Archive for June 2008

29 June

「海へ」

artist file "tanebito" #19 [2/3] 
木村 正宏 さん(がんこ本舗代表)

私が取材にお邪魔した時、木村さんは、目の前でひとつ実験を見せてくれました。
洗剤をまったく使わないで 油汚れを落とす実験です。

用意したのは、真っ白なピカピカのお皿と、マジックのペン。
木村さんは、その真っ白なお皿に、グリグリとマジックで落書きを始めたんです。

そして、
「これでこすってみて」と言って手渡されたのは、消しゴムでした。
それこそ、どこにでもあるフツーの消しゴムでしたが、
それでゴシゴシとやると、マジックの落書きはキレイに落ちるんです!

さらに、
「そのままだと力も必要だし、消しゴムのカスも出るから」と、
今度は、その消しゴムをコップの水にポチャンと濡らしたんです。

さて、濡らしたゴムで、油汚れをこするとどうなるか、、

是非、みなさんも一度お試しになってみて下さい。
本当にビックリするくらい、キレイに スッキリ、油汚れが落ちちゃうんです!



___あ、本当だ! キレイに落ちるんですね!

 はい。
 ここに存在するのは、ゴムと水。ゴムは相手を傷つけるほどの硬さはありませんが、汚れを吸い付ける力がある。摩擦の力で汚れは水の中に漂うんです。漂った汚れがこちらに吸着する。だから、如何に汚れとお皿の接着よりも強い吸着力を示させるか、なんです。そこで、ゴムです。ゴムだと繰り返し使えるし。

___そんな原始的なことで汚れは落ちるんですね。化学製品はいらないですね。

 いらないらない。
 みんなTVとかで「洗剤を使わないと汚れが落ちない」って頭の中に思い込まされているので、その思い込みを取ってあげる。

___これはビックリしますね!

 30年近く前に、この技術は出来上がっていたんです。

___ 「海へ」という洗剤の理論も、かなり斬新ですね。

 「汚れの正体は何か?」って考えたら、水に溶ける汚れ、油を含んだ汚れ、それからあと一つちょっと違って、染めるっていう汚れ、この3つに別れるんです。で、一番困っているのは油汚れなんです。この油汚れの最大のものが、タンカー事故で出たオイルじゃないですか。この処理を自然界の環境中で出来るようにしていけば、全ての問題は解決できる訳です。この一番大きな問題に取り組んで、考えて行ったら、洗濯用や台所用の洗剤が出来たということです。
 「暮らし」というものがあって、その「暮らし」の積み重ねで地球規模の環境汚染になるのであれば、最初から規模の大きい汚染を対象にして、その解決を考えれば「暮らし」に応用が出来る。そういう発想で作っていったんです。

___タンカー事故の時は、その処理の研究に携わったんですか?

 いや。事故がある度に自衛隊や大学のチームが出動する訳で、いろいろな研究機関を見つけるのが自分の仕事なんです。どうやって海洋タンカーの事故を処理してるのかなぁ、って。
 自分たちから見たら、オイルフェンスを張ったり、汲み取ったり、いろいろやっているでしょ? あれを大きなお皿だと思ってさ。(笑)あれは家庭では使えないような薬品も応急処置で使ってたりするんだけど、危なくないものを使って油を処理できれば良いなって、いろいろヒントを頂きながら、後は、勉強をたっぷりしたので「お願いしまぁす!」って神様に投げて、返って来た。(笑)

「地球に優しい」は、「人間に優しい」でしかない。
だから、二酸化炭素が増えちゃいけない理由は無いんだよ。(笑)


 洗剤や石鹸って、原料は何? 油だよね。お皿に残ってるのは何? 油だよね。これ、お皿から洗剤を作るんです。お皿に原料がある訳だから、反応させて洗剤に変えちゃうの。襟に油が付いてる訳。それを洗剤にすれば良いでしょ。
 洗剤を作ったんじゃなくて、洗剤にするものを作ったんです。普通はあり得ないんだけど、あり得ない普通のものを工夫して作った。普通の発想では、完全なる洗剤というものを作りあげて、お皿や襟から汚れというものを引きはがして溶かそうとする。でも、洗剤の原料の油がここにあるんだったら、それを利用して洗剤を作っちゃえば、余分なもの要らないじゃん。それは普通、強力な酸性剤や強力なアルカリ剤がなかったら難しいんだけど。

