんだ!

 その通りなんです。
 リズムの発祥地アフリカの「ポリリズム」も3拍子から成り立っているんです。奇数ですよね。8ビートや16ビートは偶数拍ですから、全然取り方が違うから刺激的なんでしょうね。だからみんながそこに惹かれるんだと思います。

___しかもデジタルな社会ですし、、

 余計にそうなんでしょうね。偶数の方がキッチリ行くんですよ、リズムも。

___あぁ、そうか、割り切れますものね。

 奇数の方が難しいんです。ゆったりしてるし。

___オーガニックなのかな?

 そういうリズムは奇数の方が出せるかな。僕の経験の中では、そう思います。自然が3拍子で動いてるとは思いませんが、自然の推移とか、自分の呼吸に逆らわないで出来る。
 8ビートも16ビートも楽しいですよ。でも 3/4の曲を演っている時は気負わなくて済むのが不思議ですね。

___Jazzのスウィング感や「シャッフル」なども、その辺の感覚なんでしょうか?

 「シャッフル」もそうですよね。子供でも分かるように言うと「お馬さんポッコポッコ」ですよ。4本の足でシャッフルで走る。(笑)
 不思議ですよね。(笑)「4」が「3」になってる。「サンバ」ですよ。
 「サンバ」って、「4」と「3」が入り乱れてる。で「どっち行ったらいいんだ?」っていうもどかしさがイイんです。どっちでもOKっていう。
 国によってリズムもいろいろあって面白い。

___そうしてみると、日本のリズムは、どちらかと言うと鼓動を感じませんね。あんまり心拍数が上がらない。

 日本のリズムは、鼓動を感じたうえで演る感じですね。イチイチひっきりなしに演るんじゃなくて、「ボーン」と出したら後は沁みて行くのを感じてる。だから、もっと大きいのかも知れない。
 もともと日本人は、ゆったりとした大きいリズムを相として持っているのに、せわしないリズムに行きたがる。そうやって、刺激を求めたがるんだと思います。自分も若い頃はそうでした。

___一リスナーとして思うことですが、どうしてもっとたくさんの人に聴いてもらおうとなさらないんですか?

 (笑)
 店に来て聴いてください、って思います。それが一番生き生きした演奏が出来ているから。
 僕は、特別有名になりたいとか、すべての人に聴いてもらいたいとか、あんまり思わないんです。まず小田原でも出来ていないのに、東京だとかNYだとか、どこへ行っても無理でしょ。
 さっき言った「身近にある花」と同じです。どこかへ行けば何かが成り立つ、という考えではないです。
 例えば、僕は小田原で演っていて、日本でも力のあるプレーヤーが来てくれています。それでも、小田原の人は知らなかったりするし、有名な人が来れば良い演奏という訳でもない。要するに内容なので、僕が演奏をまとめて行けば良いし、そういう意味での自身はあります。僕が、呼んだプレーヤーの心を動かして、演奏に変化を出して行けばいい。演奏が終わって、「違う体験をした」と言って帰ってもらえれば御の字じゃないですか。


20:00:00 | milkyshadows | |

03 August

「いただきます」

artist file "tanebito" [Archives #2] 
白澤 秀樹 さん & 吉原 亜希 さん(ManaBurgers

「食」という字を見ていただければ、「人が良くなる」と書くんです
生き生きと豊かに生きる大きなポイントの一つだと思います。


___ 「食」という切り口で、いろんなことが見えてきますね。

(tra)
 深いですねぇ。
 「食」という字を見ていただければ、「人が良くなる」と書くんです。それで全てが解決するとは思わないけど、少なくとも、生き生きと豊かに生きる大きなポイントの一つだと思います。
 三度三度のものですし、これが本当に美味しくてヘルシーだったら、これは楽しいですよ。これだけチョイスできる時代は、今までの人類始まって以来ですし、もちろんマイナスの部分もありますが、毎日三回楽しめますからね。

(aki)
 原材料を見るっていうのも、一つの手段。
 植物性とか無添加とか大きく書いてあっても、裏を見るとねアミノ酸って書いてあって、すごくトリッキーなので、大きな表示に惑わされないように注意しましょう!

