Complete text -- "「風土」と「food」"

20 May

「風土」と「food」

artist file "tanebito" #02 [2/4] 
白澤 秀樹 さん & 吉原 亜希 さん(食と暮らしの研究室 / TAO Lab

『Cooking Live』


___ 熱海の自宅での『Cooking Live』。「お教室」ではなくて「Live」って言う。

(aki)
 「Live」です。(笑)
 参加してくださる方に、私が料理してるのをお茶を飲みながら見てもらう。それで、食べて帰ってもらう、みたいな。

___ どうしてそういうスタイルを?

(aki)
 こういう形って、外国に行くと結構あるんですよ。クッキングクラスって言うと、ライブ型が多い。出来たものを試食程度一口ずつ食べて帰るっていう。
 以前は、一からみんなで作るクラスをやったんですけど、なかなか自宅のキッチンなのでやっかいで、ライブ方式にしたら、料理出来る人も出来ない人も楽しめる利点があって。だから食べたいだけの人も参加できるし、夫婦で来てくださったり。
 ライブの前に、その時々に使う素材のちょっと真面目なお話もさせて頂いてます。食べ物と身体や環境とのつながりとか、食べ物の神話やいわれだったり。

___亜希さんの作ってる姿がすごく楽しそうで、それを見てるだけでもおご馳走になる。

(aki)
 料理、すごい楽しいです! 元気になるし。
 野菜って、可愛いですよね。色とか、形とか。天然のアロマテラピーだしカラーテラピーだし。野菜、スゴイな!

___自然の造形ってすごいですよね。

(aki)
 もう、あっぱれだし、逆らえないし。スゴイなぁって思う。強いし。ファーストエイドですよね。
 キッチンって、その中でほとんどの身体のバランスを整えられちゃう。もちろん、現代医学を否定するわけではないけど、今ちょっと頼り過ぎというか、そっちにウェイトが置かれ過ぎだと思う。
 もっと、昔からの知恵みたいなものを日常で使っていけば、ある程度バランスが崩れないだろうし、崩れちゃった時、少しでもゼロに持ってけるような感じのこともできる。

『Air Tropica』


___毎回のライブでのメニューが、またユニークですね。『Air Tropica』という企画で。

(aki)
 旅が好きで、行ったこともないのにそこの料理とか紹介しちゃってるんです。(笑)
 どこかに行った時に一番楽しいのは、そこの国のマーケットだったり、そこの国の伝統食だったり。 先進国に行ってもそうじゃない国に行っても、そこの国のお母さんが作ってるものとか、ストリートフードとかローカルフードとか、それが大好きで興奮状態になる。

___実際には、今まで、どんな国へ行かれたんですか?

(aki)
 東南アジアはすごく多くて、でも何年か前からハワイ島に御縁が出来て、アメリカによく足を運ぶようになりましたね。
 アメリカは、ヘルスフードとかナチュラルオーガニックという店は、スゴイですね。普通にあるというか、多いです。
 去年の暮れ、初めてヨーロッパに行ったんですよ。逆にヨーロッパって、ヘルスフード屋をあえて探さなくても、例えば普通のスーパーに行っても、オーガニックのものが一緒に置いてある。添加物いっぱいの真っ赤なジュースの隣に、オーガニックな100%のジュースが普通に置いてある。そういう普通さに、結構感激した。
 ハワイなんかも、どんな小さい街に行っても、必ずヘルスストアーがある。

___提供する側が、そういうマーケットを開拓したのかしら?

(aki)
 選ぶ側と両方じゃないかな。どうなんですかね。

(tra)
 結局、経済とも関係してくるからね。
  ヨーロッパって、今の世の中の基本を作って、全部やった後ですからね。ひとつの生き方として、ある程度完成されてる。で、完成されて、お金もあります、何もありますっていった時に、例えばヘルシーとかビューティーとか、お金で買えないものに精神的な意識が行く。だから、普通のお店にクォリティの高い物が並んでる。それでいて、それをチョイスできるのが、今のヨーロッパ。
 で、アメリカはその後ですからね。今度はオーガニックが新しいよ、って勢いがある。日本はそのまた後を追っかけている感じですよね。
 アジアになると、今やっと経済的に食べれるようになって、物質的な幸せが花開く時。
 ザクっと世界を見て周ると分かるのは、やっぱり順番があって、食べる物にも困っている人達にとっては「今日何が食べれるんだ?」っていう意識が高いけど、それが進んでくると、量じゃなくてクォリティ。それは、僕、良いことだと思うんです。

