16 December
足柄から世界へ
「俺にはやりたいことがあるんだ」と言っても、結果的に逃げてる時期があった。
「俺はまだまだこんなモンじゃねぇゼ」って、攻撃する手段は映画しかないですから。
「俺はまだまだこんなモンじゃねぇゼ」って、攻撃する手段は映画しかないですから。
___恋愛ドラマばかり撮ってらっしゃるのですか?
一歩踏み出す過程が好きなんですよ。
でも、それをずっとやっていると、1年に1回くらい反動が来るんです。『僕、ニート』はそんな作品です。
___『僕、ニート』は東京で撮影なさってますね。
そうです。
あの作品では、今まで自分がやってきたことを全部無視したんです。色も粗くして、キレイに撮ろうとは一切思わなかった。
___他の作品と比べると、ストーリーらしい展開もあるように思います。
あの時、ちょうど僕もニートだったんです。(笑)
ニートだと周りの目線が辛くて、友達もバカにしてくる。「何で働かないの?」って言われて、「俺にはやりたいことがあるんだ」と言っても、言い訳になってしまう。本当はそれをやりながらでも働ける筈なのに、結果的に逃げてる時期があった。「俺はまだまだこんなモンじゃねぇゼ」って思いながら撮った作品です。
その「怒り」とかも入ってるんです。何に対して怒っているのか分からないですけど。(笑)
自分に対しての怒りもあるし、働かない者を一括りに「ニート」と呼ぶ世間の見方にも怒りがありました。自分には、攻撃する手段は映画しかないですから。
___そういう意味では、メッセージ色の強い作品ですものね。
役者のレベルが高いんです。一緒にやっている年数が長い人たちばかりで、すごく信頼し合っていたんです。「好きなように演ってよ」って、スンナリ行きました。
満足出来ないから続けているんです。
極めたいですもん。
極めたいですもん。
___作品を撮り終わると、絞り出した感じになるのでしょうか?
編集が終わって上映が終わると、ちょっとホッとしますね。
好きな作品は、自分で何回も見てアラを探すんです。「ここを直せばもっと良くなる」って。だから、ずっと続いている感じがする作品もあるんです。
___撮り終わってもまたもう一本撮ろうと思うのはどういうお気持ちなのですか?
思い描いたものが撮れなくて、完璧じゃないからなんです。どこかしらに失敗している点があるんですよね。それが悔しいんです。「次は絶対に間違えない!」って。そうすればもっと良くなる。それの繰り返しです。満足出来ないから続けているんです。
「あぁ、また寝ない現場が待ってるのか、、」って、大変に思うんですけど、そんなこと言いながらも満更でもないのかな。
___だから一つのテーマを追ってるんですね。
そうです。じっくりね。
極めたいですもん。胸キュンの恋愛物の称号とかもらいたいですもん。(笑)
編集は、音楽が入った瞬間に一気に流れて行く感じがするんです。
音楽を着けるときが一番幸せです。
音楽を着けるときが一番幸せです。
___勝又監督作品には、rakiraさんの音楽が欠かせません。素敵なピアノですね。
本当に素敵なピアニストなんですよ。rakiraさんがいなかったら、僕は路頭に迷うと思いますよ。映画撮れないんじゃないかな。(笑)