(tra)
 同じ醤油が二つあるからね。表示が適切に書かれてるかどうかも、問題としてありますね。
 磯部先生という方のおっしゃった『良い食品の4条件』というのがあって、僕はこれが一番の核になるべき物だと思っているんです。
 一つは「 安全であること」。もう一つは「ゴマカシのないこと」。それから「味のよいこと」。最後に「品質に応じた妥当な価格」。
 この四つがね、風土を超えて、本当に食べ物の4条件だと思うんです。 特に、送り手であるレストランビジネスや食品工場は、一番考えなくちゃいけない当たり前のことなんです。
 だけど、この四つを全部加味した食べ物って、あんまり無いんですね。例えば健康食品は妙に高かったり、あるいは不味いかったり(笑)
 食べ物だから、「美味しい」というのが大前提で、残りの三つがそれにくっついてくれば、一番最高だと思う。

___手軽に選べたら良いですね。

(tra)
 これからは増えてくると思いますよ。
 食べ物の世界に限らず大きく二極化してゆく中で、これから益々ファーストフードはある種の必要性を増すでしょうけど、反面、それとバランスとる為のことも益々増えてくると思うし、又そのために自分たちも仕事をしているんです。
 そういう意味では、TVで本当に正しい情報が流れているとは限らないですからね。
 ヨーグルトと味噌汁を比べたら、味噌汁の方を日本の人達には薦めたいですね。日本は発酵文化ですから、日常の中でそういうものを自然に食べれるようになってるんです。漬け物もそうです。
 発酵食品は、腸に何らかの形でプラスですからね。

(aki)
 腸で血液はがつくられてるんです。現代医学だと脊髄でつくるって言うけど、腸が「肝心要」のポイントなんですよね。
 あと、腹筋。椅子の生活や電化製品の普及で、日本人は正座をしなくなったし、床を拭かなくなってきた。その筋肉の弱まりと、お腹の「丹田」、 女の人だったら生理不順とか流産とかは関係してる。
 便秘してるとボーッとするし、腸は脳と繋がってる。トイレにスッキリ行けた時って、頭もスッキリするでしょ? 腸がしっかりしてると、頭がまわる。

___本当に繋がっていることを実感します。

(aki)
 次から次へ繋がっていくから、本当に面白いよね。食べてからの繋がりと、食べる前の物の繋がりとか。

(tra)
 自分の体験から言うと、僕、便秘体質だったんですよ。昔はね、ジャンクフード最高だと思ってましたからね。(笑)
 両極端やったからよく分かるんですけど、植物性主体の食生活だと、便秘はあっという間に治りますね。全然違う!
 便秘の時にはね、自分が便秘だって分からなかったんですよ。前は、一週間ぐらい出なくてもカッコイイと思ってましたからね。(爆笑)
 「オマエ、そんなの時間の無駄!」みたいな。(笑)

___現代生活はスピードや効率が要求されるから、ついつい食事もそうなってしまうんでしょうね。

(tra)
 そうですね。それがまた一つの美徳ですものね。
 音楽だって早いものが流行ってるように、今のリズムはやっぱり確かに早いんだろうけど、 生き物としては、本来の自分達には早すぎるところが確かにあるでしょうね。そのギャップが、いろいろな意味で身体に表れたり、精神に表れたり、歪みがストレスとして表れるんだと思います。

アマゾンでは、熱帯雨林を燃やして、
地平線の遥かかなたまで大豆畑になってるんです。



___「食」という切り口は、間口が広いですね。

(tra)
 日々、三度三度のものですからね。
 食べ物がこれだけ豊かになったのは、人類の歴史でもそんなに古いことではないんですね。
ですから、その時代に生きてる僕らは幸せなんです。
 だけど反面、便利が行き過ぎて、生きる為のエネルギーという観点でみると、今の食の便利さがかえってマイナスになってる。それが、僕らにとって、伝えたい一つのテーマなんです。

