25 November

完全なる受容

artist file "tanebito" #10 [3/3] 
小笠原 和葉 さん(ボディワーカー / Effleurage

エサレンは、本当にすべてを受容するんです。
「完全なる受容」ということです。


___『エサレン研究所』へは、いつ行かれたんですか?

 2005年の2月です。良い所でした。私にとっては心の故郷ですね。

___ビッグ・サーという海沿いの村だそうですね。

 もともとネイティブ・アメリカンのパワー・スポットだったみたいですね。エサレン族の人たちが住んでいたそうです。

___温泉が出る。

 温泉なんですよ!
 崖の上に露天風呂のようになっていて、目の前に広がる海を見下ろせるようになっているんです。外と内にお風呂があって、その横にマッサージ・テーブルが並んでいてボディワークを受けられるんです。

___『エサレン研究所』とは、何を研究している所なのですか?

 自己啓発や人間能力の開発などを研究していたようです。知性の可能性を開いていく面で、体に働きかけることが大きく作用する、体から開いていった方が早いということで、体からの働きかけ/ボディワークが発展していったということです。

___エサレンのことを知ったのは、どういう経緯でしたか?

 ヨガをやっているうちに、そういうことに興味を持ってやっている人たちがいたんです。ボディワークについて調べていた時で、手技としてはとてもシンプルなのですが、エサレンの姿勢や哲学に打たれまして。

___どのようなところに共感なさったのですか?

 エサレンは、本当にすべてを受容するんです。「完全なる受容」ということです。
 マッサージに行く時に、受け手は肩凝りを治したいという思いがあって、セラピストの側もそれを解消させてあげたいという思いがある。でもエサレンでは、自分の体の感覚や感じていることを触れられることによってもう一度見つめてみよう、とする。
 「凝りがある」とセラピストが判断したら、それは受け手にとってネガティブなことになるんです。そんな風に判断され続けることが、日常生活には溢れています。それを、判断しないであるがままの状態を受け容れて、その人が自分の「本当」を感じられるように、皮膚感覚を使ってサポートする。

全身の統一感を得る。
そうして、魂との一体感を思いだして行くということなんです。


 肩の凝りを、肩の筋肉に働きかけて解消するというような、頭・肩・胴体を分けるアプローチではなくて、全身に繋がっている部分としての肩に触れるという感じで、全身の統一感を得る。そうして全身を満遍なく感じて、そこに判断/ジャッジをしないことによって、魂との一体感を思いだして行くということなんです。
 エサレンでは、従来のマッサージ等のような、例えば「背中のストロークを何回やって、その後右手に移って左手に移って」というようなアプローチをしないんです。一番特徴的なのものは[足先→お尻→背中→肩→指先]を1つのストロークでゆっくり繋いでいく「ロングストローク」という手技で、統合感を感じることが出来ます。それ以外は特に決まった手順というものは無くて、もちろん細かいことも習いますが、スタンスだけをトレーニングされるという感じです。
 手技が厳格に決まっていないので、プラクティショナー(施術者)によって色があるんです。鍼灸をやっている人だったら鍼灸の知識を使ったアプローチをしていくだろうし、グーッと筋肉に入って行くアプローチが好きな人もいるだろうし、私はクラニオセイクラルやレイキなど軽いタッチのものをやっていますので、あまり強く揉み込んだりせずに、開くのを待つという感じのワークになっています。

___エサレンに行ったのはクラニオセイクラルを学んだ後だったのですか?

 そうです。並行して学んでいました。国内でトレーニングして、最終的にエサレン研究所へ行くんです。その後、規定のセッションレポートを提出して認定されます。

___どのくらい滞在されたのですか?

 10日くらいですね。

___世界中からやって来るのですか?

 アメリカ人がやはり多いですね。敷地がものすごく広いんです。森があって、セミナーハウスがいくつもあって、宿泊棟があって、食堂があって、お風呂があって。エサレン®ボディーワークだけではなくて、芸術に関するものや、ダンスや、ヨガなど、いろいろなセミナーやワークショップをやっているんです。

___やはり、「アート」なども「ボディ」の視点からの「アートセラピー」なのでしょうか?

 芸術活動もひとつの表現ですから、人間の可能性ということでしょうか。絵を描く「技術を学ぶ」というよりは、「自分らしく描く」ということはどういうことなのか、というような内容です。