つきあっていた彼女が、たまたまrakiraさんの路上演奏を聴いて「こんな人がいたよ」と教えてくれたんです。僕が映画のための音楽を探していて、彼女に相談したら「あの人がいるじゃん」って。それでCDを買って来てもらって聴いたのが出逢いです。僕の映画を送って「こんな映画を作ってます。これから映画の音楽を作っていただけないでしょうか?」とコンタクトしました。
___映画と音楽がピッタリとハマっていますね。
嬉しいですね。編集は先ず音楽無しで繋いで行くんですけど、音楽が入った瞬間に、溜まっていたものが一気に流れて行く感じがするんです。音楽を着けるときが一番幸せです。
映画を観てくれた方が、rakiraさんの路上演奏を聴いて、「あ、あの映画の曲だ」ってメールをくれたりします。青葉台とか町田で目撃情報が多いんです。
rakiraさんも「STROBO RUSHの映画の曲ですよね?」って声をかけられるみたいですけど、何本かまとめて制作しているので、新作のことは全く分からなくて、「あ、使ってました?」って困るみたいですけど。(笑)
「足柄から世界へ」って、よく口にしているんです。
自分の生まれ育った風景は、絶対に忘れたくないと思っています。
自分の生まれ育った風景は、絶対に忘れたくないと思っています。
___映画を撮ることは一大作業です。
お祭りですね。「文化祭」という感じです。ふざけている奴がいて、それを叱る奴がいて、真面目にやる奴がいて、オイシイ所だけ持って行く奴がいて。
だから、楽しんだ者勝ちだと思ってやっています。どんなに寝てなくて辛くても、眠いと言ってばかりでは何も始まらないんです。「監督」という立場ですから、監督が沈んでいたら現場が沈んでしまうし、それが作品に影響してしまうので、カラ元気でも常に「頑張ってみよう!」ってキャラを現場では作っていますね。
___人の輪の中心にいることは、どんなお気持ちですか?
プレッシャーもありますが、あまり気にしないようにしています。「何かあったら俺が責任取るから」って言うくらいですね。
こんな自分に賛同して付いて来てくれる仲間たちがいるので、「コイツらには絶対恩返ししないとなぁ」って思います。その恩返しとは何かと考えたら、自分がどんどん上へ行って、全員を引っ張り上げたいですね。
___どこまで引っ張りますか?
一番上まで。(笑)日本映画の頂点に立って、一番上からの景色が見たいんですよ。それを、昔から一緒にやって来た仲間、自分に付いて来てくれた仲間と一緒に見たいんです。
ゆくゆくは、小田原や足柄が観光スポットになるくらい有名にしたいですね。「カツマタと言えば、足柄」「カツマタと言えば、小田原」とかって。
だから、この町から世界へ飛び出したいですよね。「足柄から世界へ」って、よく口にしているんです。自分の生まれ育った風景は、絶対に忘れたくないと思っています。
___勝又さんにとって、この足柄地域の良さは何ですか?
「時間」が違うんですよね。東京から帰ってくると、時計の針がゆっくり動いている感じがして、一気に疲れが取れるんです。本当に癒しの場ですね。
暇な日は夜中まで一人でドライブしています。足柄地域全部、脇道まで入って。それくらい好きなんです。
___役者さんもこの辺の方ですか?
いえ、全く違います。みんな東京の方なので、東京で集合して、車でこっちへ連れてくるんです。みんなビックリしますよ。「凄い所だな!」って。(笑)
