Archive for August 2007

26 August

真剣に生きていれば、「エコ」は勝手について来るんです。

artist file "tanebito" #05 [4/4] 
堀 直也さん(サーファー / Eco Surfer代表)

僕は「人」から多くを学んでいます。
そこには温度もあるし、全部リアルに伝わるから。


___ 『ES』というフリーマガジンを発行して、啓蒙活動をなさっています。とてもセンスの良い編集ですね。

 ありがとうございます。
 年に3回の発行で、7月のvol.9でちょうど3年になります。

___こうした活動をオーガナイズするのは大変なことですが、どうやってネットワークを築いてきたのですか?

 最初は知り合いを集めたんです。26歳の時でしたから、人脈なんて知れてますから。
 時間の無い中、飲み会のような形で集まってもらって「地域の新聞のような物を作ろうと思っている」と言って、15人くらいでミーティングを開いたんです。グラフィックのデザイナーがその中にいたり、自分は何が出来るだろうと考える人がいたりして、人に頼むことと自分でやらなくちゃいけないことを見極めて、vol.1は16ページでCDサイズのものを3000部作りました。

___資金はどうなさったんですか?

 知合いに頼んで広告主さんを探して、「紙面に広告を載せるから」と広告代を集めたんです。「これでウチの売上げが伸びるとは思ってないけど、ナオヤにだったら払ってやる。」という感じでした。
 それはそうだと思います。3000部では宣伝効果も知れてるし、実績もないし。
 でも、そこに投資してくれる方が徐々に増えて、今では10,000部の発行で、先方から問合せを頂くようになってきました。

___そういう方々は、ナオヤさんのどんな所を買ってくれたんでしょう?

 ただ単に、テンションが高くて妙に真直ぐだったからじゃないでしょうか。(笑)
 後は、こういった活動をサポートすることによって、付加価値を感じる方もいるかも知れないですね。湘南に住んで海にお世話になっている、その海に恩返しをしたいと思っている人が、この街には多いんです。

___ナオヤさんにとっては、何がモチベーションなのでしょう?

 シンプルに、こういうことが好きなんだと思います。
 海が好き、サーフィンが好き、というよりも「人」が好きなんです。寂しがり屋だし。(笑)
 いろいろな人と知り合いたいし、人と話すことが好きなんです。人と話すことで、自分が成長できる。本を読んだり勉強したりというよりも、僕は「人」から多くを学んでいます。目と目を見て話せば、相手のことも一歩深く知ることが出来る。そこには温度もあるし、全部リアルに伝わるから。
 『ES』の活動やフリーマガジンが繋ぎ役になって、いろいろな人と出逢える。その出逢いをそこでキチンと消化すれば、それだけ自分も人として大きくなっていくと思うんです。
 どうせ生きるならカッコ良く生きたいし、自分らしく生きたい。そういう自分が好きなんです。

真剣に生きていれば、「エコ」は勝手について来るんです。


___これからのビジョンは、何かイメージがありますか?

 やっぱり、地域に貢献したいですね。
 愛情いっぱいに育ててくれた両親に恩返ししたいし、海にも感謝したい。広告を出してサポートしてくれた方々にも恩返しをしたい。そうすると、大きなことを言うよりも「地域」なんです。
 地域に根を張って、地域が潤うようなことをどんどん仕掛けて行きたいと思っています。それはもちろん「エコ」であるし、ずっと継続できるシステムであって、「自然」も喜んでくれることをやりたい。
 良いバイブを届けて行きたいですね。

___伝え手として、どんなことを伝えていきたいですか?

 「LIFE」なんだと思います。「生きる」。
 「森羅万象」という言葉がとても好きで、自然の中でサーフィンをやっていると、全部が繋がっていることに気づくんです。今ココに在るものすべてが必要なんだ、ということが根底にありますね。英語で言うと、「be there」。
 自分なりの生き様を、自分なりに伝えて行きたい。

___そのことのキーワードとして「エコ」がある。

 そうですね。

___ナオヤさんにとって、「エコ」って何ですか?

 今こういう時代だから盛んに叫ばれていますが、海で真剣にサーフィンしてる人たちは、そんなことみんな知っています。ゴミがあれば悲しいから、ゴミは捨てなくなるし、それを人に伝えたくなる。
 要するに、「おまけ」ですね。

