Complete text -- "「ケ」のジュエリー"

15 July

「ケ」のジュエリー

artist file "tanebito" #04 [2/4] 
藤沢 泉さん( izumi ジュエリー・シマノ

アクセサリー・スクール


___ 『アクセサリー・スクール』は当初から大盛況だったそうですが、延べにすると何人くらいの生徒さんがいらっしゃったのでしょう?

 月30〜40人ですから、年400人、10年で4000人ですね。本当にありがたいことです。
 皆さんとても良い方ばかりで、どこかで繋がりを持ちたいと思いながらもその教室の時間で別れてしまうんですが、教室展やパーティをやることで個人的な繋がりも出来てきて、とても楽しいみたいですね。

___東京や横浜からも生徒さんがいらっしゃるそうですね。

 ホームページを見ていらっしゃるのですが、検索すること自体、私は凄いことだと思うんです。たくさんの中から私を選んでくださるということにも驚きます。

てしごとDiary


___オンラインの展開は、かなり早い時期からなさっていましたね。

 その事については興味があって、【jewelry.co.jp】と【jewelry.jp】のドメインを取ったのは10年くらい前でした。
 主人が詳しくて、これからはそういう時代が来るからとアドバイスをされたので、そのドメインを取ってみました。

___オンライン展開の一方で、実店舗として人が集まる仕組みを作ってきたということでしょうか?

 実店舗も魅力的なのですが、自分の思っていることをもっと遠くへ飛ばしたい、遠くの人とも通じ合いたい、という気持ちがいつもあるんです。

___ ブログ「てしごとDiary」も頻繁に更新されていますね。

 皆さんよくご覧になっていただいているようで、2〜3日ボーッとして書かないでいるとすごく心配して直接メールをくださったりするので、なるべく書いて、元気だって知らせなきゃ、って(笑)。

___私は泉さんの美術館情報を頼りにしているんです(笑)。最近行かれた美術館巡りで、印象に残っているのは何ですか?

 お台場でやっていたグレゴリー・コルベール『ashes and snow』です。
 コンテナを積み上げて作った仮設の移動美術館なんです。私が行ったのは3月で、外の空気よりも中の方が寒いくらいに外気と一体化していたんです。写真はすべて和紙に焼き付けてあって、その色や暗さ、温度、音楽、全てがモノを表現する為に、ここまで突き詰める方がいらっしゃるということに感動しました。

___場所自体がひとつの作品だったということでしょうか?

 そうですね。その中で動物と人間の関わりや自然を描くという、私には表現ができないですね。衝撃的でした。

複合ショップ

 
___場所をつくることは重要なことですね。泉さんも、ジュエリーとカフェの複合ショップをなさっています。

 最初は個々に出店しようとしていたのですが、一つの大きい空間を皆でシェアして何かを作り出すということで、意見が一致したんです。
 ジュエリーが今まで持っていたイメージをどこかで破壊したいような気がいつもあるんです。ジュエリーを買いにいらっしゃるお客さまは、女性だったら働いていてお金を自由に使える方だったり、男性だったら年に一回クリスマスやお誕生日に買いに来るとか、そういうイメージが普通のジュエリーショップだと思うんですけど、全く逆にしたかったんです(笑)。
 そこに情報が集まっていて、毎日寄っちゃうようなお店。

___とすると、どんな方にどんな形で広めていこうと考えてらしたんですか?

 大胆なんですけど、本当に老若男女なんです(笑)。
 カフェがあることで、3歳のお子さんにお気に入りのメニューがあったり、80歳の方も入ってこられるし、お教室もこの空間でやっています。私の思惑通り(笑)。
 これは既存のジュエリーショップには絶対ないことだと思うんです。

「ケ」のジュエリー


___ワクワクしますね!

 常識的には有り得ない、と言う方もいらっしゃいます。でも、そのくらいのインパクトが小田原には必要だと思うんです。
 「ハレ」と「ケ」ということで言えば、ジュエリーは「ハレ」だという感覚があると思うんですが、対極の「ケ」をやってしまおうという感じなんです。だから、普段は買い物をしなくていいと私は思っていて、一週間に何度でもただ顔を出す、という不思議なジュエリーショップ。
 ジュエリーと言っても、3000円のモノから100万円のモノまであって、「あなたに必要なのはダイヤモンドかも知れないけれど、同時に水晶の石ころかも知れない」ということを提案したいんです。それは、日々、毎日のように顔を合わせてお話をしていくことで分かることだろうと思うんです。

___「ケ」のジュエリーというと、どのようなイメージでしょう?

 宝飾品というと、ダイヤだとかルビーだとかサファイヤだとか、とても高い物ですから、一度買ったらずっと身に着ける。そういうメモリアルなジュエリーというのは、凄く大切で、代々伝えていくような「ハレ」の部分だと思っているんです。
 それに対して、季節季節にジュエリーがあったら楽しいと思ったのが、天然石ビーズを扱っている部分なんです。お洋服より安いかも知れない。それで、時代の気分をいつも纏える。今必要なものを、すぐに、誰でも買える。
 そのビンに入っている石は、宝石と同じものなんだけど、ちょっと濁っているというだけで10円だったりする。それは3歳の子でも買える。
 それが「ケ」だと思っていて、その部分も扱っていきたい。
 今までのジュエリーショップでは分断してしまっていて、その部分はパワーストーン屋さんだったりビーズアクセサリー屋さんだったり、宝石屋さんは別だった。私はその中間に立っていて、どちらも扱って、どちらも同等に素晴らしくて価値のある物だと思って、それが、誰でも来られるということに繋がっています。

___伝統的な宝石というと、権威的な価値観があります。

 今の時代は一つの価値観では計れなくて、個人個人価値観があるし、個人の中にもいろいろな部分があります。
 一人の人の中に、「最高のダイヤモンドを手に入れたい」という気持ちと「この石ころも素敵」という部分があって、キレイなものが好きということでは全然変わりがないと思うんです。
 自分もそうですが、ダイヤモンドを扱っていると「4C(カット・カラット・クラリティ・カラー)」を説明したりするのですが、人間はこれほど素晴らしいカットが出来るということにリスペクトがあって、それに挑戦していく力についても凄く惹かれるんです。それと同時に、何もカットされずに転がっている石の中に「キレイ」を見出すということも自分の中にあって、不思議だなと思います。
 素直になりたいですね。
 高額な宝石を売る為に、権威的な部分に自分がいなければと思って石ころには関わらないというのが、今までの宝石屋さんの考え方だったと思うんです。

___皆さんの反応はいかがですか?

 業界の方は驚いて、「何がやりたいの?」とか(笑)。でも、一般の方は「楽しい」。
 複合ショップをオープンする前、3年間、路面店を休んでビルの3階で事務所だけにしていた時期があるんです。必要最低限の仕事だけをして。
 それが良かったと思うのは、冷静に業界を見ていたんじゃないかな。何か嫌だと思っていた部分がハッキリした。不自然なことをしていた気がするんです。
 その時に、今度やる店は普通の宝石屋さんじゃないだろうな、という気がしていました(笑)。
(つづく)


17:30:00 | milkyshadows | |
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