___その辺が、大きく言えば環境問題に繋がってくる。。

(tra)
 そうですね。
 食べ物って、身体の健康状態や体内環境にも関係してくるし、もちろん心にも関係してくる。その食べ物が何処からきたのかと外側に考えると、特に日本は今、食卓に並ぶ食べ物の60〜70%は海外ですからね。
 じゃあ「海外で作られたものが日本で作るものより安いって、どうなってるの?」って。
 リアルに言えば、今、大豆がスゴイんです。ブラジルの熱帯雨林を燃やして、地平線の遥かかなたまで、一面大豆畑になってるんですよ!
 ちょっと前までは、牛肉がそういう形だったんですが、今はそれが大豆まで来ている。日本の食文化は大豆なのですが、自給率は5%を切っている。そうすると、ベジタリアンだと言っても、熱帯雨林がなくなってしまうことに関係しちゃってる。
 「じゃあどうしたら良いの?」ということになりますが、それを知っているのと知らないのとでは違うと思う。

___ その問題に対しては、何かアクションは起きているのですか?

(tra)
 アマゾンでは、熱帯雨林を自治区みたいにして守る運動が起きてるんです。これ以上大豆畑にならないように、現地の方やNPOの方達が、今残ってる物をまず残そうというスタンスで取り組み始めている。
 だけど、今の段階ではなかなか木を植えることまでは出来ないですね。将来には、その大豆畑を何らかの形で戻すようなことも出来てくるとは思うんですけど。

___ 世界的に人口が爆発的に増えている中で、どこかが生産地としての役割を担う必要がありますよね?

(tra)
 これはあくまでも数字としての考え方ですが、今、世界では1/3くらいの人が、悲しい話ではありますが、飢えていて、かたや先進国では食べ物の1/3くらいは捨てられている。 すると単純に数字だけ見れば、捨ててる食べ物が彼らのところに行けば、皆が食べられる。
 もちろん、政治やら経済やらいろんなものが絡んでくるので簡単ではないですが、基本的にはこの地球に今あるシステムを上手く使えば、まだまだ皆が食べていけるだけの食べ物は出来ると思います。
 分配のシステムを確立すれば、充分解決できると思うんです。

例えば、冷蔵庫をいっぱいにしない。
食材は、すべて使い切っちゃう。
美味しいし環境にも良いし、たくさんラッキー♪


___そういう事を知ったうえで、何かキッチンで出来るアクションがあるでしょうか?

(aki)
 例えば、冷蔵庫をいっぱいにしない。
 無くなるまで買い物をしない。買い置きをしないで、使い切る。そうすれば、新鮮なものを買えるし。
 あと、一番良いのは自分たちで食べるものは、少しでも作れるようにする。

(tra)
 食材は、すべて使い切っちゃう。「一物全体」とも言いますけど。

(aki)
うん。例えば巨峰とかって、皮と実の間が一番美味しいって聞いたことないですか?それって、
人参にも大根にも言えるし、皮との間に一番旨さが詰まってるんです。
 それ丸ごとで人参だから、それを使うことによって旨みもでるし、ゴミもないし、剥く手間もないし、料理の下準備が面倒じゃなくなる。
 皮剥かないって 、最初は「え?」と思うけど、すごく美味しいし、楽ですよね。

___野菜の下ごしらえって、結構手間がかかりますものね。

(aki)
 お米にしても、玄米を食べだしてからシンプルになった。
 玄米ってあんまり洗わないで良いんですよ。白米は濁りがなくなるまでちゃんと洗わないと糠臭くなる、って言われる。でも玄米って、2〜3度お水を替えるぐらいでOK♪。
 玄米でも、発芽玄米を自分で作り出してからは、もう全く洗わないで良い。バットに玄米を入れて、水を張って毎日取り替えるだけ。それでもう、取り替えてるのが洗ってる状態だから、あとは炊くだけ!
 美味しいし環境にも良いし、一石二鳥どころか、たくさんラッキー♪

(tra)
 日々のものだから、楽しさと共に楽さ加減は絶対必要ですからね。

___続けられないと、意味が無いですものね。

(tra)
 植物性の料理は、一見手間がかかって大変に思われがちなんだけど、実はどんどん楽になってるんですよね。

(aki)
調理も下ごしらえも、シンプルなのが一番。美味しいし!