___「おまけ」?

 真剣に生きていれば、「エコ」は勝手について来るんです。
 真剣に生活をしていれば、「これ、もう一回使おう」とか「節約しよう」と思う。真剣に暮らしていれば、「これが流れて海へ行って、海で俺たち泳いで、魚を食べて、、、」って、真剣に考えて理解しようとする。
 今使っている洗剤がヤバイこと、今食べている魚がどこの産地で何なのか分からなくてヤバイこと、本当は原子力がヤバイこと。。。
 『エコサーファー』も、サーフィンを真剣にやっていれば、「エコ」はおまけでついて来る。自分が本当に好きで楽しんでやっているということが何かのキッカケで相手に伝われば、その瞬間に「オレも入れて!」ってなりますよね。
 誰でもそうだと思うんです。人生をenjoyしてる人でなければ付いて行けないし、一緒に遊ぼうとは思わないですよね。(笑)


18:00:00 | milkyshadows | |

19 August

海の守り方

artist file "tanebito" #05 [3/4] 
堀 直也さん(サーファー / Eco Surfer代表)

サーフィンは、ライフスタイルなんです

___サーフィン、本当にお好きなんですね。

 サーフィンは、ライフスタイルなんですよ。
 海は母などと言われるけど、精神的にもリセットされるし、とにかく気持ちが良いんです。とても健康的な生活を送ることができます。
 朝と夕方に波がキレイにまとまることが多いんです。風が吹かないことが多いんですね。岸の遥か沖から吹いてくる風によって波はつくられ、今度は岸から海に向かって吹く風(オフショア)が吹き始めると波の表面がキレイに整えられ、サーファーにとって最高の波になるんです。でも、あまりにオフショアが強く吹き過ぎると、今度は波が消えちゃうんですね。だから、そのわずかな瞬間っていうのがすごくおもしろい。
 波があれば、朝4時には起きちゃうし、夜は11時には寝ちゃう。4時に起きて、2〜3時間サーフィンやって、朝食をモリモリと食べて、潮臭いまま会社行って、また11時くらいに寝て・・・って、すごく健康的な生活でしょう?
 次の日に波があると分かっていれば、お酒も極力飲まないし、肺活量が必要だからタバコを吸わない人が多くなっているし、体だって柔らかい方がいいからストレッチやヨーガをやったり。食事にも気をつけてベジタリアンになる人もいるし、もっとディープに入っていくとスピリチュアル的要素も入ってくる。
 サーフィンをしてる時は時間がストップしていて、「瞑想」の時間だと言う人もたくさんいる。自分にとっては「内観」の時間だったりもするんです。

___今おっしゃったようなことを強く体験したのはどんな出来事でしたか?

 例えば、テトラポット。 あれだけ重い石を海岸線に撒いても、大きい波がドカーンと来ると、一瞬テトラポットが宙に浮くんです。 そうするとそこに流れが出来て、人がいたら吸い込まれてしまうぐらいの流れをつくる。だから、テトラポット周辺で起こった事故は、テトラポットの下に死体が入っていたりすることがよくあるんです。
 そういうことを、サーファーは身体で知っているんです。「自然」を人間の力でねじ伏せることは出来ない。俺たち人間はすごくちっぽけだっていうことを分かっている。
 だからこそ、「自然」に対しては謙虚に、共存したいんだったら無理なこともしないし、危険なこともしない。今日は無理だと思ったらやらないし、それは自己責任ですから。

