Complete text -- "植物性の暮らし"

03 June

植物性の暮らし

artist file "tanebito" #02 [4/4] 
白澤 秀樹 さん & 吉原 亜希 さん(食と暮らしの研究室 / TAO Lab

「人が良くなる」


___ 「食べ物」という切り口で、いろんなことが見えてきますね。

(tra)
 深いですねぇ。
 「食」という字を見ていただければ、「人が良くなる」と書くんです。それで全てが解決するとは思わないけど、少なくとも、生き生きと豊かに生きる大きなポイントの一つだと思います。
 三度三度のものですし、これが本当に美味しくてヘルシーだったら、これは楽しいですよ。これだけチョイスできる時代は、今までの人類始まって以来ですし、もちろんマイナスの部分もありますが、毎日三回楽しめますからね。

(aki)
 原材料を見るっていうのも、一つの手段。
 植物性とか無添加とか大きく書いてあっても、裏を見るとねアミノ酸って書いてあって、すごくトリッキーなので、大きな表示に惑わされないように注意しましょう!

(tra)
 同じ醤油が二つあるからね。表示が適切に書かれてるかどうかも、問題としてありますね。
 磯部先生という方のおっしゃった『良い食品の4条件』というのがあって、僕はこれが一番の核になるべき物だと思っているんです。
 一つは「 安全であること」。もう一つは「ゴマカシのないこと」。それから「味のよいこと」。最後に「品質に応じた妥当な価格」。
 この四つがね、風土を超えて、本当に食べ物の4条件だと思うんです。 特に、送り手であるレストランビジネスや食品工場は、一番考えなくちゃいけない当たり前のことなんです。
 だけど、この四つを全部加味した食べ物って、あんまり無いんですね。例えば健康食品は妙に高かったり、あるいは不味いかったり(笑)
 食べ物だから、「美味しい」というのが大前提で、残りの三つがそれにくっついてくれば、一番最高だと思う。
参照⇒ 熱海「山田屋」と「良い食品を作る会」


___手軽に選べたら良いですね。

(tra)
 これからは増えてくると思いますよ。
 食べ物の世界に限らず大きく二極化してゆく中で、これから益々ファーストフードはある種の必要性を増すでしょうけど、反面、それとバランスとる為のことも益々増えてくると思うし、又そのために自分たちも仕事をしているんです。

___TAO Labとしては、これからはどんな展開を考えてらっしゃるんですか?

(tra)
 お店をやりたいですね。この手の食べ物を気楽に食べられる場所をつくりたい。家庭料理と外食があって、「中食」という言葉がありますけど、そのジャンルになります。
 料理を教えたり、いろいろな事をやってきましたけど、 やっぱり食べ物は語るより食べた方が一番伝わりますから。
 また、それが一番リアルだし。

味噌汁から


(aki)
 ハンバーガーの後にこうやって味噌汁楽しめちゃうのも、日本人ならではなのかなぁ(笑)

(tra)
 味噌汁は元気になるよね。日本人にとっては、スープでもあるけど、イメージとしては牛乳みたいな感じですよね。

(aki)
 食卓に加える発酵食品というと、ヨーグルトとかもあるけど、ミルクは私たちの身体とはそんなに合うようなものじゃないけど、お味噌とかお漬物とか、日本で生まれて日本に暮らす身体にはよく合う。
 ヨーグルトは、特に女の人にはヘルシーなイメージがあるけど、かえって味噌汁を飲んだりした方が良いかも。腸はすごく喜ぶと思う。

(tra)
 そういう意味では、TVで本当に正しい情報が流れているとは限らないですからね。
 ヨーグルトと味噌汁を比べたら、味噌汁の方を日本の人達には薦めたいですね。日本は発酵文化ですから、日常の中でそういうものを自然に食べれるようになってるんです。漬け物もそうです。
 発酵食品は、腸に何らかの形でプラスですからね。

(aki)
 腸で血液はがつくられてるんです。現代医学だと脊髄でつくるって言うけど、腸が「肝心要」のポイントなんですよね。
 あと、腹筋。椅子の生活や電化製品の普及で、日本人は正座をしなくなったし、床を拭かなくなってきた。その筋肉の弱まりと、お腹の「丹田」、 女の人だったら生理不順とか流産とかは関係してる。
 便秘してるとボーッとするし、腸は脳と繋がってる。トイレにスッキリ行けた時って、頭もスッキリするでしょ? 腸がしっかりしてると、頭がまわる。

___本当に繋がっていることを実感します。

(aki)
 次から次へ繋がっていくから、本当に面白いよね。食べてからの繋がりと、食べる前の物の繋がりとか。

(tra)
 自分の体験から言うと、僕、便秘体質だったんですよ。昔はね、ジャンクフード最高だと思ってましたからね。(笑)
 両極端やったからよく分かるんですけど、植物性主体の食生活だと、便秘はあっという間に治りますね。全然違う!
 便秘の時にはね、自分が便秘だって分からなかったんですよ。前は、一週間ぐらい出なくてもカッコイイと思ってましたからね。(爆笑)
 「オマエ、そんなの時間の無駄!」みたいな。(笑)