自分の体が、どうしたら良いか快・不快という感覚で分かっているので、
そこへもっと耳を傾けていただけると良いですね。


 練習の後に輪になって、「どういうことを感じた」とかシェアをするんです。でも、それに対して誰も何も言わないんです。100%聴いて受容する、という練習なんです。
 「私はこういうことに自信がないと思いました」と言うと、「いえ、そんなことなくて、あなたはこれこれが良いよ」と言いたくなるんですけど、それをしないんです。その人の為に言うんだけど、それはある意味、自分のジャッジであり、そこで役割や関係性を作ってしまうことになる。
 何も言われないことによって、本当に言いたいことを言うようになって行くんです。そこにあることしか言わないようになって行く。受容されることで自分が開いていくことが出来る。どんどん開いていって、そのことによって自分を受容する。そうしたことを体で理解していく。そのことで、他人を受容出来るようになっていくというプロセスなんです。

___体で理解していく。。

 体も開いていきますから。

___たしかに体に意識が向いて行くと、日常生活で体験していることと体の感覚とは相似していることに気づいてきます。

 それを教えてくれて、そういう場を作ってくれた先生たちは本当に素晴らしい人達でした。

___肉体感覚ってスゴイですね。

 それをちゃんと拾い上げてあげるには、ちゃんと聴いていないといけないんですよね。
 よくセッションを終わった後に、「私の体、どうでしたか?」とお聞きになる方がいらっしゃいます。そういう方は、すごく多いんです。もちろん私はたくさんの方に触れさせていただいているので、いろいろ感じることはあるのでアドバイスをすることもあるのですが、でも、そういうことは私が言わないまでも自分の体が感じていて、そのためにどうしたら良いかということも快・不快という感覚で分かっていると思うので、それは私の声よりもインテリジェンスのあるものですから、そこへもっと耳を傾けていただけると良いですね。

小さい頃から病弱だったんです。
健康になったという単純なことではなくて、
自分の人生を取り戻したという感じでした。


___「体への視点」という興味はどういうことから始まったのですか?

 小さい頃から病弱だったんです。祖母が薬剤師で、薬もたくさん飲まされていて、「症状が出る→薬を飲む→病院へ行く」ということを繰り返していました。大学院で研究をしている頃にストレスがひどくなって、ストレスが溜まっていることにも気づかなかったのですが、アトピーやアレルギーの症状がワァーっと出てコントロール出来なくなったんです。それで、お医者さんにもたくさん行ったし、民間療法もたくさん調べてたくさん試したのですが、悪くなる一方で全然良くならなかった。そうして、体は自分のコントロール出来ないものだと思い込んでいったんですね。体はお医者さんのもので、自分ではどうしようもない、って。
 「体がこんなだから、あれが出来ない、これが出来ない」と、体と敵対してどんどん対立が深まっていった。アトピーが本当にひどくなって会社を休職する頃には、息をするのも皮膚が伸び縮みするので痛かった。それで「息していないや」って気づいた。とりあえず息をしなきゃ、と思ってヨガに行ったんです。
 ヨガをやっているうちに、ある時シャバーサナで横になっている時に体との一体感を感じたんです。「指先まで自分のものだ!」という感覚が、初めてと思えるくらい強くセンセーショナルに感じたんです。「あ、体はお医者さんのものじゃなくて、自分のものだったのかも知れない」って気づいたところから、グッと良くなっていったんです。病院に行かなくても、何かを飲んだり塗ったりしなくても、気づいたことによってどんどん変わっていった。
 それから、体と心の繋がりって凄いんじゃないかなと思い始めて、ボディワークにも興味を持ち始めたんです。いろいろなセッションを重ねたり自分でも勉強するようになってから、より体と心の結びつきを感じて、和解していきました。〔笑〕

___それを今度は人に施してらっしゃる。

 自分が変わっていった体験がとてもセンセーショナルで、「何かを取り戻していった」という感じがしたんです。
 健康になったという単純なことではなくて、それによって自分の気持ちや要求を取り戻したんです。「こういうものが好きで、こういうのものが嫌いで、だからこういう時にストレスを感じるんだ」という感覚を取り戻すことで、自分の人生を取り戻したという感じでした。
 そういうことが苦しくて出来なくて、ストレスで体を壊している方がとても多くいらっしゃる。そういう方は、私がそうだったように「体はコントロール出来ない」「心もコントロールが効かない」と思ってらっしゃる。心と体が乖離してしまって戻れないと思ってしまっている。
 でも、気づきさえすればすごく簡単なことなんだということを、自分の体験があるので、そういう方たちに是非気づいていただきたいと思っています。

___一度来た道、ということですね。

 本当にそう思いますね。〔笑〕誰でもそこから抜け出たり、取り戻したり、思い出したりするチャンスがあるんです。
 自己否定感が強くて「自信がない」と言う人が多いですが、本当にもったいないですね。触れていると、そうじゃないということを確実に感じるんです。「あなたの中にも光があって、体も魂もそれを知っている」って。それに気づくことは誰にでも出来ることなんです。