サンフランシスコで『エコサーファー』を立ち上げました


___海外でステイされたことがあるそうですね。

 5年間の学生ビザを取って、アメリカに行きました。最初はLA、それからハワイ。
 英語の学校に入って、最初の4ヶ月くらいは一生懸命勉強しました。早く学校に行って予習して、その後に図書館へ行って、1日15時間くらい英語の勉強をしたんだけど、周りは日本人ばかりで勉強はつまらないし、英語も全く上達しなかった。
 それだったら行きたい所へどんどん行ってしまおうと思って、たまたまインターネットでWWOOF(ウーフ) という非営利の組織を見つけたんです。それは、農園や農場でマンパワーを募集している人たちと、体力はあるけどお金がなくて、でもいろいろなことを手伝いたい、泊まる所とゴハンは提供してもらいたい、という人たちを繋げるシステムで、そのグループに約20$払うと、そういうマンパワーを欲しがっている農園のリストが送られてくるんですよ。
 それで、カリフォルニア州のリストをもらって見てみると、ソーラーパネルで、お水は雨水を貯めて、環境にやさしい有機野菜をつくっている、という農園があったんです。そこは、サンフランシスコと言っても本当に田舎で、それこそ隣の家まで車で10分というような場所。もう日本人なんか絶対にいない。
 そこへ行ってその人たちと生活をしながら、朝早く起きて水やりをしたり、土を混ぜて苗を植えたり、トラクターで開墾したり、ソーラーシステムの電池を交換したり、あっという間に1ヶ月が過ぎた。そこですごく英語が上達したんです。そこにはもうアメリカ人しかいないので。
 実は、そのサンフランシスコで『エコサーファー』というグループを立ち上げました。僕のヴィジョンを農家の人たちも知っていたし、協力してくれていたので、心良く「旅立っていけ」ということで、今度はハワイ州のリストをゲットしたんです。ホストがサーファー、海まで歩いて行ける、という条件で探しました。それでハワイ島へ行って、そこから毎日サーフィンです。

ハワイ島では、子どもたちが普通に海でサーフィンするんです


___ハワイはサーフィンのメッカですものね。

 ハワイ島でスゴイなぁと思ったことは、子どもたちが普通に海でサーフィンするんですよ。とにかく学校が終わったら、親の車で海まで来るんです。 海まで遠い子もいるから、親が車で連れて来て下ろして行くんですよ。「何時に迎えに来るから」って言って。
 その時間は子ども達が海で遊ぶ時間だから、大人たちはサーフィンをやらないようにしている。 ほとんどの子がサーフィンかボディボードをやる。
 でも、そんな時でもアメリカのメインランドから来たサーファーが彼らの波を取ったりすることがある。それをローカルのサーファーが見つけると、「上がれ!」と。「別にケンカするワケじゃなくて、とにかく上がれ」と。
 「なんで上がらせたかというと、ここの海はオマエだけのものじゃなくて、子ども達のものでもあり、皆のものなんだ。この子ども達はここの海が好きで、この時間帯だけは特に子ども達に海を満喫させてあげたいから、申し訳ないけど上がって、来るならまた明日の朝とか、そういう時間帯に来てくれ」と言う。そういう守り方をしているローカルなんです。
 それが凄くカッコ良くて!僕はこういうことが知りたかったんだな、と思いました。
 まさにビーチの守り方のお手本になりました。もちろんゴミも拾うけど、本当のシーンを見れた気がした。だからみんなスゴク笑顔だし、空間のバイブが良いんだなぁ、というのを感じました。

___その方たちはオーガナイズされて行動しているの?

 そうではないです。
 でもそこにはボスがいて、「俺が最終的には出て行く」という人がやっぱりいる。見た目はもう、体中にハワイの伝統的なタトゥーが入っていて、細長いサングラスをかけて、上半身裸で、髪の毛も長くてガタイが良くて、近づき難いオーラを出してるんだけど、でもサングラスを外すと細い目でニコニコ笑って、子どもたちに「サーフィンしろ、サーフィンしろ」って。
 そういう場所で、僕も半年サーフィンやらせてもらって、一緒に大会に出たり、一緒にゴミ拾いしたり、誰かの誕生日には必ず呼んでもらって、ゴハンを一緒に食べたりしたんです。そういういろいろな経験が今の『エコサーファー』には生きているんです。
(つづく)


18:00:00 | milkyshadows | |

12 August

「ビーチマネー」

artist file "tanebito" #05 [2/4] 
堀 直也さん(サーファー / Eco Surfer代表)

