Complete text -- "「真実の淵」"

20 January

「真実の淵」


南の島の、
誰もいない波止場にゴロンと寝ころんで、
一晩中、星を見ていたことがあります。

 満天の星。
 天の川が、ぼやけた雲みたいに、
 星空を滲ませていた。


街に生まれ育った私にとって、
星の輝きの他に何も光るものが見えない夜なんて、
あの晩が最初で最後。

 「もしも、この瞬間に、
  背中の地面が消えて無くなったとしたら360°が星空なのに」

地平線を恨めしく思いながらも、
ただ一人宇宙に漂う自分を想像したら、
たまらない孤独感に襲われてきました。

大地に抱かれる安心に、我に返ると、
その暖かさに、
体中がまどろむように溶けて行くようでした。


私は、その時、
自分の一番内側の、
本当の真ん中をリアルに感じたような気がしています。

 そこに繋がってさえいれば、
 天も地も、前も後ろも、左も右も同じこと。
 絶対的な中心軸。

 それは、
 私に勇気と安心を与えてくれたけれど、
 同時に、
 私は孤独と恐怖を思い知らされました。


私の中心にある「真実の淵」は、
ぽっかり深くて、あまりにも遠く、
魂を連れ去るほどの、冷たい風が吹き上げてくる。

その中心をのぞき込むたびに、
私は、今も、
身動きがとれなくなるのです。
motoka



17:50:00 | milkyshadows | |
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