気をつけて心がけていることは、
ネガティブ/ポジティブというレッテル貼りをしないということでしょうか。


___そうしたプロセスに携わるうえで、変化や気づきに対しては「待つ」のですか?

 その手段がボディワークではない方もたくさんいると思いますし、まず重要なことは、自分自身もそのプロセスの途中であるということです。輝き方や開き方も人それぞれだと思いますので、私の設定するゴールにその人を連れて行くことには何の意味もないんです。
 私が常にその方を100%受け容れること、その方の健全性に100%気づいていること、そして確信していることだけが出来ることであり、それが一番大事なことだと思っています。

___とは言え、何らかの「意図」を100%排除することは出来ないと思います。「意図/インテンション」についてはどうお考えですか?

 気をつけて心がけていることは、ネガティブな面にフォーカスしないということです。あるいは、ネガティブ/ポジティブというレッテル貼りをしないということでしょうか。
 常日頃の反応として、何か目に入ってくるもの聞こえるものについて,良い悪いを判断して処理して取り組んでいく、ということを誰でもしていると思います。でも、その良い悪いの判断はマインドが行っていることで、客観的な良い悪いがある訳ではないんですね。「赤がキレイ」と思っても、「赤」が「キレイ」という質を持っている訳ではなくて、マインドが勝手にそう思っているだけですよね。「体が硬いんです」とおっしゃる方がいますが、それは「硬いという状態」があるだけです。それを「悪い」と思った瞬間に、ネガティブなことになってしまう。「ここが滞っているから流さなくては」というのは、クライアントさんの中にネガティブさを見つけて、そこにネガティブというレッテルを貼ることになります。それを、外側からしない、ということです。クライアントさんの中にあるものやその表現というのは、ただ在るだけで、良い悪いは私が決めることではないんです。
 クラニオセイクラルでは体の中に語りかけることをしますが、こちらがネガティブだと思えば、それに対して体もネガティブなフィードバックがあるでしょう。ですから、それを絶対にしないで、ポジティブで健全な流れに気づいて行くことが、唯一のインテンションかも知れません。

___では、結果については本人にすべて委ねられているということでしょうか?

 そうですね。
 『もうひとりのあなた』というクラニオセイクラルの有名な本があります。施術をするようになって、あらためてその言葉が分かるようになりました。目の前に横たわる「あなた」に施術をすると言うよりは、その人の中にあって、その人をこの世に生まれさせて生かし続けている力や知性を感じるんです。それは、その人のマインドや性格や外見というものを越えた、奥深くの「もうひとりのあなた」と対話をするということです。「どこに行きたがっているんですか?」と。それに私は「気づいていますよ」と光を当て続けるんです。そのことによって、その健全性をもっと表現してくれるんですね。
 留めているブロックにフォーカスしても、それは理由があってそこにあるので、取り去ろうとしても、体は操作されていると感じるんです。そうではなくて、健全性にフォーカスすることで、体は表現してくれる。
 お母さんが子どもの話を聴く時に、「こういうことを言って欲しい」と聴いている訳じゃないと思います。その子のしゃべりたいという気持ちに応えて聴いてあげている。聴いてくれることが分かると、その子はもっと表現してくる。本当のことを言い始める。そういうプロセスと一緒ではないでしょうか。
 これを引き出したいという意図は、無いです。

自分がこれを楽しいと思うからには使命なのかな。(笑)
それに近づいているサインは「楽しい」ということなのではないでしょうか。


___なるほど。では、さらに先走って、その先はどのようなステップなのでしょうか?

 私が「生きている目的」と思うことは、自分の色を輝かせることだと思うんです。その光は自分のなかにある。
 いろいろなことを通して、「あぁ、私はこういうものが好きなんだ。こんな特技があるんだ。この部分は人に任せておけばいいんだ」などといろいろなことに気づいていく。そして、そのことに歓びや楽しみを見出していく。その過程の中で、自分が生まれ持って来た良さを世の中と分かち合っていくには、自分が元気で輝いて楽しくなくては出来ないですよね。犠牲的であったり、人からの要求でやり続けていたら、生まれ持った色とは違って、苦しいだけだったりすると思います。自分が楽しくて機嫌が良くて調子が良いことが一番の輝きで、それは結局、他人のためにも一番良いことだと思います。
 自分の色にもっと気づいて、それを輝かせていくようになりたい。自分が本当にやりたいと思うことをやりたいと思っています。それが「健全性」とか「輝き」ということだと思います。
 ゴールというよりは、その方が本当に自身の声や要求に気づいて、それに従って楽しく幸せに生きて欲しいということですね。

