Complete text -- "『月面恋文合唱団』"
02 December
『月面恋文合唱団』
「ときめき」とか「きらめき」を撮るには、20〜30分が一番ギュッと詰まるんですよ
___いろいろな映画祭に作品を出されていますね。
『青空夜空に星空』は、エディロールビデオ・フェスティバルで総合グランプリになりました。
『夏音風鈴』は小田原映画祭と長岡アジア映画祭と、あともう一つ山形国際ムービーフェスティバルに行っています。
映画祭は地方の方が盛んだったりするんです。
___小田原映画祭では西さがみ賞を受賞なさいました。
グランプリ狙ってたんですけど、悔しくて仕様がないですよ。(笑)だからロビンソンに行く度に悔しさが滲み出る。表彰式があそこだったんです。
___作品は20分程度のショートフィルムが多いようですが、「ショートフィルム」ということにはこだわりがあるのですか?
あの題材で、「ときめき」とか「きらめき」を撮るには、20〜30分が一番ギュッと詰まるんですよ。あれが60分もあったら長い。だから、時間にはこだわってます。短ければ短いほど良い。
長編は、全く違うことをやるんです。青春モノではあるんですけど、女の子のではなくて、男臭い感じにしちゃったり。
___今まで何本くらい撮ったのですか?
数えてないですけど、40〜50本はあるかな。
___そんなにあるんですか!
足柄にいる頃に、もう20本くらい撮ってましたから。
___どのくらいの撮影期間で撮るのですか?
2〜3日です。丸々、朝から晩まで。
時間との戦いですから、過酷ですよ。(笑)
詩の断片を繋ぎ合わせたら、物語になると思ってるんです。
一個では抽象的なものでも、それが積み重なると一つのものになる。
一個では抽象的なものでも、それが積み重なると一つのものになる。
___撮り始めたのはいつ頃からですか?
最初に撮ったのは7年前です。19歳の頃、専門学校時代に撮り始めました。
___映画の専門学校?
いや全く違って、僕ね、文学の専門学校に行っちゃったんです。詩が書きたかったんです。
言葉の勉強がしたくてその学校に入ったんですけど、詩の授業は1週間に1時間しかなくて、後の授業は三島由紀夫の本を読んで討論会とか、訳の分からないことばかりやってて、「コイツらには着いて行けない」と思った。(笑)
それでずっとサボってたんですけど、たまたま入った映画館で『バトル・ロワイヤル』を観て、「映画って、こんな凄いんだ!」って思った。
___『バトル・ロワイヤル』、、
殺し合いの映画なんですけど、裏側に青春が詰まってるんですよ。その青春の部分がすごく好きで、「オレもこんな映画撮りたいな」っと思って、次の日に、貯金を叩いて中古のデジタルビデオカメラを買いに行きました。
買ったはいいけど使い方が分からなくて、秋葉原に通いつめて店員さんに聞きまくった。(笑)それが始まりですね。
___でも、映画って一人では出来ないですよね。
その時一緒に遊んでいた連中が「面白そうな事やってるじゃん」という感じになって、「じゃ、オレたちで映画撮ろうぜ」みたいなノリで始まりました。
___脚本も書いてらっしゃいますが、それは文学からの流れでしょうか?
正直な話、全くそういう勉強はしていないんです。本当に直感で書いてるんです。
脚本が一番怖くて、頭がトランス状態になるんです。気がついたら書き上がってる。「あれ、オレ、こんなの書いたっけ?」みたいな。(笑)
だから、もう一人の自分が書いてますね、あれは。自分の中にゴーストライターがいますね。(笑)
___文学と言っても、詩というのは短編で、断片を切り取るようなスタンスです。それが、映画となるとストーリーがありますから、だいぶスタンスが違うように感じますが。
詩の断片を繋ぎ合わせたら、物語になると思ってるんです。一個では抽象的なものでも、それが何個も積み重なると、一つの確立したものになる。
だから、起承転結とか構成のことが自分は全く分からないので、難しいんです。
___まして映像があるから、繋ぎ合わせるのは難しいでしょうね。場面ごとの衣装の辻褄合わせなども、脚本の段階で想定しておかなくてはいけないのですよね?
そういう最低限のミスはないように現場ではしていますが、衣装は全然こだわってないです。
___映像では全部が映ります。衣装、髪型、ロケーション、、
ロケーションにしかこだわりはないですね。何にこだわるかと言ったら、ロケ地です。
やっぱり「地元愛」って言うんですかね、それがすごく強いんです。何としてでも、足柄、小田原、開成町、大井町、山北とか、この西湘地区で撮りたいんです。どんなにキレイな風景でも、他の土地では撮りたくないんです。
緑が大好きなんです。
田んぼが撮りたくてやってるようなものですから。(笑)
田んぼが撮りたくてやってるようなものですから。(笑)
___そういえば、『夏音風鈴』の田んぼのシーンはとても美しいです。さすが、緑が一番輝く時期を知ってらっしゃる。地元を題材にする良さだと感じました。
緑が大好きなんです。
田んぼの緑にも表情があって、朝の顔、昼の顔、夕方の顔、夜の顔があって、ベストなのは3〜5時なんですよ。太陽が斜めからちょうど良く当たって、それを逆光で撮ると凄くキレイなんです。稲の先端がひらひら揺れて。
田んぼが撮りたくてやってるようなものですから。(笑)