___わざと凄い所を選んで撮ってらっしゃいませんか?(笑)
(笑)そんなことないんですけどね。。
リアルなのが一番です。
リアルだからこそ伝わるもの、リアルだからこそ届くものというのがあるんです。
リアルだからこそ伝わるもの、リアルだからこそ届くものというのがあるんです。
___今年の夏は沖縄に行かれたそうですね。
4月と6月、2回行きました。
___カメラを持っての旅だったそうです。作品にされたのですね?
はい。『琉球at the bord walk』という作品です。
カメラを持って行くつもりはなかったんですけど、観光で海を撮ってこようと思ってビデオを持って一人で行ったんです。1日目は普通に観光スポットを廻って、2日目に宿が無くてどうしようかと思っていたら、食堂の横に座ったおじいちゃんと仲良くなったんです。その人が「ウチに泊まって行けよ」って。そのおじいちゃんが戦争の話をしてくれたんです。「南国・バカンス・常夏というイメージでみんな沖縄に来るけれど、この島にはこういう時代背景があって、こういうおぞましい過去があって、、」って。それを聞いて、「あぁ俺は全く沖縄のことが分かっていなかった」って恥ずかしくなっちゃったんです。
それで、せっかくビデオを持って来たんだから、沖縄本島を一周していろいろな人に話を聞こうと思ったんです。わざと自分はバカンスで来たように装って、相手の反応を見たり、戦争のこと、米軍基地のこと、就職難のこと、全部聞いてやろうと思って撮ったんです。
___ハプニングで生まれたドキュメンタリー作品なんですね。
ハプニングの連続でした。「カメラなんか持って行ったら、どうなるか分からないよ」と言われるような危険な場所があって、そこへ行ってカメラ回しながら歩いて、自殺行為ですよね。さすがにヤバくて逃げましたけど。(笑)
現地で10本パックのテープを5ケース買って、寝る時以外はカメラを回し続けて、撮って撮って撮りまくりました。
飛び込みで入った宿のおばちゃんに戦争の話を聞いたり、ホットドック売りの若者に出逢って、深夜でも時給630円だと聞いて「でも物価は東京と変わらないからツライでしょう?」って。それでも前を向く力は凄い島だと思いました。
8日間、行き当たりばったり。金無し宿無しでこんな旅が出来るんだよ、っていうガイドブック的な役割をしてくれたら良いですね。(笑)
___「ドキュメンタリー」というジャンルは、どうお考えですか?
ドキュメンタリーが一番好きなんです。生々しくて、リアルじゃないですか。
「そこにいる女の子たちをたまたま撮っている」という感じを大事にしていて、その手法を説明するなら「ドキュメンタリー」が近いんじゃないかと思います。
リアルなのが一番です。リアルだからこそ伝わるもの、リアルだからこそ届くものというのがあるんです。
___脚本を書くにあたっても、リアリティを追求なさっている。
そうですね。必要のない台詞をわざと入れたりして、日常にありがちなやり取りを脚本に散りばめたりします。
___作品の中の女の子たちの会話は生々しいですものね。
お客さんには、もう一人の登場人物になって欲しいんです。入り込んじゃってもらいたいんです。
共有したいんです。
映画というフィルターを使って、「こういう事って、あったでしょ?」って。
相手の胸の中に入り込んで、しまい込んだ記憶の箱を開けるのが快感なんです。
映画というフィルターを使って、「こういう事って、あったでしょ?」って。
相手の胸の中に入り込んで、しまい込んだ記憶の箱を開けるのが快感なんです。
___どうして「映画」という手段を択ぶのですか?
難しいですねぇ。。
やっぱり、詩が書きたいんですよ。でも、詩だけでは食べて行けないことを専門学校に入ってから知って、「じゃぁどうすれば良いんだ?」と思いましたが、「映像に詩を乗せれば良いんだ!」って気づいたんです。そうすれば相乗効果で良いものが生まれる筈だ、って。
だから、「言葉」を伝えたいが為に、遠回りして映画を撮っている感じですね。
___なるほど。。
例えば、たった6行の詩を書いたとしたら、その6行を伝える為に映画を撮るんです。遠回りですが、それしか方法がないんです。
___詩は今でも書いてらっしゃるんですか?
昔は1日1編書いていたんですけど、今は「詩」という形では書いていないですね。それを脚本に持って行くようにしています。「脚本用の詩」ですね。そこからイメージを膨らますんです。