「ビーチマネー」

___ 「ビーチマネー」というのは、どんなプロジェクトなんですか?

 海岸に行くと、どこの海岸でもビーチグラスが落ちているんです。
 ビーチグラスというのは、もともとはビールやワインのビンだったりしたものが川の上流で捨てられたりして、最終的に海まで流れる間に砕けて、長い時間かけて砂や石にもまれて角が丸まって宝石みたいになったものです。このキラキラした宝石のようなものが湘南のイメージと合うと思って、これを何かに使えないか、ということだったんです。
 ビーチグラスは結局ガラスですから、拾うことは海をキレイにすることになるでしょ? だから、たとえばフリーマーケットの時にお客さんが持って来てくれたらサービスをしたりディスカウントしてあげようか、ということが第一歩でした。
 この第一歩の大きな力になってくれたのは、今僕が勤めている「がんこ本舗」という会社なんです。社長がとてもユニークな方で「じゃあ、ビーチグラスが使える1店舗目になっちゃおう!」って言ってくれたんですね。
 それで、きっと他のお店でも、探せばきっと協力店が増えると思って、自分から営業に行ったんです。今では湘南中の50店舗のお店が「ウチも協力するよ」と行ってくれて、ビーチグラスを持って行ったら何かしらのサービスやディスカウントをしてくれるシステムが確立し始めてるんです。

___面白いアイデアですね!

 中には宝物にしたいほどキレイなビーチグラスもあるんです。
 これを、例えば僕がすぐそこのアイスクリーム屋さんに持って行って、一つ渡すと300円のアイスにチョコチップをトッピングしてくれるんです。今度は、アイスクリーム屋さんにビーチグラスがどんどん貯まって、オーナーが「これはキレイだから取っておこう。でも、これはよくある色だから使っちゃおう」と、50店舗のリストを見て「あ、今日はパンが食べたいな」とパン屋さんへ行って、それが今度はコロッケパンに化けちゃう。そうして、パン屋さんのオーナーは「飲みに行こう」と言ってバーへ行って、そこでも使える、と。
 今の時代、ディスカウントストアへ行って安く買って、コミュニケーションなし。だから商店街が元気無くなっちゃってきているけど、この「ビーチマネー」があることで、お店とお店を繋ぐ役割を持っていて、地域活性に繋がる。
 本当にその地域が好きだったら、商店街を盛り上げたいと思うし、理にかなったシステムが出来たと思っています。

「海」を感じて欲しい


___ビーチグラスを拾うと同時にゴミも拾おうよ、ということですね。

 そうそうそう! それが大事なこと!
 ただ「お金として使えるから拾いに行こうよ」じゃなくて、そこで「海」を感じて欲しいんです。

___そこが、エコサーファーのコンセプト「ゴミを捨てないような精神を持った人を増やす」ということに繋がる。

 結局、モラルだと思うんです。
 モラルがあれば、ゴミを捨てないのは当たり前なんだけど、モラルが無ければ無いで育んでいけばいい。じゃぁどうしよう、と言った時に、「ビーチマネー」のような仕組みがあれば、人が海へ行くキッカケになるだろうと思うんです。
 最初は単純に「お金だから拾いに行こう」で良いんです。海に行けば下を見るので、「あぁ、こんな物が落ちてるんだ」とか「思ったより砂がサラサラしてる」とか「温かい」とか、意識は無くても必ずお土産がついてくるハズなんです。そこから、何か変わるんじゃないか、と言うか、気づくんじゃないか、って。
 「ゴミ拾えよ」って上から言うんじゃなくて、それぞれの感性で感じてください、動いてください、ということです。

そこに波が立つ瞬間


___小田原の海だと、酒匂川の河口で流木を拾ったりする人がいます。

 あぁ、あの辺もサーフィン盛んですよねぇ。

___サーファーの方たちが言う「ローカル」って、「縄張り」というような意味なんですか?

 例えば、スノーボードだったら雪さえあればいつでも出来る。他のスポーツでも、テニスや野球はいつでも出来る。でも、サーフィンは海がなくちゃ出来ないし、海があっても波がなければ出来ない。その波だって、いつ出てくるか分からない。
 それで、自分たちの「地元の海」というのがそれぞれあって、そこに波が立つ瞬間にいろいろな人がいっぱい来てしまうと、自分は乗れない。
 地域の人たちをリスペクトする人だったら良いのですが、いきなり入って波を取ってしまったら、やっぱり地元の人は良い顔をしないです。地域をリスペクトすることは、他のスポーツでも何でも同じだと思います。
 本当にみんな、自分の身近にある地元の海をキチガイのように愛してるんです。(笑)本当に愛していれば海を守っているだろうし、ゴミだって決められた日にやるんじゃなくて、行って落ちてれば拾うだろうし、そこでサーファーが上手に伝えられたら最高ですね。
 どこの海も、それぞれの色があっていいと思います。それでいてリスペクトがあれば、ケンカすることなく上手く循環できると思うんです。