(tra)
だからオーガニックっていうのが大事になってくるんですよね。丸ごと食べるから。
だけど今の時代、百点満点はなかなか難しいですからね。ベストを求め過ぎてしまっては、良いもの食べても楽しそうじゃない。

(aki)
 いくらオーガニックだからと言って、萎れたオーガニックは嫌だしね。新鮮な方がいい。

(tra)
 僕は昔、自然食品屋もやっていて、北海道や九州から無農薬のオーガニック野菜を仕入れてたことがあるけど、結果として三重苦ぐらいになっちゃうのね。どういうことか言うと、一つは、採ってから日にちが経つので、葉物はやっぱり萎れちゃう。それに、ただでさえコストが高いうえに送料が加わる。
 農薬に関しては、お百姓さんが一番分かってるんですよ。だけど、流通とかいろんな仕組みが、結局使わざるを得ない。買う人たちも、頭では分かっていても、スーパーに行けば、萎れてたりいびつではない、見た目がキレイな方を手に取っちゃう。それはお百姓さんが悪い訳じゃなくて、今のシステムが問題なんです。
 だから僕らが勧めたいのは、やっぱり生鮮品は近場のもので揃えるのが一番賢い。値段も安いし、新鮮だし。
 小田原とかこの辺は、有り難いことに、お百姓さんがまだいらっしゃるじゃないですか。ですから、近くにいるお百姓さんたちが自分たち用でつくってますから作っているものを分けてもらう ようにするのがひとつのコツですね。農薬的なことも、ある程度コントロールしてるでしょうし。
 100点満点は無理にしても、それぐらいが丁度良い加減じゃないですかね。

「いただきます」


(aki)
 インドの修行僧の話を聞いたことがあって、ある修行僧が山から下りて次の山に行く間に、町を通って、食事をするのに食堂に入って、そこで出された食事を食べたら、突然、苛立ちを感じたらしいの。で、修行僧だから、「この自分の感情はどこから来たんだろう?」と思って、キッチンを覗いたら喧嘩しながらその料理をしてた、っていうお話。

___その波動をもらっちゃった?

(aki)
 やっぱり、伝わる。
 自分でも実際に体験したことあるし、もうちょっと向こう側まで見れば、偽りのないものっていう話にも繋がってくる。生産者の顔が見えるもの、とか。
 そうやってグルグル考えると、作物は天から降る雨の恵みで出来ていて、その雨がキレイじゃないと、って環境問題に繋がってきて、それが自分の所に返ってきて。。
 本当に、キッチンの中でグルグルしてます。(笑)

___そういう大きな「輪」を考えると、「いただきます」っていう言葉はスゴイですよね。

(aki)
 マントラですよね!

(tra)
 「いただきます」と「ごちそうさま」っていう言葉は、「もったいない」と同じように素晴らしい言葉だと思う。世界中、有りそうで無いよね。長いお祈りはあるけど。
 「いただきます」は、「これから食べるよ」っていう合図でもあるけど、「すべてに感謝」っていうのをたった一言で表現しているし、「ごちそうさま」は、食べてお腹いっぱいになった自分の満足を表す言葉でもあるけど、食べるってことは何かの命なりエネルギーをもらうワケだから、それに対する「感謝」ですよね。
 それを日常の中で、普通に日々営まれている、っていうのが素晴らしいし、理想ですよね。

___命をいただく。。

(aki)
 私たちは食べ物で出来上がってるから。

(tra)
 本当に、実際そうだからね。
 命にありがとう、命にごちそうさま、って思うんです。




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