___やはりそれは「恋愛物」なんですか?
恋愛だったり、昔のことを想って書いたりします。昔の彼女だったり、昔の友達だったり、親父だったりお袋だったり、実際に体験した出来事だったり。
___そのようにして、「何」を映画として撮りたいですか?
それはズバリ「記憶」なんですよ。
___「記憶」。。
自分の記憶を、映像に刷り上げて行きたいんですよ。だから、結果的に、自分の為に撮るんですよね。今まで経験してきた物事を忘れない為に、それを形として残す為に、撮るんです。
あの時思ったこと、あの時感じたこと、そう感じた自分が確かに居たことを表現するには何をすれば良いかと言ったら、それを映画にしてしまうんです。だから、映画の何処かしらに「自分」がいるんです。だから田んぼを使うのかもしれないですね。田んぼの何処かに「自分」が居て欲しい。
あとは「憧れ」です。自分が経験出来なかったことも、映画の中では何でも自由ですから。「こういうシチュエーションで、こういう言葉を言われたかった」みたいに。
共有したいんです。映画というフィルターを使って、「こういう事って、あったでしょ?」って。「はい、ありました」って言われるのが、快感ですよ。
___それを、どういう人たちと共有したいですか?
やっぱり、僕みたいにパッとしない、好きな人に「好き」と言えない青春を送った人とか、ね。
相手の胸の中に入り込んで、しまい込んだ記憶の箱を開けるのが快感なんです。「ほら、見ろ」って。(笑)
___(笑)思い出したくない事まで思い出したりしますよね。
イイ迷惑ですよね。(笑)
___そのフタを開けて、どうするんですか?(笑)
開けっ放しで、帰っちゃいます。(笑)
09 December
『青空夜空に星空』
映画を撮っていて栄養失調になったことがあるんです。
映画に関わっていると、他の欲が無くなっちゃいますね。
映画に関わっていると、他の欲が無くなっちゃいますね。
___ひとつの映画を作る中で、脚本・演出の他には、どんな役割をなさっているのですか?
まず企画を考えます。「男の子と女の子がいて、真夜中の校庭でふたり向き合って、、」みたいな漠然とした感じで。
そういうところから入って、今度はその設定にいろいろな「色」をつけていくんです。ここがこの色で、これはこの色で、こういう会話をしていて、この子たちの関係はこういう感じで、、みたいに。
そうしていくと、だんだんそれが脚本になっていくんです。
___今おっしゃった「色」というのは、具体的に赤や緑という色なのですか?
そうです。「空が群青色の時に、向かい合って、、」みたいに。
___その時点から既に色彩が織り込まれている。
そうですね。
___勝又さんの作品は、画面の色彩感がとてもキレイですものね。
色は大事にしています。
___さらにプロデューサー的な役割もなさっています。
企画したものを具体化していかなくてはならないので。
ある程度脚本が出来た時点で、だいたい役は決まってるんです。「この役はコイツに頼もう」って。そこからスケジューリングして、ロケ場所を決めて、クルマを運転して行って、撮影です。
そして、編集。
___編集は大変な作業ですよね。
編集は、一番面白いですね。一番化けるんですよ。
だいたい、脚本の段階で100%だとすると、それが現場でやってみると30%くらいまで落ちるんです。自分の想像した世界が完璧に作れるワケはないですから。日程の問題、気候の問題、温度の問題や、もちろん演技的な問題もありますから。
撮ったテープを見直すと、その時点で10%まで落ちるんです。「うわ、、やっちまったな、オレ、、」となって、そこからどう100%まで持って行くかが面白いんです。「よぉし、見せ所だゾォ」みたいな。(笑)
___それは孤独な作業なのでしょ?
孤独ですねぇ。1日24時間のうち、19〜20時間は作業に向かいっぱなしです。のめり込んじゃうんです。映画に関わっていると、他の欲が無くなっちゃいますね。
映画を撮っていて栄養失調になったことがあるんです。3日に1食しか食べてない時があって、あんまり健康ではないですね。(笑)