___ディープなお仕事ですが、疲れることはありませんか?

 外側から「何かを与えよう」とか「こういう風にしてあげよう」と思っていたら疲れると思います。もちろん、たくさんマッサージをしたり体の使い方が悪ければ、筋肉が疲れたり、どこかが痛くなったりすることはあるでしょうが、それは単に肉体的な疲れです。 気持ちにまかせてダンスしている時って、疲れないじゃないですか。楽しくて海で泳いでいる時って疲れないじゃないですか。〔笑〕そういう感じなんです。何かに乗って動いているような感じです。

___そうした作業に、何を感じてらっしゃるのですか? やはり「楽しい」からなさっているのですか?

 はい。楽しいですね。

___「使命感」のようなものはありますか?

 いえ。使命感というほどのものはないです。自分がこれを楽しいと思うからには使命なのかな、と思うくらいでしょうか。〔笑〕
 やっぱり、使命だとか、これをやると決めて生まれて来たことはあるだろうと思います。それに近づいているサインは「楽しい」ということなのではないでしょうか。


18:00:00 | milkyshadows | |

18 November

「輝き」に戻るプロセス

artist file "tanebito" #10 [2/3] 
小笠原 和葉 さん(ボディワーカー / Effleurage

『クラニオセイクラル』のような静かなセッションを行うと、
自分でも気づかないことに気づかされることが多いですね。


___『クラニオセイクラル』という手技をなさっています。

 「頭蓋仙骨療法(とうがいせんこつりょうほう)」と言います。

___脳脊髄液に働きかけるそうですが、これはリンパのようなものなのですか?

 身体の中に実際に存在する液体なんです。背骨は下から、尾てい骨があって、仙骨という三角の骨があって、腰の骨があって、その上に背骨が首まで積み重なって、その上に頭蓋骨があります。その中に神経や脳など大切なものが入っているのですが、それを保護する役割がある「脳脊髄液」という液の上に浮かんでいる状態になっているんです。
 その液自体が、呼吸のような波のような、下から湧き上がって広がって行って、緩やかに戻る所へ戻って落ち着いて行く、という運動をしているんです。その動きは、全身どこを触っても、熟練したプラクティショナーであれば感じることが出来るんです。
 常日頃、肉体的なショックを受けますし、外傷によるショックや、ストレスでも体はキュッとなりますし、そういうものが体の中に蓄積されていくと、そこの部分には広がって行き難くなるんです。でも、そこへ広がって行き難くなっているけれど、そこへ広がって行きたいという動きが必ずありますので、そこへ耳を傾けてあげて、心の中で会話をしながら「こっちへも来れるんだよ」と教えてあげる。そうすると、不思議なことに、体はそれに応えてくれるんですね。「そうそう、こっちへ行きたかったんだ」と。
 実際に骨が動いたり、身体の中の緊張が取れて、そこへ流れが戻って来たりとか、そういうことをお手伝いするワークです。リンパ・マッサージのように外から圧をかけて流すというアプローチではなくて、体が動きたがっている方向に気づいてあげるということがすべてかも知れないですね。

___私も体験させていただきましたが、本当に触れているだけなのですね。

 そうです。

___それでいて、脳脊髄液の流れを、肉体的な感覚として本当にリアルに感じます。驚きました。

 私もいまだに驚いています。〔笑〕
 神経や脳に働きかけていますから感覚を感じますので、その過程では「光が見えた」とか「音が聞こえた」と言う方もいらっしゃいますし、そういうことは普通に起こります。

___人間の体は本当に凄いですね! 痛い・痒い・熱いという皮膚感覚が、体の内側へも向いていることに気づかされました。

 外側の刺激の方がやはり圧倒的に強く感じますから、なかなか内側の繊細な感覚に気づくことはないですが、それはそういう機会がないということなんだと思います。『クラニオセイクラル』のような静かなセッションを行うと、自分でも気づかないことに気づかされることが多いですね。

___このような繊細なセッションは、それなりの感性をお持ちの方でないと感じられないでしょうか?

 私も最初はそれを危惧していて、プロとしてワークをしていくことを躊躇していました。けれど、普段は気づかない感覚が在るということを衝撃的に感じる方というのは、繊細なことにはそれほど目を向けていない方の方が多いんです。〔笑〕
 もともとヒーリングやボディワークに興味があるとか、ヨガやマクロビオティックをやって体のことに気をつけている、という方よりは、1日20時間働いているというような方の方が「なんだコレは!」とビックリされる方が多いということに、始めてから気づきました。

___食べ物にしてもエンタテイメントにしても、何にせよ刺激を求める社会です。その点、『クラニオセイクラル』のファーストタッチは穏やかです。

 本当に触れているだけですから、外から見ると「何をしているんだ?」という感じだと思います。〔笑〕

___説明がないと、戸惑う方が多いのでは?

 また、説明が難しいんですよね。
 私も始める時に、ボディワークに興味を持って調べていく中で、何を読んでもまったく分からないのが『クラニオセイクラル』だったんです。「5gのタッチで、、、云々」と書いてあるのですが、分からないので、とりあえず縁があってワークショップに行ったんです。そうしたら、本当に触れられているだけなのに、自分の体の中で骨がポキポキ鳴っていく感覚や、首の筋がピクピク動く感覚、その動きの後に何かがワァーっと流れていく感覚とか、外側までそれが広がっていく感覚とか。。