___堀さんのビーチクリーン・キャンペーンは、最初から順調だったんですか?

 いや、最初はついつい順番を間違えてしまって、順調ではなかったです。
 Eco Surfer主催でゴミ拾いを始めたんですが、ローカルの人が良い顔をしていないことに気づいたんです。もともと住んでいた人たちが昔から海を守ってきたのに、後からノコノコ来て我が物顔でやっているように感じたのでしょう。正直、ゴミを拾って怒られるなんて、やめてやろうと思ったりもしました。でも諦めずに、今はその人たちと一緒にやらさせてもらっています。
 続けることは難しいけど、だんだんと周りからも認めてもらえるようになって、それが大きな力になっています。
(つづく)


18:00:00 | milkyshadows | |

05 August

『Eco Surfer (エコサーファー)』

artist file "tanebito" #05 [1/4] 
堀 直也さん(サーファー / Eco Surfer

オマエはとにかく海が好きだから


___サーフィンとの出逢いは?

 僕は、横須賀生まれ、横須賀育ちなんです。
 高校3年の時に担任の先生から「オマエはとにかく海が好きだから、海の大学もあるんだぞ」って言われて、ギリギリ評点も足りるからって、静岡県清水の東海大学海洋学部へ推薦状を書いてくれたんです。
 それで、大学1年の時に友達に誘われて波乗りに行ったのが初めてです。

___初サーフィンは静岡の海だったんですね。

 そうなんです。最初はショートボードでした。友達の友達から借りて。
 親父も海が好きで、小さい頃からボディボードみたいなことを伊豆の海でやっていたので、波をつかまえることには難しさを感じなくて、始めたその日に立てたんです。それで、周りがビックリして。そのビックリされたことが自分でも嬉しくて「コレは面白い!」と(笑)
 もうそれから13年間、波乗り中心で僕の生活は動いてます。サーファーってそうなんですよね。今の仕事も、社長には「波乗りが出来るから」って言ってあります。

海の守り方とかサーフィンのスタイルとか、
ビーチカルチャーを学ぶ旅がしたいと思ったんです。


___「Eco Surfer(エコサーファー)」というネーミングはユニークですね。

 自分の屋号なので、いろいろ考えました。
 「環境」と「サーフィン」ということをネーミングから浮かびやすいものにしたくて、辞書で調べて「Environmental Surfer」とか「Green Surfer」とか考えたんですが、長過ぎたりゴロが悪かったりで。
 「Eco Surfer(エコサーファー)」というのは単純にリズムが良くて覚えやすいし、直球ですね。

___「エコサーファー」と名乗るようになってからは何年くらいなんですか?

 5年弱です。
 25歳くらいまでは、普通に土日だけサーフィンして、普通にサラリーマンやって、という毎日でした。ある時、人生このままでいいのかなって真剣に考えて、考え抜いて、その時に「エコサーファー」の軸になるようなものがモヤモヤと浮かび上がったんです。
 その時、横須賀から藤沢の会社に通っていたんですけど、辻堂で一人暮らしすることにしたんです。それで、そのモヤモヤの一つのカタチとして「毎朝会社に行く前に必ずビーチクリーンをしよう!」と決めて、その日から、たった15分だけですが、365日のうち320〜330日はビーチクリーンをしました。毎朝、同じ時間に。
 でもやっているうちに、だんだん、正直イヤになってきたんです。やってもやってもゴミは減らないし、手伝ってくれる人もいないし。「あれ、、思ったのと違うな、、」って。
 それで、「この海の向こうにはアメリカがあるんだな」とか単純に思うようになってきたんです。ハワイとかカリフォルニアとか、サーフィンの盛んな国へ行って、彼らの海の守り方とかサーフィンのスタイルとか、エコロジーも含めてビーチカルチャーを学ぶ一人旅がしたいと思ったんです。
 それから一年間、ビーチクリーンをしながら計画をして、お金を貯めて、英語の勉強もちょこちょこして、アメリカに渡りました。
 「Eco Surfer(エコサーファー)」という言葉は、向こうへ行って半年くらいの時に出て来ました。ホームページを立ち上げて、アメリカにいる一人の日本男児のサーファーだ、って。それからどんどん太くなって、今に至ります。