___田んぼでは、よく遊んだんですか?
そういう記憶はないんですけど、僕は南足柄の内山という所に育ったので、常に田んぼがあったんですよ。だから、長年連れ添った恋人みたいなもので、田んぼがないと寂しい。(笑)
___『シリウス/ソライロノキミ』では、朝の田んぼのシーンがあります。
あれは8時くらいです。8時の田んぼは、太陽が真上から当たるんです。なので、カメラは狙いやすい。右へ振っても左へ振っても、どこも均等な色が撮れるんです。
女の子が赤い衣装なんです。緑から、赤が通って、緑。そのコントラストを撮りたかったんです。夕方だと、緑に黄色が入っちゃうんです。
女の子が一歩踏み出す瞬間を撮りたいんですよ。
その恋が叶う叶わないではなくて、伝えるまでの過程が好きなんです。
その恋が叶う叶わないではなくて、伝えるまでの過程が好きなんです。
___作品の中で、「赤」の色にはメッセージを込めているように感じました。『青空夜空に星空』では、マニキュアの赤、お弁当箱の赤。『シリウス/ソライロノキミ』の女の子は、赤いワンピースに赤いハイヒール。『僕、ニート』では、赤い傘がキーになっています。
普段、赤い衣装を着ている人ってあんまり見ないじゃないですか。会社に行くのに、赤い服なんてこともない。なので、赤は特別なイメージなんです。
だから、女の子の「今日はガンバルぞ」という特別な日とか、少女から大人へのちょっと背伸びをした感じの、そういう女の子らしさの象徴が、桃色やピンクではなくて、僕は「赤」なんじゃないかなと思って。
マニキュアに「真っ赤」なんて、なかなかいなくないですか?
___選ばないですね。(笑)
そういうのって、大人に憧れる女の子がやってしまいがちなミス、みたいなものですよね。自分的にはすごく頑張ってるつもりなんだけど、周りからみたら「なんだ、アイツ!?」みたいな。
そういう空回りした感じが、好いですよね。女の子が一歩踏み出す瞬間を撮りたいんですよ。奥手で何をやってもダメな女の子が好きな男のために頑張る、みたいな。その恋が叶う叶わないではなくて、伝えるまでの過程が好きなんです。
___そういう10代の女の子の気持ちをとてもよく描写されていますけれど、それは取材するのですか?
いや、妄想するんです。(笑)
例えば街を歩いていてカワイイ女の子がいたとしたら、「この娘は今までこういう恋をしてきたんだろうなぁ、、今はこういう彼氏がいて、こういう家庭に育って、、」とか、勝手に妄想するんです。電車の前に座った女の子がiPodとか聴いていたら、「今流れている曲は絶対コレだ」とか。
___かなり人間観察なさってるんですね。
女の子の会話には、常に何か感じますね。普通に聞いているだけで感動しちゃいます。他愛もない会話なんでしょうけど、あの年代しか出来ない会話ですからね。
だから、言葉には注意しています。
___勝又さんご自身は、どんな10代だったんですか?
もう自由奔放に遊びまくってましたね。ま、とりあえず、女の子にはモテなかったですけど。(笑)
___その頃も、女の子たちの会話に耳をそばだてていたんですか?
いや、全く聞いてなかったです。(笑)
というか、「女と話すヤツはナンパだ」という暗黙の了解があって、「絶対コイツらとはしゃべんない」という感じでした。でも、お年頃ですから好きな人とか出来るんですけど、なかなか近づけなくて、「ダメだな、オレ、、」とかなってました。
ラブレターを書いている時の気持ちというのは最高潮だと思うんです。
それこそ「真っ赤」だと思うんです。
それこそ「真っ赤」だと思うんです。
___ラブレターとか書いたりしました?
中学の頃、書きましたねぇ。すごい寒いラブレターですよ。脚本みたいに「、、、」がいっぱいあるんです。(笑)
___勝又さんのブログは『月面恋文合唱団』というタイトルですが、恋文/ラブレターには思い入れがあるのかしら?
想いは直接伝えるのが良いと思うんですけど、直接行くまでに、想いを綴るという過程があって、そのラブレターを書いている時の気持ちというのは最高潮だと思うんです。それこそ、その時の気持ちは「真っ赤」だと思うんです。
___想いが濃縮されています。
ドキドキしますよね。字をすごく丁寧に書いたり。
今の女の子たちはメールを使ってしまうらしいですけど、それはそれでアリだと思うんです。絵文字とか顔文字とか、遠回りした感じが好きですね。
でも、絵文字を文章にどう置き換えるか、なんです。昔は文章でしか伝えられなかった訳ですから。
___ラブレターもマルチメディア化しています。(笑)
今ラブレターもらったらビックリしますよね。「え、コレ、メールで良いじゃん」って。それをわざわざ自分の手で書いて来てくれるっていうのは、結構デカイと思います。それは嬉しいですよね。
___それが映画となると、すべてがこもっています。
楽しくってしょうがないですよ、映画を作ることが。
(つづく)
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