___体験すると、本当に驚きます。

 説明はとても難しいです。〔笑〕おいで下さいとしか言いようがないです。〔笑〕

その方の体が表現するものに耳を傾けているだけです。


___セッションを受けた方は、どういう反応が多いでしょうか?

 本当に人それぞれですね。
 心や魂のレベルで変わっていくと言う方も多いですし、それでいて肉体にも反応があって効く。それが面白くて、不思議で凄いなぁと思うところです。
 過去に大きな怪我や手術をされている方、逆子や難産など出産の時に強い圧縮があった方などは、頭蓋や頭の神経系に働きかけることによって、かなりこちらの手に大きく感じることが多いです。骨がパキパキ鳴って開いたりする。それによって、長年感じていた違和感が消えたり、肩こりが楽になったり目が良くなったという方もいらっしゃいます。
 もっとスピリチュアルなことに気づいていく方や、「メッセージを受け取りました」などとおっしゃる方もいます。ものごとに対する反応の仕方も、より深くから気づくように変わって行くんです。セッションを重ねることによって、そういった根の深く歴史の長いものについて変化が見られることが多いようです。
 同じ方でも、起こることは毎回違いますし、体がビクビク動いて、体の中に溜まっていた衝撃をリリースするようなことが多く起こるセッションもありますし、ゆらゆらと眠っているような起きているような感じで静かに進んでいくセッションもあります。何が起こるとは言えないですね。

___プラクティショナー(施術者)は、セッションの中で何を見ているのですか?

 その方の体が表現するものに耳を傾けているだけです。

___それを、触れている手の感覚で感じる。

 そうして感じていることも多いですが、そうでないもので感じていることも多いと思います。
 さっきも言ったように、例えばこうしてお話をしていて、言葉で聞いて、表情から読み取って。でも、そうじゃないものからもたくさん情報を受け取っている。「本当はこうしたいんじゃないかな」とか。
 それは、手で触って感じる時もありますし、「なんとなくあっちが気になる」というように感じる時もあります。手で触れて感じているリズムが「からだのあの部分で曲がっている」とか「通り難い感じがしている」というようなことを、触覚といろいろな情報を合成して認識しているのだと思います。

___感じる力は誰でも持っているとするなら、それを体系づけることが勉強なのでしょうか。

 そうですね。勉強はたくさんさせられます。全身の解剖学をやりますし、脳の中の血管の一本一本や、神経系、内蔵についても細かく勉強します。そういう知識をバックグラウンドで持っていることによって、「あの感覚はこの膜から来ている」とか「あれはこの骨の感覚だ」というようなことが、だんだん一致しやすくなる。拾っている感覚と知識とが合成されて、より詳細なことが見えてくる。
 でも、やっぱり「慣れ」でしょうか。セッションを重ねることによって、だんだんそういうことが見えてくる。

どんな人でも、必ず美しいんです。
その本質は光り輝いている。


___体の感覚で得たものを体系づけるということは、人類の驚くべき力ですね。

 「知識」は必要なもので勉強も必要ですが、二次的なものだと思います。一番自分が試されて要求されていると感じるのは、その人の中にある、その人の生命力を推進している力や知性を、心から100%「信じる」ということなんです。
 それが出来ないと「知識」に振り回される。「治してやろう!」とすると、体は心を開いてくれない。体が心を開く、というのは変ですが。〔笑〕
 もっと大きなものを信じて明け渡していくということが、一番必要とされてチャレンジされているところだと思います。

___クライアントさんからは、どんなフィードバックがありますか?

 「何々に気づきました」ということが多いと思います。具体的に肉体的な症状が取れたという方もたくさんいらっしゃるのですが、「自分の中にこういうものがあるということに気がつきました」というフィードバックが一番多いし、心に残るものだと思います。

___そういう場に立ち会うことは、どんなお気持ちですか?

 楽しいですよ。(笑)
 幸せですね。本物に触れている感じが毎日あります。

___「本物」って何でしょう?

 何でしょうねぇ。。
 やっぱり、セッションを通して語りかけているものって、その人の表面的な肉体ではないですし、人格とか造作とかよりも奥深くにある、もしかしたらその人が気づいていないものかも知れないので、本物の絵画を観ているような、そんな感じなんですかねぇ。(笑)芸術に触れている感じがしているかも知れません。

