Archive for 09 December 2007

09 December

『青空夜空に星空』

artist file "tanebito" #11 [2/3]
勝又 悠 さん(映画監督 / STROBO RUSH

映画を撮っていて栄養失調になったことがあるんです。
映画に関わっていると、他の欲が無くなっちゃいますね。


___ひとつの映画を作る中で、脚本・演出の他には、どんな役割をなさっているのですか?

 まず企画を考えます。「男の子と女の子がいて、真夜中の校庭でふたり向き合って、、」みたいな漠然とした感じで。
 そういうところから入って、今度はその設定にいろいろな「色」をつけていくんです。ここがこの色で、これはこの色で、こういう会話をしていて、この子たちの関係はこういう感じで、、みたいに。
 そうしていくと、だんだんそれが脚本になっていくんです。

___今おっしゃった「色」というのは、具体的に赤や緑という色なのですか?

 そうです。「空が群青色の時に、向かい合って、、」みたいに。

___その時点から既に色彩が織り込まれている。

 そうですね。

___勝又さんの作品は、画面の色彩感がとてもキレイですものね。

 色は大事にしています。

___さらにプロデューサー的な役割もなさっています。

 企画したものを具体化していかなくてはならないので。
 ある程度脚本が出来た時点で、だいたい役は決まってるんです。「この役はコイツに頼もう」って。そこからスケジューリングして、ロケ場所を決めて、クルマを運転して行って、撮影です。
 そして、編集。

___編集は大変な作業ですよね。

 編集は、一番面白いですね。一番化けるんですよ。
 だいたい、脚本の段階で100%だとすると、それが現場でやってみると30%くらいまで落ちるんです。自分の想像した世界が完璧に作れるワケはないですから。日程の問題、気候の問題、温度の問題や、もちろん演技的な問題もありますから。
 撮ったテープを見直すと、その時点で10%まで落ちるんです。「うわ、、やっちまったな、オレ、、」となって、そこからどう100%まで持って行くかが面白いんです。「よぉし、見せ所だゾォ」みたいな。(笑)

___それは孤独な作業なのでしょ?

 孤独ですねぇ。1日24時間のうち、19〜20時間は作業に向かいっぱなしです。のめり込んじゃうんです。映画に関わっていると、他の欲が無くなっちゃいますね。
 映画を撮っていて栄養失調になったことがあるんです。3日に1食しか食べてない時があって、あんまり健康ではないですね。(笑)

女の子と男の子の間には、キッチリと見えてはいけないものがあるんですよね。
何かしらフィルターがかかっていると思うんです。
その壁みたいなものを表現したかったんです。


___そこまで集中して作業して、完成した時はどんなお気持ちですか?

 いやぁ、もうヤバイですよ。出産を経験したことがないので分かりませんが、「コイツはオレの子だ!」みたいな。(笑)
 特に、2005年に撮影した『青空夜空に星空』の時は嬉しかったですね。完成してアタマから観た時に、鳥肌が立ちました。世間に受けるかどうかも気にしながら観るんですけど、自分はコレが大好きです。やりたいことが全部出来たのは、コレだけかも知れないですね。
 だから、常に『青空夜空に星空』はハードルとしてあるんです。「次の作品は絶対越えてやる!」って。

___『青空夜空に星空』は、カメラの揺れる映像が印象的でした。

 『青空夜空に星空』はマイ・フェイバレットです。カメラを三脚で固定しないで、手で持って、さらに揺らしてるんです。技術的には異端な手法で、どこに行ってもバッシングされるんです。見難いとか、酔っちゃうとか。(笑)
 ブレブレですからね。ワザとピントもぼかしているんです。

___何を意図して揺らしているのですか?

 女の子と男の子の間には、キッチリと見えてはいけないものがあるんですよね。何かしらフィルターがかかっていると思うんです。相手の眼をじっと見れなかったり、その壁みたいなものを表現したかったんです。
 あの年代の不安定な感じ、常に一点を見つめていられない感情を言葉以外でどう表現するか、となったら映像か色かカメラか、だと思うんです。
 普通にカメラを三脚で固定して撮ってみたら、すごくつまらない画になっちゃって。これはダメだと思って、わざと揺らしながら撮って、それを編集で細かく繋いだら「そうだ!コレだ!」ってなった。
 あれは、オーバーにやり過ぎてもダメなんです。フレームの中に顔が入るか入らないか位がベストなんです。