女の子と男の子の間には、キッチリと見えてはいけないものがあるんですよね。
何かしらフィルターがかかっていると思うんです。
その壁みたいなものを表現したかったんです。
何かしらフィルターがかかっていると思うんです。
その壁みたいなものを表現したかったんです。
___そこまで集中して作業して、完成した時はどんなお気持ちですか?
いやぁ、もうヤバイですよ。出産を経験したことがないので分かりませんが、「コイツはオレの子だ!」みたいな。(笑)
特に、2005年に撮影した『青空夜空に星空』の時は嬉しかったですね。完成してアタマから観た時に、鳥肌が立ちました。世間に受けるかどうかも気にしながら観るんですけど、自分はコレが大好きです。やりたいことが全部出来たのは、コレだけかも知れないですね。
だから、常に『青空夜空に星空』はハードルとしてあるんです。「次の作品は絶対越えてやる!」って。
___『青空夜空に星空』は、カメラの揺れる映像が印象的でした。
『青空夜空に星空』はマイ・フェイバレットです。カメラを三脚で固定しないで、手で持って、さらに揺らしてるんです。技術的には異端な手法で、どこに行ってもバッシングされるんです。見難いとか、酔っちゃうとか。(笑)
ブレブレですからね。ワザとピントもぼかしているんです。
___何を意図して揺らしているのですか?
女の子と男の子の間には、キッチリと見えてはいけないものがあるんですよね。何かしらフィルターがかかっていると思うんです。相手の眼をじっと見れなかったり、その壁みたいなものを表現したかったんです。
あの年代の不安定な感じ、常に一点を見つめていられない感情を言葉以外でどう表現するか、となったら映像か色かカメラか、だと思うんです。
普通にカメラを三脚で固定して撮ってみたら、すごくつまらない画になっちゃって。これはダメだと思って、わざと揺らしながら撮って、それを編集で細かく繋いだら「そうだ!コレだ!」ってなった。
あれは、オーバーにやり過ぎてもダメなんです。フレームの中に顔が入るか入らないか位がベストなんです。
___なるほど。あの繊細な揺らし方は、どうやって撮ってるんだろうと想像しながら観ていました。カメラはご自身で回してらっしゃるのですか?
そうです。僕が撮ってます。
___どのシーンを観ても、構図も素敵です。
被写体をドカンと真ん中に置かないようにはしています。隅に顔が見えるくらいの方が好きですね。
___例えば登場人物が会話をするシーンで、台詞の度にそれぞれの人物のショットに切り替わりますが、カメラは1台で撮っているんですか?
1台ですね。
___ということは、同じ演技を何回もさせて、違う方向から撮るのですか?
そうです。最低10回は演ってもらいますね。
素材が多くあった方が、編集で料理のし甲斐がある。だから、役者は大変ですよね。「何回やらせるんだろう?」と思ってるでしょうね。(笑)
___そういう指示も監督の仕事なのですね。
何回やらせても、モチベーションを均等にさせなきゃいけないんですよ。高過ぎてもダメだし、低過ぎてもダメ。
だから、サラッと「じゃ、もう一回!」みたいに言う。で、最後に「良かったよ!」って。
___役者さんも応えてくれていますね。
良い役者に囲まれました。
___役者さんはどのように集めるのですか?
オーディションをかけるケースもあれば、友達だけで構成しちゃう時もあって、まちまちですね。
___友達と言っても、そういう勉強をなさっている。
全く未経験の人もいます。僕は未経験の人の方が好きで、未経験の人ばかり使う傾向があります。
___ナチュラルな演技ですものね。
ビックリしますよね。(笑)
___演出力でしょうか?
いやいや、あれは役者の力ですよ。僕は現場で何もしてないですから。
___カメラマンは今後もご自身でなさるんですか?
いや、そろそろ限界を感じてきました。演出に専念したいと思い始めているんです。
でも実際は、説明するより自分でやった方が早いんですよ。そこは課題ですね。信頼できるカメラマンさんを見つけるしかないですよね。
___あの「揺れ感」は、その人の味が出ますものね。
難しいですよ。自分がもう一人いれば良いんですけどね。(笑)
「絶対に岩井さんを倒しますから待っててください」って。
生意気だったので、そんなこと言っちゃいました。(笑)
生意気だったので、そんなこと言っちゃいました。(笑)