___『エフララージ』のサイトに、「美しいレイキ」という表現がありました。「美しい」ということについては、どんなことをお考えですか?

 さっき、「操作」ということを言いましたが、エネルギー・ワークのセッションを行っていく中で、嫌なものを強制的に変えたり取り外したいということも出来ると思うのですが、私が美しいと思うのは、その人本来の在り方や輝きに戻っていくプロセスだと感じています。
 どんな人でも、必ず美しいんです。その本質は光り輝いている。それは、エネルギー・ワークや、実際に触れている時に、私の心が強烈に感じることなんです。本当にキレイだなぁと感じます。なので、クライアントさん自身が、そこに気づいて歩み寄っている時があります。私に気づかれることによって、内側からも花開いていく。そのプロセスは、すごく美しいなぁと思います。
 現代社会で生活していると、それに蓋をしていたり、外からレッテルを貼ることが多いでしょうから、それによってどんどん自分を閉じ込めていってしまう。そうじゃなくて、その向こうに本当は光り輝いているものがあるということに気づいて、自分の方に取り戻してくるプロセスは、キレイだなぁと思います。

___なるほど。。

 情報が多いということは幸せなことでもあるし、文明の恩恵だと思いますが、そのことによってかえって本質から遠ざかってしまう。気づかなくしてしまう。それは、もったいないなぁと思います。
 自分の本質に気づかないから、外側からの情報に頼ってしまう。他人からの期待に応えようとしているうちに、自分の内側からの要求が分からなくなってしまうことって、ありますよね?
 そういうことは、起こりやすいことだと思います。
(つづく)


18:00:00 | milkyshadows | |

11 November

体に宿るインテリジェンス

artist file "tanebito" #10 [1/3] 
小笠原 和葉 さん(ボディワーカー / Effleurage

ボディワークならではの一番大きな恩恵は
「気づき」だと思っています。


___「ボディワーク」というのは、「治療」とは何が違うのでしょうか?

 「治療」ではない、というところが一番違うんだと思います。(笑)
 「治療」というと、そこへ行って痛みをとってもらう、という説明が分かりやすいでしょうか。痛みから解放されるということは大事なことですし、そうすることが出来る「治療」は素晴らしいと思います。
 けれど、痛みというのは体からの大きなサインだったりするんです。痛みを通して何かに気づいたりすることもあるんです。痛みに対して常にネガティブなラベルを貼り続けると、そこからのメッセージをいつまでも受け取れないんです。
 それは痛みということだけではなくて、変化に対してキチンと自分自身でコミュニケーション出来るようになるために、体と魂がちゃんと再び繋がってくれるように外から助けてあげる、ということが「ボディワーク」なのだと思います。
 例えばセッションが終わった後に「すごく疲れていたことに気づきました」とおっしゃることがあります。それは、治療に行った結果だとしたら、「疲れが取れました」ということではないのですからネガティブですよね。でも、ボディワークではそのことは大きな成果だと捉えます。その方が自分の中の要求に気づいた。自分の体と結びついて、そこからのメッセージを聴こうとした。
 結びつけるだけで、結果は保証できないし、その方にあるものに気づいてもらう。外からやるよりも、その方の体の中にあるインテリジェンスに気づくことの方が余程大きいことですから。

___ボディワークにおいては「気づき」ということが重要な要素なのですね。

 「気づき」がメインテーマだと思います。ボディワークならではの一番大きな恩恵は「気づき」だと思っています。

___気づいた後のステップについては、何かフォローがあるのですか?

 セッションを受けていただくこと自体によって、どんどん変わっていくと思います。
 具体的な体の問題に対しては、自己メンテナンスを含めてアドバイスすることも出来ますし、私自身が気づいて変わってきたというプロセスがありますから、そういうことについてお話したりすることも出来ます。

___自然治癒力に委ねるような方向なのでしょうか?

 「治癒」というのがどういうことを意味するのかという問題もあると思いますが、大事なこというのはやっぱり自分が一番よく知っていると思うんです。体の状況にしてもそうですし、もっと大きな「人生でどこへ向かって行きたいか」とか「どういうことを大事にしていきたいか」ということに気づいていかなければ、[疲れる→セッションを受ける→何となく元気になる→元の生活に戻る→疲れる→またおいでいただく]というステップを繰り返すばかり。それはそれで良いと思いますが、もっと本当に自分の心の声に目覚めることが出来れば、ここに来る必要もなくなりますしね。(笑)