___なるほど。あの繊細な揺らし方は、どうやって撮ってるんだろうと想像しながら観ていました。カメラはご自身で回してらっしゃるのですか?

 そうです。僕が撮ってます。

___どのシーンを観ても、構図も素敵です。

 被写体をドカンと真ん中に置かないようにはしています。隅に顔が見えるくらいの方が好きですね。

___例えば登場人物が会話をするシーンで、台詞の度にそれぞれの人物のショットに切り替わりますが、カメラは1台で撮っているんですか?

 1台ですね。

___ということは、同じ演技を何回もさせて、違う方向から撮るのですか?

 そうです。最低10回は演ってもらいますね。
 素材が多くあった方が、編集で料理のし甲斐がある。だから、役者は大変ですよね。「何回やらせるんだろう?」と思ってるでしょうね。(笑)

___そういう指示も監督の仕事なのですね。

 何回やらせても、モチベーションを均等にさせなきゃいけないんですよ。高過ぎてもダメだし、低過ぎてもダメ。
 だから、サラッと「じゃ、もう一回!」みたいに言う。で、最後に「良かったよ!」って。

___役者さんも応えてくれていますね。

 良い役者に囲まれました。

___役者さんはどのように集めるのですか?

 オーディションをかけるケースもあれば、友達だけで構成しちゃう時もあって、まちまちですね。

___友達と言っても、そういう勉強をなさっている。

 全く未経験の人もいます。僕は未経験の人の方が好きで、未経験の人ばかり使う傾向があります。

___ナチュラルな演技ですものね。

 ビックリしますよね。(笑)

___演出力でしょうか?

 いやいや、あれは役者の力ですよ。僕は現場で何もしてないですから。

___カメラマンは今後もご自身でなさるんですか?

 いや、そろそろ限界を感じてきました。演出に専念したいと思い始めているんです。
 でも実際は、説明するより自分でやった方が早いんですよ。そこは課題ですね。信頼できるカメラマンさんを見つけるしかないですよね。

___あの「揺れ感」は、その人の味が出ますものね。

 難しいですよ。自分がもう一人いれば良いんですけどね。(笑)

「絶対に岩井さんを倒しますから待っててください」って。
生意気だったので、そんなこと言っちゃいました。(笑)


___リスペクトしている作品や監督はいらっしゃいますか?

 岩井俊二監督がスゴク好きです。あの人は凄いなぁと思います。

___岩井監督の作品を初めて観たのは?

 小学校6年の時、たまたまTVでやっていた『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』 という60分のドラマだったんです。男の子と女の子の、甘酸っぱい花火大会の話なんです。しかも、設定がちょうど小学校6年生だったんです。もう感情移入しまくりで、「わぁ、こんながあるんだ!」って胸が痺れた。
 で、エンドロールで「監督/岩井俊二」って出て、「こんな人がいるんだ!」って名前を覚えてた。
 でもその時は、だからと言って、この人の作品をもっと観てみようとは全く思わなかったですね。映画を撮り始めて、いろいろな映画を観た時に、そこで「あ、この人だ」って再会した。で、観たみたらやっぱり凄い。

___ストーリーに響いたのですか?

 ストーリーもですが、映像も凄くキレイで、カメラワークも岩井監督の映画はやっぱり揺れるんですよ。それと、編集での、映像と音楽とのマッチングが見事です。絶対にこの人はココにこだわってるだろうな、って思う。
 自分は凄く影響されていると思います。

___岩井監督とはお会いしたことがありますか?

 1回だけ、トークショーを見に行ったことがあります。喫煙所でたまたま横になって、「僕も映画を作っているんですよ」という話をして、「絶対に岩井さんを倒しますから待っててください」って。生意気だったので、そんなこと言っちゃいました。(笑)

___(笑)そうしたら岩井監督は何てお答えになったんですか?

 なんだか忙しそうで、「おぅ、そうかそうか。待ってるよ!」って大人な対応で。それが悔しくて「チクショウ!」って。(笑)
(つづく)


18:00:00 | milkyshadows | |

冬の朝


手掛かりを見失った冬の朝、
駅までの道で 空を見上げた。

 迷ったら帰る場所 は どこだろう?
 見失ったら 辿る道は あるのだろうか?
 いちばん大切なものは いったい何だろう?


同じ過ちを繰り返すボクに、
キミは天使の笑顔で唄ってくれた。

__あれは何ていう歌だい?
  初めて聞いたはずなのに、
  昔から知っている唄みたいだった。。

 切なくて深い愛の唄。
 キミの祈りに、初めて気づいた。

 いちばん やわらかいところへ 呼吸する。
 そこから すべてが 始まるところへ。


冬の朝、
 ボクは 凛とした空気を 心地よいと感じるだろうか?
 穏やかな日射しに 安らぎを感じるだろうか?
 この空を 美しいと感じるだろうか?
そして、ボクは、
 そんな心 に気づいているのだろうか。。

 歓びだとか、悲しみだとか
 情熱だとか、虚しさだとか


愛 ならば
 あまねく宇宙に満ちている。
心が 動けば、磁場を描く。
 そうして 愛は 力を持つ。



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