___これは一回使うと、みんなビックリするんですよね!

 ビックリするねぇ。考えられない。中に入っている洗浄成分の100倍の量の油を処理するんですよ。異常ですよ。
 普通の洗剤って、油を処理できないんですよ。油って、洗剤の粒子より細かいの。細かいものだから、取り囲んでも間から逃げて行っちゃうの。で、間から逃げないようにするには、ギッシリ詰め込まなきゃいけないって思うんですよ、みんな。ギッシリ詰め込んでも、小田原城の石垣にも隙間があるように、隙間から逃げていくんですよ。(笑)だから、量を増やしても逃げるものは逃げるんです。
 洗剤自身を油とほぼ同じくらいの粒子の大きさにすると、軽くて俊敏な動きをする子が出来るんです。そうるすと、その子が“油ちゃん”の周りを、まぁ俺の発想だからね、風を切りながらビュンビュン回る訳。(笑)「かごめかごめの法則」とか呼ばれてるんだけど、隙間だらけなのに出れないのよ。(笑)
 “油ちゃん”は、ものすごく地縁血族を大事にする子たちで、油を含んだものとすぐくっつく。自分と同じものだったら余計、もの凄い吸引力で、ラブラブになっちゃう。(笑)だから、ラブラブにならないように高速で周りをピューンってやってると、“油ちゃん”同士は見えてるんだけど、近づこうにも近づけない。
 そのうち、ごく小さい油は、微生物が吸収できる大きさになっちゃう。何だってそうだけど、自分の口より大きなアンパンは食べられないでしょ? どんどん小さくして行って、ミキサーにかけてもっと小さくして行ったら、口の中に入ったか入らないか分からないくらいになって、息してるだけで食べちゃったってことになる訳。

___なるほど! 後は微生物に分解してもらうということですね。

 まさしく!
 それは、特別な微生物を養っている訳じゃなくて、土の中や海や川に普通にいる微生物に食べられ易いようにしているんです。そうすると、まるで呼吸をしているように、勝手に微生物の体内に吸収される。後は、水と二酸化炭素に分解されて行く。

___微生物のためにゴハンを作ってあげるようなものですね。

 そうなの。(笑)でも、本来、微生物はそういうもの欲しくないの。無くて良いんだもん。もともと無いんだから。
 地中で、地下資源がなぜ眠っているのか?

___あぁ、そうか。要らないから残っている。。

 油は、金や銀のように地球にもともと存在していたものじゃないんです。生体内の化合物なんですよ。生物の体の中でしか作られないんです。

___生体というのは、植物のことでしょうか?

 そうです。
 もちろん今は人間の体の中でも作りますけど、なぜ植物が体の中で油をつくったのか? 名古屋女子大の奥山治美先生っていう食用油の研究者の方に教えてもらったんだけど、植物が氷河期を乗り越えるために、体内に脂肪分を貯めるメカニズムを作っていったんです。そして、その集約が「種」なんです。どんな乾燥や冷凍があっても、一定の適温に達すると発芽するシステムを作りあげて、それを守っているのが「脂肪」なの。

___凄いことですね!

 その凄いことを、「汚れ」とか言っちゃダメでしょ。(笑)

___それが蓄積されて、化石燃料になった。

 そうそうそう。
 別の見方で、物理の法則とかの説明も出来るんだけど、業者の人に変に使われると困るから喋れない。廃油回収業者が燃料に替えてくれるなら良いけど、処理するのにお金が掛かるからと言って、ウチの“洗剤の素ちゃん”を入れて流しちゃったら環境汚染にされちゃうじゃん。
 いくら良いものでもたくさんの量を流せば、栄養がいっぱい流れ込む訳だから、当然微生物たちは喜んでゴハンを食べます。彼らの体のキャパは決まっているから、繁殖という形で増えていく訳です。増えていく所に、またその微生物を餌にする者たちが集まって来て、だんだん生態系のバランスが崩れていく。
 だから、もともと微生物しかいなかった時代には、油は無かったんです。無いものは、処分できません。後から来たものだから、“微生物ちゃん”たちには誰もその才能が無かったの。だからずっと残ってる。