___そうすると、セッションの多くの部分はクライアントさん自身の「気づき」に任されている。

 そうですね。
 これを言うのはボディワーカーにとって勇気の要ることですが、結果に対して何も保証出来ないんです。その方自身がすべてを起こすのです。
 「癒し」という語が流行していますが、「癒し」は外から与えられるものではないんです。自分の内側から「癒し」を行う力を誰でも持っていますし、そこに目を向けた時に内側から起こってくるものだと思っています。それは、痛みが取れたり何かが良くなったりという形で現れ始めることもありますし、もっと深いレベルで変化が起こってくることもある。その可能性に自分が気づいてあげることが、何に対しても一番の近道だと思います。

「繋げる」と言うよりは、
「もともと一体なんですよ」ということに気づいてもらう。


___たくさんの方に施術なさっていますが、クライアントさんの反応はいかがですか?

 いわゆるマッサージというようなものとは全然違う、内側の要求というようなことに目覚めてこられる方が多いように感じますね。

___目覚めたからこそいらっしゃるのかしら?

 その段階としてセッションを使う、ということだと思います。
 私自身はヨガから始めたのですが、ヨガをやると体の疲れも取れたりするのですが、自分の中の変化に気づいていくんですね。それから、自分で自分の体や気持ちをコントロール出来るという自信を取り戻したり、体と心、それから魂との繋がりを築いていって、「あ、最初からここにあったものなんだ」という感覚を取り戻していくというステップがあったんです。ボディワークは、それを外からサポートすると言うか、一緒にそれをやっていく過程のような、その人が自分で気づいていける場所を提供するという感じかも知れません。

___「body/体」と「mind/心」と「spirit/魂」という3つの側面について語られることがありますが、小笠原さんが携わっているのは、その境界領域なのでしょうか?

 その3つは、もともと1つのものだと思うんです。それが「離れている」と思い込んでいる人が多い。
 本当は近くにある一体のものの中にどんどん衝立てを作っていったり、その中のどこかに過剰にフォーカスすることによって、他のものとの一体感、繋がっていると感じられなくなっていく。特にアタマをたくさん使っていますよね、私たちって。そこの動きが激しいので、その奥から湧き上がってくる魂の要求やカラダの要求、そのサインは常に出続けていると思うのですが、そうではない思考活動の方に過度にフォーカスしている状況が多いのだと思います。
 それを「繋げる」と言うよりは、「もともと一体なんですよ」ということに気づいてもらう。

___なるほど。だから「気づく」ということには「思い出す」という感触があるのですね!

 そうですね。「再び繋がる」という感じだと思います。
 その「body/mind/spirit」について、バランスが崩れるとか、何かが失われる、と思う方が多いようですが、そうではないんですね。一体であることを思い出せば、いつでもそこへ戻って行けるんです。

大自然と繋がって生きていた頃の古代の人の方が、
そういうエネルギーの使い方は自然なことだったと思います。


___セッションでは、そのような時には実際に手触りが変わるのですか?

 はい。何の感覚で感じているのかよく分からない時も多いですが、肉体的な動きの変化として本当に皮膚の感覚(センセーション)を感じることもあります。
 例えば頭に触れている時に、足元の方から波のようなものがワーッと上がってくるようなカンジがして、頭に到達した時に、その拡がりを手のセンセーションで感じたりします。あるいは、宇宙に繋がっているカンジがする、とおっしゃる方もいらっしゃいます。

___和葉さんの手は、すごく温かいですね。

 もともと冷え性で、実際に触るとそれほどでもないと思うのですが、セッションが始まるとエネルギー・ワークも行いますから温かく感じられるのかも知れません。

___『 レイキ』というエネルギー・ワークは、どのようなものでしょう?

 19世紀半ばに日本で発祥したハンド・ヒーリングです。臼井甕男(うすいみかお)さんという方が修行中に、そのエネルギーの使い方と特徴をインスピレーションで得て、それを細々と周りの人に広めることをしていたようです。日本から一旦西洋に伝わって、向こうの人は人々に広めるシステムなどを作るのが上手ですから、日本にも逆輸入されて、世界では何百万人に広まっていると言われています。

___「手当て」ということのルーツだそうですね。

 もっと大自然と繋がって生きていた頃の古代の人の方が、そういうエネルギーの使い方は自然なことだったと思います。頭を使うようになって、だんだんそういうことを信じることが出来なくなっていって、自ら回路を閉じていったというところがあると思います。
 だから、赤ちゃんの手からは、何もしなくても(エネルギーが)出ているんです。〔笑〕
 それを、だんだんマインドが閉じていって、「こういう回路があったんですよ」と思い出させてあげるステップが、レイキをやっていく中であって、そうするとまた誰でも開いていく。

___一度体験しないと怪しく思われるかも知れませんね。〔笑〕

 そうですね。怪しいかも知れません。〔笑〕

___初めて体験される方は、どんな反応をされますか?

 まず「温かい」と感じられる方が多いです。
 私の所へいらっしゃってくれる方はヨガをやってらっしゃる方が多くて、そうすると、自分の体の中のエネルギーの動きが分かる方が多いので、「ここが滞っていたのが流れるのが分かりました」とか。痛みが取れるというレベルでも変化が起こるし、精神的なレベルでも変化が起こるし、終わってから徐々に変化に気づいていく方も多いです。

