Complete text -- "『Eco Surfer (エコサーファー)』"

24 August

『Eco Surfer (エコサーファー)』

artist file "tanebito" [Archives #5] 
堀 直也さん(サーファー / Eco Surfer


___「Eco Surfer(エコサーファー)」というネーミングはユニークですね。

 自分の屋号なので、いろいろ考えました。
 「環境」と「サーフィン」ということをネーミングから浮かびやすいものにしたくて、辞書で調べて「Environmental Surfer」とか「Green Surfer」とか考えたんですが、長過ぎたりゴロが悪かったりで。
 「Eco Surfer(エコサーファー)」というのは単純にリズムが良くて覚えやすいし、直球ですね。

___「エコサーファー」と名乗るようになってからは何年くらいなんですか?

 5年弱です。
 25歳くらいまでは、普通に土日だけサーフィンして、普通にサラリーマンやって、という毎日でした。ある時、人生このままでいいのかなって真剣に考えて、考え抜いて、その時に「エコサーファー」の軸になるようなものがモヤモヤと浮かび上がったんです。
 その時、横須賀から藤沢の会社に通っていたんですけど、辻堂で一人暮らしすることにしたんです。それで、そのモヤモヤの一つのカタチとして「毎朝会社に行く前に必ずビーチクリーンをしよう!」と決めて、その日から、たった15分だけですが、365日のうち320〜330日はビーチクリーンをしました。毎朝、同じ時間に。
 でもやっているうちに、だんだん、正直イヤになってきたんです。やってもやってもゴミは減らないし、手伝ってくれる人もいないし。「あれ、、思ったのと違うな、、」って。
 それで、「この海の向こうにはアメリカがあるんだな」とか単純に思うようになってきたんです。ハワイとかカリフォルニアとか、サーフィンの盛んな国へ行って、彼らの海の守り方とかサーフィンのスタイルとか、エコロジーも含めてビーチカルチャーを学ぶ一人旅がしたいと思ったんです。
 それから一年間、ビーチクリーンをしながら計画をして、お金を貯めて、英語の勉強もちょこちょこして、アメリカに渡りました。
 「Eco Surfer(エコサーファー)」という言葉は、向こうへ行って半年くらいの時に出て来ました。ホームページを立ち上げて、アメリカにいる一人の日本男児のサーファーだ、って。それからどんどん太くなって、今に至ります。

___海外でステイされたことがあるそうですね。

 5年間の学生ビザを取って、アメリカに行きました。最初はLA、それからハワイ。
 英語の学校に入って、最初の4ヶ月くらいは一生懸命勉強しました。早く学校に行って予習して、その後に図書館へ行って、1日15時間くらい英語の勉強をしたんだけど、周りは日本人ばかりで勉強はつまらないし、英語も全く上達しなかった。
 それだったら行きたい所へどんどん行ってしまおうと思って、たまたまインターネットでWWOOF(ウーフ) という非営利の組織を見つけたんです。それは、農園や農場でマンパワーを募集している人たちと、体力はあるけどお金がなくて、でもいろいろなことを手伝いたい、泊まる所とゴハンは提供してもらいたい、という人たちを繋げるシステムで、そのグループに約20$払うと、そういうマンパワーを欲しがっている農園のリストが送られてくるんですよ。
 それで、カリフォルニア州のリストをもらって見てみると、ソーラーパネルで、お水は雨水を貯めて、環境にやさしい有機野菜をつくっている、という農園があったんです。そこは、サンフランシスコと言っても本当に田舎で、それこそ隣の家まで車で10分というような場所。もう日本人なんか絶対にいない。
 そこへ行ってその人たちと生活をしながら、朝早く起きて水やりをしたり、土を混ぜて苗を植えたり、トラクターで開墾したり、ソーラーシステムの電池を交換したり、あっという間に1ヶ月が過ぎた。そこですごく英語が上達したんです。そこにはもうアメリカ人しかいないので。
 実は、そのサンフランシスコで『エコサーファー』というグループを立ち上げました。僕のヴィジョンを農家の人たちも知っていたし、協力してくれていたので、心良く「旅立っていけ」ということで、今度はハワイ州のリストをゲットしたんです。ホストがサーファー、海まで歩いて行ける、という条件で探しました。それでハワイ島へ行って、そこから毎日サーフィンです。