___じゃぁ、今人間が使ってあげて、地球は良かったのかも知れませんね。(笑)

 うん、もともと無くても良かったものだから。
 まぁ、それを言い始めると、もともと「酸素」なんてほとんど無かったからね。空が青く見えるのは酸素のせいで、火星のように二酸化炭素に覆われた大気であれば、赤い星なんだよね。地球も赤い星だったの。それで、二酸化炭素を消費して酸素を出す微生物が大繁殖した。餌がいっぱいあるから。で、酸素を出し過ぎて、自分たちの行為によって、ほとんどの種が滅んで行った。そして今、酸素の時代を我々が過ごしているというだけの話です。
 だから、二酸化炭素が増えちゃいけない理由は無いんだよ。(笑)「地球に優しい」は、「人間に優しい」でしかない。

___どこかで巧妙にすり替えていますね。

 すり替えてる。
 ここの存在する自分というものがどこから来たのか、ちゃんと考える。それを検証して行けばいろんなことが見えて来て、そしてこれから自分たちが何をしたら良いのか、どんなことだったら自分たちが居なかったのと同じように消滅できるのか。そういうことだよね。難しく考えなくても、「美しいものを作ろう」「美しい関係を作ろう」、そういうキーワードで「環境」なんて括れちゃうのかもよ。
 誰かが得して、誰かが損する。そういうものだってみんなが思い込むほど、俺は抵抗したいよね。ゲリラのように。(笑)

___今日は言葉以上のものをいただいています。
 
 あ、そう?
 騙されちゃいけないよ。(笑)

___でも、幸せなものだったら騙されてもいいですよね。(笑)

 そう!良い言葉だなぁ。だって、一生騙されていたらそれが真実になるからね。
 同じ目玉が付いて同じものを見ていても、意識の中では違っている訳ですから、だったら現実と嘘とはどういう違いがあるのかっていうことになっていくし。

___しかも、誰しもが世界を自分が見たいようにバイアスをかけて見ています。

 そうそう。

___どこまで削ぎ落としても、本当の真実には到達出来ないのかも知れませんね。

 出来ないでしょう。それはもう神様事の話だから。
 必要ないしね。
(つづく)


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22 June

幸せの法則

artist file "tanebito" #19 [1/3] 
木村 正宏 さん(がんこ本舗代表)

「お客さん」っていう言葉は距離がある。
モノを通じて、向こう岸にいる人なんですよね。
「売るより一緒にやろうよ」って。


___洗剤の開発は、海洋タンカーの座礁事故から学んだということですが、座礁事故の処理に携わってらしたんですか?

 いや。俺ね、興味がある方向へ出掛けて行くんです。文献とか調べて、「勉強したい」って電話入れちゃう。日本だけじゃなくパリの工場や、ネパール、南インドにもありますけど、そこへ行って、自分の体で体感して持って帰る。
 たいてい研究されている人って、深いんですけど一方向で考えているんで、商品化するという表現力には乏しかったりするんです。こっちは表現者として訪れて「つまりこういうことなんなんですね?」っていうことをつかみ取れれば、あとは出来上がって行くんです。
 知識をお借りするだけじゃなくて、先生の息のかかった工場を使うことで、恩返しにもなるし。そこにオリジナルな考えもプラスαで入れて行って、モノが出来上がって行く。

___「表現者」とおっしゃいましたが、そういうスタンスをご自分に課してらっしゃるんですか?

 あのね、俺、自分がやっているのは「会社」じゃなくて「劇場」だと思ってるの。全員、役者なの。俺は劇団の団長であったり、脚本家であったり、演出家であったり、いろんな面があるけど俳優がいなかったら成り立たないでしょ? 大道具さんもいるし、小道具さんも、メイクさんもいる。

___そして、オーディエンスも。

 そうそう、もちろん!
 だから、そういう「劇場」のような感覚でみんなに見せて行く。「こんなやり方あるじゃん」って。必要以上に巨大な企業を目指す必要はなくて、「茅ヶ崎劇場」ですね。(笑)

___「等身大」というキーワードもおっしゃっています。

 それは必要でしょう! 必要と言うか、それしか出来ないのにそれ以上をやろうとすることの方が、ちょっと疲れるんじゃないの?