体というものは必ずどこかへ行きたがっているんですね。
それは、もともと持っている「健全性」で、100%輝かせようとする動きです。


___「スピリチュアル」という語が流行していますが、そこで語られる「オーラ」というような部分を「エネルギー・ワーク」では扱うのでしょうか?

 目に見えないもの、科学では実証できないものを扱うという意味では、同じフェーズ(側面)のものという感じはしています。

___私自身がエネルギー・ワークを体験した上での感覚では、どうもスピリチュアル・ブームで語られている世界観には違和感を感じています。

 ハリウッドから「ヨガ」のブームが流れてきた後、「スピリチュアル」や「ロハス」ということが急速に展開してきて、それがファッションのように取り入れられている面もありますし、ちょっとマスコミに操作されている面はあると思います。
 けれど、それが生活の中に入ってくるということ自体、人々の意識が変わってきているということだと思うんです。特別なものではなくて、本当はもともと持っていて忘れられていたものに少しづつ戻っていっている、再び目を開いていっている、という状態なので、今これはこういうステップで良いのではないかと思っています。

___とするなら、次のステップというのがあるのでしょうか?

 まだ本当にそこへ戻っているというよりは、ちょっと取り入れたり目を開いていったりという感じだと思うんです。フィットネスクラブに行くとか飲みに行くという感覚でオーラを観てもらう、みたいな。〔笑〕
 まだ特別なものだったり、馴染んでいない感じがあると思うので、特別にそれを観られる人がいるとか、そういうことじゃなくて、もっと自然に、本当にそういうことがあるんだなと皆が心から受け入れるまでは、もうちょっと時間がかかるのかなと思います。
 もともと私も科学(宇宙物理学)をやっていたので、こういうものを受け入れたり目を開いたりしていくことは本当に大変だったのですが、でも「ボディ・ワーク」や「ヨガ」を通して本当にそこにあるということに触れたから、徐々に馴染んで自分のものになったんです。それを、本で読んだり、人に聞いたりということで始めたとしたら、もうちょっと時間がかかったかなと思います。

___実際に感じることがあったのですね?

 科学で説明できないことは本当にたくさん起こりますし、人の体に触れることを毎日繰り返している中で、その方のリズムを感じて触れていると、「この人を生かしているのは心臓じゃない」って感じるんです。
 心臓が動いて、血液が循環して、臓器が働いて、神経やホルモンのバランスがあって、ということじゃなくて、その背後にもっとそれを推進する力がある。この人の頭が知らない所で。すごくそれを感じる。

___それは、触ると分かるのですか?

 そうですね。〔笑〕
 分かると言うより、感じるんです。こうやってお話していても、その人が笑っているけど実は怒っているとか、分かるじゃないですか。それは、顔のパーツを分析してということではなくて、それを越えたもので伝わってくるものがあるからだと思うんです。そういう「なんとなく」という感じです。

___人は、言葉を越えて「感じる力」を持っているということですね。

 そうですね。

___感じていることを理屈で裏付けしようとすると、その作業をしているうちに感覚が消えて行ってしまう。

 セッションをしていて、メソッドとして、心の中でクライアントの体の中に語りかける時があるんです。それを初めて指導された時に、「なんてバカなことをしなくちゃいけないんだろう」と思った。〔笑〕そんなことでクライアントの体が変化する訳がないじゃないか、って。
 ところが、やってみると、その心の中の語りかけに応えるようにクライアントの体の中の動きが変わるんです。それは、実際に手で触れて感じるレベルの動きとして、変わるんです。それを体験した時は本当にビックリして、「こんなことがあってはいけない」と思ったくらいです。〔笑〕
 私は科学をやっていたので実験をデザインすることが出来るので、いろいろな手順で確認して、これは偶然ではなくて、意識の上での語りかけがクライアントの中の何かを動かしている、物理の法則を越えたところで何かが起こっている、と認めざるを得なくなった。

___それは、操作出来る、ということでしょうか?

 「操作」というと、強制的に望まない所へ連れて行くという感じがありますが、体というものは必ずどこかへ行きたがっているんですね。それは、もともと持っている「健全性」で、100%輝かせようとする動きです。その動きは、どんな状態の方でも必ずあると断言できることなんです。
 そこに気づいてサポートしてあげようという意図を持った時に、それに体が応えてくれるという感じです。「こっちに来い」という働きかけには応えてくれないですね。
(つづく)


18:00:00 | milkyshadows | |