___リスペクトしている作品や監督はいらっしゃいますか?
岩井俊二監督がスゴク好きです。あの人は凄いなぁと思います。
___岩井監督の作品を初めて観たのは?
小学校6年の時、たまたまTVでやっていた『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』 という60分のドラマだったんです。男の子と女の子の、甘酸っぱい花火大会の話なんです。しかも、設定がちょうど小学校6年生だったんです。もう感情移入しまくりで、「わぁ、こんながあるんだ!」って胸が痺れた。
で、エンドロールで「監督/岩井俊二」って出て、「こんな人がいるんだ!」って名前を覚えてた。
でもその時は、だからと言って、この人の作品をもっと観てみようとは全く思わなかったですね。映画を撮り始めて、いろいろな映画を観た時に、そこで「あ、この人だ」って再会した。で、観たみたらやっぱり凄い。
___ストーリーに響いたのですか?
ストーリーもですが、映像も凄くキレイで、カメラワークも岩井監督の映画はやっぱり揺れるんですよ。それと、編集での、映像と音楽とのマッチングが見事です。絶対にこの人はココにこだわってるだろうな、って思う。
自分は凄く影響されていると思います。
___岩井監督とはお会いしたことがありますか?
1回だけ、トークショーを見に行ったことがあります。喫煙所でたまたま横になって、「僕も映画を作っているんですよ」という話をして、「絶対に岩井さんを倒しますから待っててください」って。生意気だったので、そんなこと言っちゃいました。(笑)
___(笑)そうしたら岩井監督は何てお答えになったんですか?
なんだか忙しそうで、「おぅ、そうかそうか。待ってるよ!」って大人な対応で。それが悔しくて「チクショウ!」って。(笑)
(つづく)
02 December
『月面恋文合唱団』
「ときめき」とか「きらめき」を撮るには、20〜30分が一番ギュッと詰まるんですよ
___いろいろな映画祭に作品を出されていますね。
『青空夜空に星空』は、エディロールビデオ・フェスティバルで総合グランプリになりました。
『夏音風鈴』は小田原映画祭と長岡アジア映画祭と、あともう一つ山形国際ムービーフェスティバルに行っています。
映画祭は地方の方が盛んだったりするんです。
___小田原映画祭では西さがみ賞を受賞なさいました。
グランプリ狙ってたんですけど、悔しくて仕様がないですよ。(笑)だからロビンソンに行く度に悔しさが滲み出る。表彰式があそこだったんです。
___作品は20分程度のショートフィルムが多いようですが、「ショートフィルム」ということにはこだわりがあるのですか?
あの題材で、「ときめき」とか「きらめき」を撮るには、20〜30分が一番ギュッと詰まるんですよ。あれが60分もあったら長い。だから、時間にはこだわってます。短ければ短いほど良い。
長編は、全く違うことをやるんです。青春モノではあるんですけど、女の子のではなくて、男臭い感じにしちゃったり。
___今まで何本くらい撮ったのですか?
数えてないですけど、40〜50本はあるかな。
___そんなにあるんですか!
足柄にいる頃に、もう20本くらい撮ってましたから。
___どのくらいの撮影期間で撮るのですか?
2〜3日です。丸々、朝から晩まで。
時間との戦いですから、過酷ですよ。(笑)
