Complete text -- "『青空夜空に星空』"
09 December
『青空夜空に星空』
映画を撮っていて栄養失調になったことがあるんです。
映画に関わっていると、他の欲が無くなっちゃいますね。
映画に関わっていると、他の欲が無くなっちゃいますね。
___ひとつの映画を作る中で、脚本・演出の他には、どんな役割をなさっているのですか?
まず企画を考えます。「男の子と女の子がいて、真夜中の校庭でふたり向き合って、、」みたいな漠然とした感じで。
そういうところから入って、今度はその設定にいろいろな「色」をつけていくんです。ここがこの色で、これはこの色で、こういう会話をしていて、この子たちの関係はこういう感じで、、みたいに。
そうしていくと、だんだんそれが脚本になっていくんです。
___今おっしゃった「色」というのは、具体的に赤や緑という色なのですか?
そうです。「空が群青色の時に、向かい合って、、」みたいに。
___その時点から既に色彩が織り込まれている。
そうですね。
___勝又さんの作品は、画面の色彩感がとてもキレイですものね。
色は大事にしています。
___さらにプロデューサー的な役割もなさっています。
企画したものを具体化していかなくてはならないので。
ある程度脚本が出来た時点で、だいたい役は決まってるんです。「この役はコイツに頼もう」って。そこからスケジューリングして、ロケ場所を決めて、クルマを運転して行って、撮影です。
そして、編集。
___編集は大変な作業ですよね。
編集は、一番面白いですね。一番化けるんですよ。
だいたい、脚本の段階で100%だとすると、それが現場でやってみると30%くらいまで落ちるんです。自分の想像した世界が完璧に作れるワケはないですから。日程の問題、気候の問題、温度の問題や、もちろん演技的な問題もありますから。
撮ったテープを見直すと、その時点で10%まで落ちるんです。「うわ、、やっちまったな、オレ、、」となって、そこからどう100%まで持って行くかが面白いんです。「よぉし、見せ所だゾォ」みたいな。(笑)
___それは孤独な作業なのでしょ?
孤独ですねぇ。1日24時間のうち、19〜20時間は作業に向かいっぱなしです。のめり込んじゃうんです。映画に関わっていると、他の欲が無くなっちゃいますね。
映画を撮っていて栄養失調になったことがあるんです。3日に1食しか食べてない時があって、あんまり健康ではないですね。(笑)
女の子と男の子の間には、キッチリと見えてはいけないものがあるんですよね。
何かしらフィルターがかかっていると思うんです。
その壁みたいなものを表現したかったんです。
何かしらフィルターがかかっていると思うんです。
その壁みたいなものを表現したかったんです。
___そこまで集中して作業して、完成した時はどんなお気持ちですか?
いやぁ、もうヤバイですよ。出産を経験したことがないので分かりませんが、「コイツはオレの子だ!」みたいな。(笑)
特に、2005年に撮影した『青空夜空に星空』の時は嬉しかったですね。完成してアタマから観た時に、鳥肌が立ちました。世間に受けるかどうかも気にしながら観るんですけど、自分はコレが大好きです。やりたいことが全部出来たのは、コレだけかも知れないですね。
だから、常に『青空夜空に星空』はハードルとしてあるんです。「次の作品は絶対越えてやる!」って。
___『青空夜空に星空』は、カメラの揺れる映像が印象的でした。
『青空夜空に星空』はマイ・フェイバレットです。カメラを三脚で固定しないで、手で持って、さらに揺らしてるんです。技術的には異端な手法で、どこに行ってもバッシングされるんです。見難いとか、酔っちゃうとか。(笑)
ブレブレですからね。ワザとピントもぼかしているんです。
___何を意図して揺らしているのですか?
女の子と男の子の間には、キッチリと見えてはいけないものがあるんですよね。何かしらフィルターがかかっていると思うんです。相手の眼をじっと見れなかったり、その壁みたいなものを表現したかったんです。
あの年代の不安定な感じ、常に一点を見つめていられない感情を言葉以外でどう表現するか、となったら映像か色かカメラか、だと思うんです。
普通にカメラを三脚で固定して撮ってみたら、すごくつまらない画になっちゃって。これはダメだと思って、わざと揺らしながら撮って、それを編集で細かく繋いだら「そうだ!コレだ!」ってなった。