___現代生活はスピードや効率が要求されるから、ついつい食事もそうなってしまうんでしょうね。

(tra)
 そうですね。それがまた一つの美徳ですものね。
 音楽だって早いものが流行ってるように、今のリズムはやっぱり確かに早いんだろうけど、 生き物としては、 本来の自分達には早すぎるところが確かにあるでしょうね。そのギャップが、いろいろな意味で身体に表れたり、精神に表れたり、歪みがストレスとして表れるんだと思います。

___ライフスタイルを考えても、例えば、家族の構成が少なくなっています。1人暮らしだったり、2人だったり、子供がいても3人、とか。そうする、食材も、ついつい無駄になることが多い。。

(tra)
 味噌汁に全部入れちゃえば良いんですよ。
 もちろん、味として加減はあるけど、固定概念なく。カレー粉を入れてしまえばカレーになるし。

(aki)
 切り方で楽しむのもコツかな。
 例えば大根でも、スリおろしたり、銀杏切りにしたり、千切りにしたり。切り方で、テクスチャーも変わるし、味も変わるし、同じ素材でも違うものになるから楽しい。
 薄く切って、タッパでお醤油にただ漬けておくだけでも、十分に美味しいおしんこが出来るし。

___ そうやって考えると、作り方のバリエーションが広がって楽しいですね。

(aki)
 アートですよね。一回一回に終わる、日常のアート。手間はかからないし、簡単に出来るし。

(tra)
 食費も、かえって落ちてますからね。
 調味料にしても、例えば、大手の500円のお醤油とオーガニックな1000円のお醤油があったとしたら、普通は500円のモノが安いと思いますよね?
 ちゃんとした調味料って、大量生産のモノより一見高いんですね。だけど、これを質で見たときに、500円の中には宣伝費やら流通費やらがインクルーズされているから、例えば原価が50円だとすると、10倍の売価です。かたや、1000円のモノは昔ながらの製法で、原価が200円かかったとしても、宣伝費が入らないから売価は5倍なんです。
 そうやって見ると、値段というのは必ずしも価値を表してるワケじゃないですから、本当の原価とかクオリティーから見ると、実は安いんですね。これはマジックですよ。
 それに、調味料ってそんなに量使わないですしね。

(aki)
 昔ながらの調味料だと、やっぱり味が良いので、使う量も減るし。

「おふくろ」と「袋」


___なるほど。食べ物には2種類ある。。

(tra)
 そういう意味では、「お袋の味」と「袋の味」。
 コンビニが代表ですが、大量生産のモノを「袋の味」とすれば、伝統的な調味料とかお母さんの作ってくれる料理は「お袋の味」。栄養的にも、愛情的にも、「お袋の味」がなくなって「袋の味」が増えたのが、今の食文化のキーワードのひとつですね。
 「袋の味」を全部否定するワケじゃないですけど、ちょっとバランスが悪いことは確かです。その結果、いろいろな弊害が出ていますから。
 もしも「袋の味」が8割だとしたら、ちょっと行き過ぎ。なんとか半々くらいになれば、あとはチョイスで、自分でもコントロールしやすくなると思います。
 同じような意味ですが、「シェフじゃなくて主婦」というキャッチフレーズがあります。
 グルメブームですから、TVでも何でもシェフの方たちがいろいろと素晴らしいゴハンを作ってます。だけど、こうした外食は毎日食べられないですから、やっぱり違うものなんですね。
 ですから、スーパーシェフが出る番組も見たいですけど、全国の普通の主婦の人達の得意料理っていうの見てみたいですよね。その家庭々々で、美味しいゴハンいっぱいあると思うんで。

___旬のものを使ってね。

(tra)
 もちろんね。旬のものとか、ローカル性を出したり。
 ヤジロベエに例えれば、右手に「生産者」がいて左手に「消費者」がいて。だけどこの二つだけではヤジロベエは成り立たないんです。真ん中に軸があって、その軸が「生活者」って言葉になるわけです。
 どういうことかと言うと、「生産者」も「消費者」もすべての人が「生活してる」ワケなんです。「消費者」はなるたけ安いものが欲しい、「生産者」はなるたけ高く売りたい。じゃぁどちらがが正しいのかと言えば、どちらも正しいワケなんです。
 どちらか一つの視点だけで見ていると、やはりなかなか折り合いが合わないんです。その時に、すべての人が「生活者」だと考えれば、同じ土俵でいろいろなことが見えてくる。それが、新しい解決の糸口になると思うんです。

「植物」


(tra)
 21世紀のテーマは「植物」ですね。植物を、いかに生活の中に取り入れていくか。それによって、ますます豊かになると思うんです。
 植物のスゴさは、結局、お日様。地球のエネルギーは、すべて太陽光線ですからね。それを、植物はダイレクトに変換出来ますからね。システムとして、とてつもなく素晴らしいですよ。太陽光線を植物が何らかの形に変換して、それをまた使ってるのが僕らですからね。
 昔に戻ろうっていう意味じゃなくて、21世紀ならではの方法があると思う。ガーデニングとかブームにもなってるし。

___みんな気づいているんでしょうね。

(aki)
 お花とか、みんな好きだし、日常で植物と仲良くするって、幸せになるし。
 だって一番よくわかるのは、お見舞いにお花持ってったり、お母さんは子供たちに「もっとお野菜食べなさい」って言うし。何でもない足元のところからね。
 動物の私たちにとっては、植物ってスゴク大事だと思う。


22:00:00 | milkyshadows | |
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