___サーフィン、本当にお好きなんですね。

 サーフィンは、ライフスタイルなんですよ。
 海は母などと言われるけど、精神的にもリセットされるし、とにかく気持ちが良いんです。とても健康的な生活を送ることができます。
 朝と夕方に波がキレイにまとまることが多いんです。風が吹かないことが多いんですね。岸の遥か沖から吹いてくる風によって波はつくられ、今度は岸から海に向かって吹く風(オフショア)が吹き始めると波の表面がキレイに整えられ、サーファーにとって最高の波になるんです。でも、あまりにオフショアが強く吹き過ぎると、今度は波が消えちゃうんですね。だから、そのわずかな瞬間っていうのがすごくおもしろい。
 波があれば、朝4時には起きちゃうし、夜は11時には寝ちゃう。4時に起きて、2〜3時間サーフィンやって、朝食をモリモリと食べて、潮臭いまま会社行って、また11時くらいに寝て・・・って、すごく健康的な生活でしょう?
 次の日に波があると分かっていれば、お酒も極力飲まないし、肺活量が必要だからタバコを吸わない人が多くなっているし、体だって柔らかい方がいいからストレッチやヨーガをやったり。食事にも気をつけてベジタリアンになる人もいるし、もっとディープに入っていくとスピリチュアル的要素も入ってくる。サーフィンをしてる時は時間がストップしていて、「瞑想」の時間だと言う人もたくさんいる。自分にとっては「内観」の時間だったりもするんです。
 プロになれるほど上手くはないけど、「伝える」という使命を感じているんです。難しい言葉は知らないけど、分かりやすく書くことは得意かも知れないですね。どうしたら伝わるかな、って。それでも伝えられることはあると思うし、自分の経験からきていることなので、自信はあります。
 最近「ビーチマネー」というプロジェクトも始めました。

___ 「ビーチマネー」とは、どんなプロジェクトなんですか?

 海岸に行くと、どこの海岸でもビーチグラスが落ちているんです。
 ビーチグラスというのは、もともとはビールやワインのビンだったりしたものが川の上流で捨てられたりして、最終的に海まで流れる間に砕けて、長い時間かけて砂や石にもまれて角が丸まって宝石みたいになったものです。このキラキラした宝石のようなものが湘南のイメージと合うと思って、これを何かに使えないか、ということだったんです。
 ビーチグラスは結局ガラスですから、拾うことは海をキレイにすることになるでしょ? だから、たとえばフリーマーケットの時にお客さんが持って来てくれたらサービスをしたりディスカウントしてあげようか、ということが第一歩でした。
 この第一歩の大きな力になってくれたのは、今僕が勤めている「がんこ本舗」という会社なんです。社長がとてもユニークな方で「じゃあ、ビーチグラスが使える1店舗目になっちゃおう!」って言ってくれたんですね。
 それで、きっと他のお店でも、探せばきっと協力店が増えると思って、自分から営業に行ったんです。今では湘南中の50店舗のお店が「ウチも協力するよ」と行ってくれて、ビーチグラスを持って行ったら何かしらのサービスやディスカウントをしてくれるシステムが確立し始めてるんです。

___面白いアイデアですね!

 中には宝物にしたいほどキレイなビーチグラスもあるんです。
 これを、例えば僕がすぐそこのアイスクリーム屋さんに持って行って、一つ渡すと300円のアイスにチョコチップをトッピングしてくれるんです。今度は、アイスクリーム屋さんにビーチグラスがどんどん貯まって、オーナーが「これはキレイだから取っておこう。でも、これはよくある色だから使っちゃおう」と、50店舗のリストを見て「あ、今日はパンが食べたいな」とパン屋さんへ行って、それが今度はコロッケパンに化けちゃう。そうして、パン屋さんのオーナーは「飲みに行こう」と言ってバーへ行って、そこでも使える、と。
 今の時代、ディスカウントストアへ行って安く買って、コミュニケーションなし。だから商店街が元気無くなっちゃってきているけど、この「ビーチマネー」があることで、お店とお店を繋ぐ役割を持っていて、地域活性に繋がる。
 本当にその地域が好きだったら、商店街を盛り上げたいと思うし、理にかなったシステムが出来たと思っています。