サーフィンを通して伝えて行くのが僕らしいと思うし、
経験からきていることなので、自信はあります。


___webは結構ボリュームがありますね!

 いやぁ、歴史があるし、書くことも好きなんです。帰国前から、帰国後のことも、事細かに書いているので。

___小説のようなストーリーで、読み入ってしまいました。

 「伝える」という使命を感じているんです。難しい言葉は知らないけど、分かりやすく書くことは得意かも知れないですね。どうしたら伝わるかな、って。
 「伝える」と言っても、いろいろなスタイルがあるし、いろいろな人がいる。僕は、一番好きなサーフィンを通して伝えて行くのが僕らしいと思っていて、プロになれるほど上手くはないけど、それでも伝えられることはあると思うし、自分の経験からきていることなので、自信はあります。

___分かりやすく、と言えば、小学生を対象に講座を持ってらっしゃるそうですね?

 これも繋がりで、小学校のPTA会長をやってらっしゃる主婦の方からメールを頂いたんです。
 小学校6年生の授業で「総合」という科目があって、環境問題を勉強する時間がある。でも、難しいことは知っているけど机上の空論で頭デッカチになっている子供たちがいっぱいいるから、そういう現状に対して、茅ヶ崎のシンボルである「海」で実際に活動している人を探しています、と。
 それで、「地域講師というカタチで、子どもたちと一緒にゴミ拾いをしたり、いろいろな話をしてくれませんか?」と言われたんです。
 すごく熱心な方で、ビーチクリーンをやって「これはどこから運ばれて来たんだろうね」とか「これで何か作ってみよう!」とか、皆で考える場を作るので是非ゲストで来て欲しいと言われて、「出来ることは協力します」とやり始めました。
 他の小学校からもお誘いがあって、今は逗子小学校に年に5回くらい行ってます。

___授業はどんな感じでなさるんですか?

 最初は考えましたよ。普通の授業はやりたくないので(笑)。
 僕は、波があってもなくてもウェットスウーツを着て波待ちをして子どもたちを待つんです。演出から入るんです。(笑)
 やっぱりインパクトを与えたいし、子どもたちにとってヒーローであるべきだと考えたんです。だから、僕はサーファーだからサーファーの格好をして、海で待ち合わせをさせるんです。波のない日が多いんですけど、僕は沖で波待ちをして待っているんです。そこを芝居で「直也さ〜ん」とか「エコサーファ〜」とか皆が呼ぶんです。(笑)
 波がない時は困るんですけど、そこで僕がふり返ってスーッと登場するんです。子どもたちにはインパクトありますよね。

___何年生くらいの子どもさんたちなんですか?

 最初は6年生でした。今の子どもたちは、3年生の時から4年間つき合ってます。
 年によって内容も変えなくちゃいけないということも学んだし、今は少しは柔軟に対応できるかなぁ。。

一人でゴミ拾いをしていた時、
寂しい思いをしたんです。


___どんな内容をなさるんですか?

 もちろんビーチクリーンをするんだけれど、まずゴミ拾いをさせる前に、海岸を散歩している大人たちにわざと声をかけさせるんです。子どもが言えばイヤとは言わないし、茅ヶ崎を好きだったら喜んでやってくれるんです。そうして皆を巻き込んで、「一人じゃなくて、皆と楽しくやろうね」ということを必ずやります。
 僕が一人でゴミ拾いをしていた時、寂しい思いをしたんです。みんな僕を見て「あぁゴミ拾いをしてる」と思うんだけど、だいたいの人はそれで終わっちゃう。でも彼らの中には「あぁ良いことやってるなぁ、声かけて手伝いたいな」って思う人がきっといるはずなんですが、その第一歩が出せない人が多い。
 だから子どもたちには、「一人でゴミ拾いをするとこれしか拾えないから、皆で拾わない?」って言うんです。皆で拾えば海がどんどんキレイになるじゃん、って。
 それで、その後、そのゴミを広げるんです。広げると、その中には持って帰りたいような宝物が必ずあるんです。例えば、ビーチグラスや、桜貝、宝貝。それから、レトロなミニカーだったり。結構いろいろなものが落ちてるんです。それを見せ合うことが、子どもたちには楽しいみたいですね。
 だから、ゴミがどこから来たということよりも、まずは楽しんでもらう。スゴイね、って褒めてあげる。皆でやって、それを見せっこする、という流れです。
(つづく)


 

18:00:00 | milkyshadows | |