「風土」と「food」


___「 食」は文化とも密接に関わっていますね。

(tra)
 「food」と「風土」はイコールだと、僕はいつも思う。どこの国にも食文化があって、好みはあるけど、どこが素晴らしくてどこが悪いってことは一切なくて、みんな理にかなってる。
 たとえば日本だと魚主体だったり、寒い国に行くとお肉が主体になったり、暖かい国へ行けばフルーツが主体になったり。まさしくそれぞれの環境と食べ物が一つになって食文化ができてるから、その違いを見るのがてつもなく楽しい。
 また、その中に共通したものがあって、例えば新鮮とか採りたてとか季節とか。そういう意味では、食べ方というよりは、共通した所が一番いい所っていう感じかな。

(aki)
必然的に、主食が変わるとおかずが変わる、って感じですよね。

___それぞれの国の料理を食べると、胃袋でその国の文化が分かる気がします。

(aki)
 作っててもインド人になったような気分になる。餃子とか伸ばしてると、中国人になったような気分。(笑)

(tra)
 食べ物とそこに暮らしてる人と、それが密接っていうのが分かりますよね。理にかなってるし。

「素食」


___では、日本で生まれ育って暮らしていて、どういう所に目を向けて考えていったら良いでしょう?

(tra)
 「素食」がひとつ基本ですよね。「粗食」じゃなくて。
 もうひとつ、この時代、気をつけなくちゃいけないのは、やっぱり添加物。ほとんどの食べ物に添加物が入ってるから。

(aki)
あと旬、シーズン。さっきの風土の話じゃないけど、人間の身体も自然だし、野菜も自然だし、 その季節に必要だから生る。 旬のものって美味しいし、安い。
 択べる時には、択ぶ。択ぶって、楽しいし。

(tra)
 みんな毎日毎日、洋服でも音楽でも、今日どこ行こうかとか、チョイスしてる。添加物いっぱいの食べ物と、ヘルシーフードっていうものが2つあるとすれば、ヘルシーフードの方が良いよね。あとは好みもあるから、その中でアレンジして。
 だから「チョイスを楽しむ」ってことかな。

(aki)
 私、ベジタリアンなんですよ。楽しいし美味しいから。
 日本にも、「マクロバイオテック」や「正食」や、そういうレストランがあるんだけど、いつも疑問に思っていたのは、良いものなのにビジュアルが悪い。妙にそれが特別なものにされていたり。
 例えばイタリアンレストランに行って、「え、なんで醤油味が無いの!?」とは感じないでしょ?でも、ベジタリアンだって言うと「え、なんで?」って。
 「今日、点心食べに行こうよ」っていうのと同じ線上にベジフードが置かれたら、それはすごく楽しい。普通に「じゃぁ、今日はベジにしようよ」って、選択のひとつとしてあったらいいなって、いつも思う。今、だんだんそういう風になって来てるのかな。楽しくなって来た。
 動物性のものと言っても、別にお肉が悪いワケではない。島の人だったら、お魚を獲って太古の昔から食べてきてる。だけど今は、お肉を摂り過ぎだったり、工場で牛が作られていたり、そういうのが悪いんであって、過ぎてるだけ。もちろんインパクトが強いものなんだけど。
 あとはもう、野菜、美味しい! 軽いし、楽しいですよね、ゆくゆくは野菜を作りたいけど、ファーマーにはなれないな。ガーデンで野菜が出来たら良いなと思う。