詩の断片を繋ぎ合わせたら、物語になると思ってるんです。
一個では抽象的なものでも、それが積み重なると一つのものになる。
一個では抽象的なものでも、それが積み重なると一つのものになる。
___撮り始めたのはいつ頃からですか?
最初に撮ったのは7年前です。19歳の頃、専門学校時代に撮り始めました。
___映画の専門学校?
いや全く違って、僕ね、文学の専門学校に行っちゃったんです。詩が書きたかったんです。
言葉の勉強がしたくてその学校に入ったんですけど、詩の授業は1週間に1時間しかなくて、後の授業は三島由紀夫の本を読んで討論会とか、訳の分からないことばかりやってて、「コイツらには着いて行けない」と思った。(笑)
それでずっとサボってたんですけど、たまたま入った映画館で『バトル・ロワイヤル』を観て、「映画って、こんな凄いんだ!」って思った。
___『バトル・ロワイヤル』、、
殺し合いの映画なんですけど、裏側に青春が詰まってるんですよ。その青春の部分がすごく好きで、「オレもこんな映画撮りたいな」っと思って、次の日に、貯金を叩いて中古のデジタルビデオカメラを買いに行きました。
買ったはいいけど使い方が分からなくて、秋葉原に通いつめて店員さんに聞きまくった。(笑)それが始まりですね。
___でも、映画って一人では出来ないですよね。
その時一緒に遊んでいた連中が「面白そうな事やってるじゃん」という感じになって、「じゃ、オレたちで映画撮ろうぜ」みたいなノリで始まりました。
___脚本も書いてらっしゃいますが、それは文学からの流れでしょうか?
正直な話、全くそういう勉強はしていないんです。本当に直感で書いてるんです。
脚本が一番怖くて、頭がトランス状態になるんです。気がついたら書き上がってる。「あれ、オレ、こんなの書いたっけ?」みたいな。(笑)
だから、もう一人の自分が書いてますね、あれは。自分の中にゴーストライターがいますね。(笑)
___文学と言っても、詩というのは短編で、断片を切り取るようなスタンスです。それが、映画となるとストーリーがありますから、だいぶスタンスが違うように感じますが。
詩の断片を繋ぎ合わせたら、物語になると思ってるんです。一個では抽象的なものでも、それが何個も積み重なると、一つの確立したものになる。
だから、起承転結とか構成のことが自分は全く分からないので、難しいんです。
___まして映像があるから、繋ぎ合わせるのは難しいでしょうね。場面ごとの衣装の辻褄合わせなども、脚本の段階で想定しておかなくてはいけないのですよね?
そういう最低限のミスはないように現場ではしていますが、衣装は全然こだわってないです。
___映像では全部が映ります。衣装、髪型、ロケーション、、
ロケーションにしかこだわりはないですね。何にこだわるかと言ったら、ロケ地です。
やっぱり「地元愛」って言うんですかね、それがすごく強いんです。何としてでも、足柄、小田原、開成町、大井町、山北とか、この西湘地区で撮りたいんです。どんなにキレイな風景でも、他の土地では撮りたくないんです。
緑が大好きなんです。
田んぼが撮りたくてやってるようなものですから。(笑)
田んぼが撮りたくてやってるようなものですから。(笑)
___そういえば、『夏音風鈴』の田んぼのシーンはとても美しいです。さすが、緑が一番輝く時期を知ってらっしゃる。地元を題材にする良さだと感じました。
緑が大好きなんです。
田んぼの緑にも表情があって、朝の顔、昼の顔、夕方の顔、夜の顔があって、ベストなのは3〜5時なんですよ。太陽が斜めからちょうど良く当たって、それを逆光で撮ると凄くキレイなんです。稲の先端がひらひら揺れて。
田んぼが撮りたくてやってるようなものですから。(笑)
___田んぼでは、よく遊んだんですか?
そういう記憶はないんですけど、僕は南足柄の内山という所に育ったので、常に田んぼがあったんですよ。だから、長年連れ添った恋人みたいなもので、田んぼがないと寂しい。(笑)
___『シリウス/ソライロノキミ』では、朝の田んぼのシーンがあります。
あれは8時くらいです。8時の田んぼは、太陽が真上から当たるんです。なので、カメラは狙いやすい。右へ振っても左へ振っても、どこも均等な色が撮れるんです。
女の子が赤い衣装なんです。緑から、赤が通って、緑。そのコントラストを撮りたかったんです。夕方だと、緑に黄色が入っちゃうんです。
女の子が一歩踏み出す瞬間を撮りたいんですよ。
その恋が叶う叶わないではなくて、伝えるまでの過程が好きなんです。
その恋が叶う叶わないではなくて、伝えるまでの過程が好きなんです。
___作品の中で、「赤」の色にはメッセージを込めているように感じました。『青空夜空に星空』では、マニキュアの赤、お弁当箱の赤。『シリウス/ソライロノキミ』の女の子は、赤いワンピースに赤いハイヒール。『僕、ニート』では、赤い傘がキーになっています。
普段、赤い衣装を着ている人ってあんまり見ないじゃないですか。会社に行くのに、赤い服なんてこともない。なので、赤は特別なイメージなんです。
だから、女の子の「今日はガンバルぞ」という特別な日とか、少女から大人へのちょっと背伸びをした感じの、そういう女の子らしさの象徴が、桃色やピンクではなくて、僕は「赤」なんじゃないかなと思って。
マニキュアに「真っ赤」なんて、なかなかいなくないですか?