___手の届く範囲にしかリアリティって無いですものね。
 
 ないない。
 お客さんを作るより、友達を作った方が手っ取り早いでしょ。「お客さん」っていう言葉は距離がある。モノを通じて、向こう岸にいる人なんですよね。

___しかも、経済の関係ですね。

 そうだよね、どうしても。(笑)
 それで考えたのがフリマへ行くことだったんだよね。フリマは、お客さんと友達になれるじゃん。逆はないでしょ? 友達とお客さんになる、って言わないでしょ?「お客」から「友達」とか「仲間」という身近なものになって行く。友達だったら、「こういう洗剤あるんだよね」って言ったら「なんでオマエそんな洗剤の話するの?」「友達が作ってるから」って。(笑)友達が洗剤作ってるって、面白いじゃん。(笑)
 そうなってくると、連中が使って良ければだんだん伝わって行く。「売るより一緒にやろうよ」って。それで良いと思ってる。大きなことは何もする必要がない。

 こういう人が欲しいから、って集めるじゃないですか。それは機械でいいんですよ。何も人間じゃなくて良いじゃないですか。人間は感情がある。感情を持って生まれた者を機械のように使うっていうのは、自分の考えに反するんだよね。だって俺が嫌だもん。(笑)俺が嫌なことを他人にはしたくない。
 じゃぁどうしたら良いかって言うと、会社を人の幸せを追求できる所にしたい。人間が生まれた理由が幸せを追求することであれば、会社も人間が作ったものだから、幸せを追求する。人間って、関係性の動物なんだよね。関係性の中に、遺伝子自身が遺伝子そのものを保存して行く、未来永劫生命体であり続ける為のシステムを組み込んでいるんですよ。自分たちは「自分たちの意志で」って思い込んでいるけれど、それを操作しているのは遺伝子なんですよ。それが「本能」としていろいろな方向に持って行く訳です。だから、人との関わりっていう「多様性」、それは未来への存続を遺伝子が感じて我々を動かしているっていう真実を自分なりに見つけているつもり。
 大きな目標で動いている面もあるけど、基本はとにかく人の個性を伸ばして行くこと。それが会社の目的で良いじゃない。その結果、10年後にたこ焼きやをやっていたとか。(笑)面白いじゃん。「前は洗剤作ってたんだけど、今時代はたこ焼きだと思うんだよね」とか。(笑)

何かねぇ、今でもそうなんだけど、ハァハァ息が切れるの大好きなの。(笑)
ハァハァ言ってると生きてる気になれるんです。


 自分は愛媛県の宇和島っていう所の生まれで、育ったのが「ひろみ」って呼ばれる所なんです。自宅の近くに小さなせせらぎがあって、それが少し大きな川にぶつかって、それがさらにもう一つの大きな川にぶつかって、さらにその二つが高知県側でもう一つの大きな流れと合流するんです。そこで四万十川になる。割と海も近い所で、海に流れ込む方と山奥に向かって流れて行く方とあって、奥に流れて行く方に住んでたの。ちょっと山間をぬって行くと分水嶺がある訳です。
 何かねぇ、今でもそうなんだけど、ハァハァ息が切れるの大好きなの。(笑)ハァハァ言ってると生きてる気になれるんです。子どもの頃から走るのが好きで、耳のところでゴォーっていう音が聞きたくて走るの。「ゴォー」が好きなの。風を切る音。ずっとそれを感じていたくて、だから走るしかない。

___趣味は「実験」だそうですね。

 考えて閃いたら、即行動に移してみないと分からない。とにかくやっちゃう。やって失敗、というのは学びでしょ。だから、やればやるだけ狭まって行くというのかな。結論の導き方って人それぞれだと思うけど、自分は数学や物理という思考の傾向があるものだから「消去法」なの。これじゃなかった、というものをどんどん消して行くと、最後に残ったものが「本質」。
 例えば「太陽とは何だろう?」という投げかけに対して、それをハートだけで捉える表現の方法もあるじゃないですか。「生命」と捉える人も要るだろうし、「愛」というように捉える人もいる。そういう「愛」とか「生命」という言葉を自分の中に宿してくれる「太陽」というもの自身は一体どんな存在であるのか? その本質を見極めて行く為に、他の星と違うところはどこか、とやっていくと「太陽」というものが見えてくる。そうすると、心象風景を作ってくれている「太陽」を客観で捉えつつ、自分の中で起こった現象とがようやく結びついてくる。

___そういう手法は、「クリーエーション」や「アート」と同じですね。
 
 それだけですから。そのくらいしか遊び道具はないですよ。(笑)