あれは、オーバーにやり過ぎてもダメなんです。フレームの中に顔が入るか入らないか位がベストなんです。
___なるほど。あの繊細な揺らし方は、どうやって撮ってるんだろうと想像しながら観ていました。カメラはご自身で回してらっしゃるのですか?
そうです。僕が撮ってます。
___どのシーンを観ても、構図も素敵です。
被写体をドカンと真ん中に置かないようにはしています。隅に顔が見えるくらいの方が好きですね。
___例えば登場人物が会話をするシーンで、台詞の度にそれぞれの人物のショットに切り替わりますが、カメラは1台で撮っているんですか?
1台ですね。
___ということは、同じ演技を何回もさせて、違う方向から撮るのですか?
そうです。最低10回は演ってもらいますね。
素材が多くあった方が、編集で料理のし甲斐がある。だから、役者は大変ですよね。「何回やらせるんだろう?」と思ってるでしょうね。(笑)
___そういう指示も監督の仕事なのですね。
何回やらせても、モチベーションを均等にさせなきゃいけないんですよ。高過ぎてもダメだし、低過ぎてもダメ。
だから、サラッと「じゃ、もう一回!」みたいに言う。で、最後に「良かったよ!」って。
___役者さんも応えてくれていますね。
良い役者に囲まれました。
___役者さんはどのように集めるのですか?
オーディションをかけるケースもあれば、友達だけで構成しちゃう時もあって、まちまちですね。
___友達と言っても、そういう勉強をなさっている。
全く未経験の人もいます。僕は未経験の人の方が好きで、未経験の人ばかり使う傾向があります。
___ナチュラルな演技ですものね。
ビックリしますよね。(笑)
___演出力でしょうか?
いやいや、あれは役者の力ですよ。僕は現場で何もしてないですから。
___カメラマンは今後もご自身でなさるんですか?
いや、そろそろ限界を感じてきました。演出に専念したいと思い始めているんです。
でも実際は、説明するより自分でやった方が早いんですよ。そこは課題ですね。信頼できるカメラマンさんを見つけるしかないですよね。
___あの「揺れ感」は、その人の味が出ますものね。
難しいですよ。自分がもう一人いれば良いんですけどね。(笑)
「絶対に岩井さんを倒しますから待っててください」って。
生意気だったので、そんなこと言っちゃいました。(笑)
生意気だったので、そんなこと言っちゃいました。(笑)
___リスペクトしている作品や監督はいらっしゃいますか?
岩井俊二監督がスゴク好きです。あの人は凄いなぁと思います。
___岩井監督の作品を初めて観たのは?
小学校6年の時、たまたまTVでやっていた『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』 という60分のドラマだったんです。男の子と女の子の、甘酸っぱい花火大会の話なんです。しかも、設定がちょうど小学校6年生だったんです。もう感情移入しまくりで、「わぁ、こんながあるんだ!」って胸が痺れた。
で、エンドロールで「監督/岩井俊二」って出て、「こんな人がいるんだ!」って名前を覚えてた。
でもその時は、だからと言って、この人の作品をもっと観てみようとは全く思わなかったですね。映画を撮り始めて、いろいろな映画を観た時に、そこで「あ、この人だ」って再会した。で、観たみたらやっぱり凄い。
___ストーリーに響いたのですか?
ストーリーもですが、映像も凄くキレイで、カメラワークも岩井監督の映画はやっぱり揺れるんですよ。それと、編集での、映像と音楽とのマッチングが見事です。絶対にこの人はココにこだわってるだろうな、って思う。
自分は凄く影響されていると思います。
___岩井監督とはお会いしたことがありますか?
1回だけ、トークショーを見に行ったことがあります。喫煙所でたまたま横になって、「僕も映画を作っているんですよ」という話をして、「絶対に岩井さんを倒しますから待っててください」って。生意気だったので、そんなこと言っちゃいました。(笑)
___(笑)そうしたら岩井監督は何てお答えになったんですか?
なんだか忙しそうで、「おぅ、そうかそうか。待ってるよ!」って大人な対応で。それが悔しくて「チクショウ!」って。(笑)
(つづく)
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