___選ばないですね。(笑)
そういうのって、大人に憧れる女の子がやってしまいがちなミス、みたいなものですよね。自分的にはすごく頑張ってるつもりなんだけど、周りからみたら「なんだ、アイツ!?」みたいな。
そういう空回りした感じが、好いですよね。女の子が一歩踏み出す瞬間を撮りたいんですよ。奥手で何をやってもダメな女の子が好きな男のために頑張る、みたいな。その恋が叶う叶わないではなくて、伝えるまでの過程が好きなんです。
___そういう10代の女の子の気持ちをとてもよく描写されていますけれど、それは取材するのですか?
いや、妄想するんです。(笑)
例えば街を歩いていてカワイイ女の子がいたとしたら、「この娘は今までこういう恋をしてきたんだろうなぁ、、今はこういう彼氏がいて、こういう家庭に育って、、」とか、勝手に妄想するんです。電車の前に座った女の子がiPodとか聴いていたら、「今流れている曲は絶対コレだ」とか。
___かなり人間観察なさってるんですね。
女の子の会話には、常に何か感じますね。普通に聞いているだけで感動しちゃいます。他愛もない会話なんでしょうけど、あの年代しか出来ない会話ですからね。
だから、言葉には注意しています。
___勝又さんご自身は、どんな10代だったんですか?
もう自由奔放に遊びまくってましたね。ま、とりあえず、女の子にはモテなかったですけど。(笑)
___その頃も、女の子たちの会話に耳をそばだてていたんですか?
いや、全く聞いてなかったです。(笑)
というか、「女と話すヤツはナンパだ」という暗黙の了解があって、「絶対コイツらとはしゃべんない」という感じでした。でも、お年頃ですから好きな人とか出来るんですけど、なかなか近づけなくて、「ダメだな、オレ、、」とかなってました。
ラブレターを書いている時の気持ちというのは最高潮だと思うんです。
それこそ「真っ赤」だと思うんです。
それこそ「真っ赤」だと思うんです。
___ラブレターとか書いたりしました?
中学の頃、書きましたねぇ。すごい寒いラブレターですよ。脚本みたいに「、、、」がいっぱいあるんです。(笑)
___勝又さんのブログは『月面恋文合唱団』というタイトルですが、恋文/ラブレターには思い入れがあるのかしら?
想いは直接伝えるのが良いと思うんですけど、直接行くまでに、想いを綴るという過程があって、そのラブレターを書いている時の気持ちというのは最高潮だと思うんです。それこそ、その時の気持ちは「真っ赤」だと思うんです。
___想いが濃縮されています。
ドキドキしますよね。字をすごく丁寧に書いたり。
今の女の子たちはメールを使ってしまうらしいですけど、それはそれでアリだと思うんです。絵文字とか顔文字とか、遠回りした感じが好きですね。
でも、絵文字を文章にどう置き換えるか、なんです。昔は文章でしか伝えられなかった訳ですから。
___ラブレターもマルチメディア化しています。(笑)
今ラブレターもらったらビックリしますよね。「え、コレ、メールで良いじゃん」って。それをわざわざ自分の手で書いて来てくれるっていうのは、結構デカイと思います。それは嬉しいですよね。
___それが映画となると、すべてがこもっています。
楽しくってしょうがないですよ、映画を作ることが。
(つづく)