___遊び道具なんですね。(笑)

 所詮暇つぶしですから。だって知らないんだもん。仕様がないよね。(笑)
  だから、小さいときから扱い難い子だったと思いますよ。親も大変だったと思います。本を買い与えるしかない。「どうして?」「何故?」ばかりですから、それが物理学や天文学に及ぶ質問になってくると、小学校2年くらいになると親は答えなくなって来ますよね。それで、どっさり本は買っていただきました。その本を読むのが面白いから、本を読んでいた。勉強するつもりはないんです。漫画を読むのと変わらない。いろいろな本を読んでいて、アイデアが浮かんだり、また違う謎に巡り会えたり。
 そんな子だから、会社は使い難い。スポンサーをやってくれているゴム工場で働こうと思ったんだけど、社内では使い難いって。他の人間が調和を取っている中に自分が入ると崩れちゃう。「どうして今の指示が出ているんですか?」「目的は何ですか?」ってすぐ聞いちゃう。「その目的を達成する為にだったら、方法論は一つじゃないですよね」と。要は、本来のモノゴトの核になるものを見つける為に、徹底してそうじゃない要素を排除して行く仕事をオープンにやると、周りの人間は厄介でしょ? 人の存在は無意味なものとは思ってないけど、逆なんですよ。人っていうものが生きる活かされる為に、不必要なものを省いて行こうってこうことです。

 今の仕事もそうですが、人間の生きる目的って幸せになりたいだけじゃないですか。それが分かっていれば、興味があることで幸せになる方法はどういうことかな、って。
 幸せっていうのは、飢えていたらあんまり実感することが出来ない。だから、飢えがない程度に収入を得るか、自分が作るか、或いは魚を獲ってくるか。そういう話じゃないですか。方法はどれでも良い。
 そういう感じですね。あまり情緒的でないですね。(笑)かなり論理的。

___そうは言っても、発するオーラは理屈っぽい感じではないですね。

 あ、その疑問なり謎の根本が、感情から来てるからですよ。感情に興味がある。今の自分の感情というものは、何故このようになっているのかという要素をキチッと見極めたい。だから、要らないものを省いて行ったら「あぁ俺がこういう気持ちになっているのはこれなんだな」って。
 おじいちゃんが亡くなった時に、泣くだろうと思ったら全然泣かないで、もう口をきいてくれなくなった亡骸が愛おしくて添い寝して、変ですねぇ。で、それは何故なのかと考えて行くと、「人の死とは何なのか?」「生とは何なのか?」って、いろいろと研究対象が見えてくる。それを、今の生きている自分のリアルな興味の中に持ち込むんです。
 そして、リアルな所では数学的にモノゴトを割り切って考える方だから、それがいつの間にか商品になっているだけ。「真実」なんて本来は到着できないものなんだけど、多角的に検証していかないと「真実」というものには到着しない。

人間なんて知れてるから、
神様に通じているのはそういう潜在意識の部分だと思う。


___さきほど「削ぎ落として行く」ということをおっしゃっていましたが、逆に「編み合わせて行く」作業も必要だということでしょうか?

 どうだろう? 意識的にする必要は全く無いと思う。
 ただ、いろんな角度から見ないとモノって分からないから、そういう見方はチャレンジして行く訳。今まで見たことのない方向から見ると「ああ!」って思う。その方からの見方を発見した時は、そういう見方が自分には欠如していたんだなと思うから、面白い。そうやって穴を埋めて行くようにジグゾーを組み合わせて行って、見えて来たものがおぼろげながら「真実」に近いものなのかなぁ。
 最終的なパズルを仕上げて、人に発表できる形になる、商品という形になる。ここの過程は、自分たちがやっているんじゃないんです。全部「神様」の力です。「宇宙」と言っても良いですけど。
 だって、お風呂入って「あぁ気持ち良い〜♪」とか行ってる時に、ボカーンって頭に電気が灯るの。(笑)「なんだ、これとこれを組み合わせて、ああやって、そうしたらコレ出来るじゃん!」とか。トイレ行ってスッキリした後、ドア開けながら「ほぉ」っとした一息の時に、ポコーンとアイデアが出て来たり。(笑)全部そう。
 人間なんて知れてるから、神様に通じているのはそういう潜在意識の部分だと思う。だから山登りと一緒で、出来ることはすべて自分の細胞に叩き込んで、後は神様任せ。神様は、編み方や組み方を知っている。そして、「自分が求めているのはこういうものなんです」というのを、潜在意識と神様が話するんじゃないの? 知らないけどさ。(笑)
 すべて「頂きもの」。頂きものを自慢できないでしょ? 自分のことのように言えない。だから、まして、ものを「売る」なんて出来ないよね。
(つづく)


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