___ビーチグラスを拾うと同時にゴミも拾おうよ、ということですね。

 そうそうそう! それが大事なこと!
 ただ「お金として使えるから拾いに行こうよ」じゃなくて、そこで「海」を感じて欲しいんです。

___そこが、エコサーファーのコンセプト「ゴミを捨てないような精神を持った人を増やす」ということに繋がる。

 結局、モラルだと思うんです。
 モラルがあれば、ゴミを捨てないのは当たり前なんだけど、モラルが無ければ無いで育んでいけばいい。じゃぁどうしよう、と言った時に、「ビーチマネー」のような仕組みがあれば、人が海へ行くキッカケになるだろうと思うんです。
 最初は単純に「お金だから拾いに行こう」で良いんです。海に行けば下を見るので、「あぁ、こんな物が落ちてるんだ」とか「思ったより砂がサラサラしてる」とか「温かい」とか、意識は無くても必ずお土産がついてくるハズなんです。そこから、何か変わるんじゃないか、と言うか、気づくんじゃないか、って。
 「ゴミ拾えよ」って上から言うんじゃなくて、それぞれの感性で感じてください、動いてください、ということです。

___ナオヤさんにとっては、何がモチベーションなのでしょう?

 シンプルに、こういうことが好きなんだと思います。
 海が好き、サーフィンが好き、というよりも「人」が好きなんです。寂しがり屋だし。(笑)
 いろいろな人と知り合いたいし、人と話すことが好きなんです。人と話すことで、自分が成長できる。本を読んだり勉強したりというよりも、僕は「人」から多くを学んでいます。目と目を見て話せば、相手のことも一歩深く知ることが出来る。そこには温度もあるし、全部リアルに伝わるから。
 『ES』の活動やフリーマガジンが繋ぎ役になって、いろいろな人と出逢える。その出逢いをそこでキチンと消化すれば、それだけ自分も人として大きくなっていくと思うんです。
 どうせ生きるならカッコ良く生きたいし、自分らしく生きたい。そういう自分が好きなんです。

___これからのビジョンは、何かイメージがありますか?

 やっぱり、地域に貢献したいですね。
 愛情いっぱいに育ててくれた両親に恩返ししたいし、海にも感謝したい。広告を出してサポートしてくれた方々にも恩返しをしたい。そうすると、大きなことを言うよりも「地域」なんです。
 地域に根を張って、地域が潤うようなことをどんどん仕掛けて行きたいと思っています。それはもちろん「エコ」であるし、ずっと継続できるシステムであって、「自然」も喜んでくれることをやりたい。
 良いバイブを届けて行きたいですね。

___伝え手として、どんなことを伝えていきたいですか?

 「LIFE」なんだと思います。「生きる」。
 「森羅万象」という言葉がとても好きで、自然の中でサーフィンをやっていると、全部が繋がっていることに気づくんです。今ココに在るものすべてが必要なんだ、ということが根底にありますね。英語で言うと、「be there」。
 自分なりの生き様を、自分なりに伝えて行きたい。

___そのことのキーワードとして「エコ」がある。

 そうですね。

___ナオヤさんにとって、「エコ」って何ですか?

 今こういう時代だから盛んに叫ばれていますが、海で真剣にサーフィンしてる人たちは、そんなことみんな知っています。ゴミがあれば悲しいから、ゴミは捨てなくなるし、それを人に伝えたくなる。
 要するに、「おまけ」ですね。

___「おまけ」?

 真剣に生きていれば、「エコ」は勝手について来るんです。
 真剣に生活をしていれば、「これ、もう一回使おう」とか「節約しよう」と思う。真剣に暮らしていれば、「これが流れて海へ行って、海で俺たち泳いで、魚を食べて、、、」って、真剣に考えて理解しようとする。
 今使っている洗剤がヤバイこと、今食べている魚がどこの産地で何なのか分からなくてヤバイこと、本当は原子力がヤバイこと。。。
 『エコサーファー』も、サーフィンを真剣にやっていれば、「エコ」はおまけでついて来る。自分が本当に好きで楽しんでやっているということが何かのキッカケで相手に伝われば、その瞬間に「オレも入れて!」ってなりますよね。
 誰でもそうだと思うんです。人生をenjoyしてる人でなければ付いて行けないし、一緒に遊ぼうとは思わないですよね。(笑)


20:00:00 | milkyshadows | |
Comments
コメントがありません
Add Comments
:

:

トラックバック
DISALLOWED (TrackBack)