___野菜から作ることも考えてるんですか?

(aki)
 今、自分で作ってるのはスプラウト。スプラウトは、キッチンで出来る一番小さな畑。新鮮だし、土が無くても出来るし、エネルギーも高い。
 スーパーで売ってるスプラウトも、一回日光に当ててあげるとすぐ元気になって、緑色がキュッと強くなる。お日様のエナジーってスゴイから、ちょっと当ててあげると美味しいかな。

___太陽のエナジーをいただく。。

(aki)
 お日様はもう万歳ですよね。いちばんダイレクトだし。

「いただきます」


___食生活を変えるというのは、ライフスタイルを変えることになります。習慣を変えるキッカケとしては、どんなところから始めたら良いでしょう?

(aki)
 私は伝え手の立場として『Cooking Live』では毎回お話するんだけど、調味料だけは偽りのないものを使ってもらいたいと思う。美味しい調味料を使って、楽しく料理すれば、誰でも美味しいものが出来る。ただ切って混ぜただけでも(笑) これは、一番のポイント。
 値段の高いものじゃなくて、ゴマカシの無いもの。例えば、味噌だったらちゃんと寝かして作ったもの、油だったら薬品を使わないで搾ったもの。もちろんそれがオーガニックだったらより良いんだけど、それ以前に、添加物の表示を見る。買い物する時に、表の文字にゴマカされないで、裏の表示を見る。
 あとは、その人それぞれのこだわりだと思う。

___とすると、やっぱりお家で作って食べるのが良いのかな?

(aki)
 お家のゴハンって、いちばん美味しいと思う。
 レストランやラーメン屋さんに行って「不味いからもう行きたくない」って話はボロボロ聞くけど、友達の家にゴハンに呼ばれて「お前のお母さんのゴハン不味いから2度と行きたくない」っていう経験はしたことない。(笑) もちろん好みはあるけど、家庭料理って想いが伝わる。
 インドの修行僧の話を聞いたことがあって、ある修行僧が山から下りて次の山に行く間に、町を通って、食事をするのに食堂に入って、そこで出された食事を食べたら、突然、苛立ちを感じたらしいの。で、修行僧だから、「この自分の感情はどこから来たんだろう?」と思って、キッチンを覗いたら喧嘩しながらその料理をしてた、っていうお話。

___その波動をもらっちゃった?

(aki)
 やっぱり、伝わる。
 自分でも実際に体験したことあるし、もうちょっと向こう側まで見れば、偽りのないものっていう話にも繋がってくる。生産者の顔が見えるもの、とか。
 そうやってグルグル考えると、作物は天から降る雨の恵みで出来ていて、その雨がキレイじゃないと、って環境問題に繋がってきて、それが自分の所に返ってきて。。
 本当に、キッチンの中でグルグルしてます。(笑)

___そういう大きな「輪」を考えると、「いただきます」っていう言葉はスゴイですよね。

(aki)
 マントラですよね!

(tra)
 「いただきます」と「ごちそうさま」っていう言葉は、「もったいない」と同じように素晴らしい言葉だと思う。世界中、有りそうで無いよね。長いお祈りはあるけど。
 「いただきます」は、「これから食べるよ」っていう合図でもあるけど、「すべてに感謝」っていうのをたった一言で表現しているし、「ごちそうさま」は、食べてお腹いっぱいになった自分の満足を表す言葉でもあるけど、食べるってことは何かの命なりエネルギーをもらうワケだから、それに対する「感謝」ですよね。
 それを日常の中で、普通に日々営まれている、っていうのが素晴らしいし、理想ですよね。

___命をいただく。。

(aki)
 私たちは食べ物で出来上がってるから。

(tra)
 本当に、実際そうだからね。
 命にありがとう、命にごちそうさま、って思うんです。
(つづく)


22:00:00 | milkyshadows | |
Comments

おもやん wrote:

熱海と函南の間で、有機農業始めた方がこられました。
名詞を貰ったんですが、肩書きに”百姓”なってました。

ユーモアのある人みたいです。
06/08/07 21:46:57

motoka wrote:

クールな方ですね!
「農」は21世紀の絶対的なキーコンセプトだと思います。
06/09/07 23:52:42
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