Complete text -- "ハワイに降る雪 / 「自由」と「宇宙」"

06 January

ハワイに降る雪 / 「自由」と「宇宙」

artist file "tanebito" #12 [1/4] 
MAX さん(ナチュラルヒーラー)

「ヒーリング」


___「ナチュラルヒーラー」というと、どんな仕事をなさってるんですか?

 その場所によって全く変わるし、会う人がどういう方なのか、毎回変化がありますから、まったく自分も予想つかないですね。あえて「ヒーリング」と言ってしまっているんですけど、自分の中では肩書きにならない肩書きと言うか、人間全員ヒーラーであって、やっていることはすべてヒーリングであるべきものだろう思うんです。
 今日本では「ヒーリング」という言葉が分かりやすいだろうと思って使っているんですけど、僕が皆さんに言っているのは「人間は生きている以上、人生そのものがヒーリングであって、皆さんがヒーラーである。だから特別なことじゃない」ということです。

___なるほど。「ヒーリング」という言葉は、一般名詞になってきていますものね。

 ちょっと怖いのは、先入観が強くなってしまっていて、たとえば「ヒーリング・ミュージック」というと非常にメロウな癒しの音楽だという固定観念があるんだけど、僕は全くそうは思わなくて、ロックであったりジャズであったり、その人がどう感じるかなんです。
 英語で言うと「inspire」という言葉に近い感覚です。「その人が生来持っている生きる力に気づく」という感じです。
 それは何かと言うと、例えば美味しいコーヒーを飲んで「あぁ」と思ったり、夜疲れて帰りがけに寄ったバーで、そこのバーテンダーさんがカクテルをいれてくれたり。
 美容師もそうですよ。何かを与えるんじゃなくて、逆に髪の毛を切って取っちゃうんですが(笑)
 取るというか、浄化、循環させていく方ですよね。新しい自分を見せる、その人を主人公としてその人を引き出してくる、気づかせるっていう、そのお手伝いというかキッカケ作り。そう思えば、どんな職業も素晴らしいヒーリングでありヒーラーであると思うんです。

___もともと持っているものを引き出すということは、解決方法は各々がもともと持っているということでしょうか?

 各々の中に持ってますね。
 よく「エナジー・ヒーリング」とか言ったりするように、エネルギーを与えたりするような、そういった「与える」ということも素晴らしいことだと思うんですが、僕がやっているのは、その人が抱えてしまっている本当はいらないようなものを「捨てる」ことを手伝うようなことなのかも知れない。なかなか捨てられないのが今の人間ですから、取るとスッキリして、見えてくる。

___「浄化」みたいな言葉も当てはまるかしら?

 そうですね。「浄化」というと、お水もそうなんですが、どんなキレイなお水も流れがなくなるとと汚れていくわけで、そうして汚れたお水を身体の中に持ってしまうような状態が「病気」なんです。
 そもそも人間みんな病気だと思うんです。その病気を自ら癒していく、その時間を与えられたのが人生なんだと思います。
 ですから、なかなかそれに気づかない時に、「こんな感じじゃない?」というのを少し感じてもらう。それで、自分の中に溜まっていったものが流れたり動いたりすると、すごく心地よく感じる。

Wonderful Life


___Maxさんはそれを具体的にどういう方法でなさるんですか?

 それは相手によって変わりますね。例えば音楽であったり、身体に触れたり、会話もそうだと思うし、本当に予想がつかないですね。自分自身、いつも新しい発見です。やっていて楽しいし。
 「ヒーラー」というと、いわゆる何かの霊が、とか言う人もいて、そういうこともあるかも知れないですが、あえて僕はそういうことを話そうとは思わないですね。それは分からないままでいいんじゃないかな、と思う。分かっちゃったら人生つまんないんじゃないかな。
 ハワイ島にいて、ちょっと離れた所から今の日本を見ていると、みんな誰かに教えてもらったり決めてもらったりし過ぎるように見えることがある。「それで人生おもしろいのかなぁ? 本当はちょっと違うんじゃないかなぁ?」と思って、それで日本に来るわけなんです。
 僕は、ハワイにいる時はマウナケアという山でガイドをやってます。そして山に上がるけど、いつも分からないんですよ、今日の夕日がどんなものか、今日の星がどんなものか。もちろん、ある程度の予想はつくけど、やっぱり分からないわけですよ。それが面白い。その場その場で感じることが驚きだから、すごい喜びになるわけで、しかもそれは自然のものだし、他人から「こうですよ、ああですよ」って言われるものじゃないんですよね。
 「人生はwonderful」ということ。「wonderful」とはどういうことかと言えば、不思議(wonder)が満ち溢れてる(full)っていうことだし、「I wonder 〜」と言うと「分からない」です。分からないから面白い。
 それを思い込みで決めつけていたり、自分で分からないから他人に聞くという方向では、「日本、大丈夫?」って感じてしまう。

ハワイに降る雪


 みなさんはハワイと言うと暖かい常夏の島だと思ってる。私たちは常冬って言う。寒いんですよ(笑)雪が降るんです。みんなビックリするんだけど、ハワイで雪が降るんですよ!

___標高が高いんですよねぇ。。

 毎日0Mから4205Mまで上がりますからね。そこに行くと、寒い時はマイナス10度。だからみんなビックリするんですよ。

___山頂までハイウェイが走ってるそうですね?

 ハイウェイではないですが、山頂まで車で行けるんです。山の形状がなだらかなので、とても富士山より高い山とは思えない。途中は四駆でしか行けない砂利道になるんですが、そこまで行くと、そこは森や林が全く育たない森林限界域、ツンドラ気候という世界で2番目に寒い所なんです。
 ところが、寒くて雪が降るべきマウナケアに、この数年、雪が降らなくなっちゃったんです。極地にいて自然に接していると、地球の温暖化ということを肌身で感じるんです。目に見えて分かる。去年からは、全く雪が降らなくなっちゃった。スキーが出来なくなっちゃった。
 「マウナケア」の「ケア」は「白い」という意味で、雪が降るから白い山。そのマウナケアが「マウナケア」じゃなくなってきてしまった。それは、5〜10年前から徐々に言われてきたのが、ここまで顕著になってきた。雪が降らないことによる連鎖反応、つまり雨がない、水がないわけですから水が枯れて行く。
 だから今気になっていることは、やっぱり環境問題だったり、地球温暖化ですね。「ヒーラー」と言いながら、ほとんどの話が今そこに割かれています。

___そういう解決も、やっぱり一人一人の中にある、、?

 中にしかないですね。間違いなく。一人一人の生き方の問題ですよ。
 「自然」のことを自分から切り離して、まるで自分の問題でないような外のことに感じるけど、私たち自身が「自然」であって、自然の中に生きている。そこを感じて欲しいし、気づいて欲しい、ということが究極の自分のヒーリングなんです。
 どこか自分が傷んだりしていて、そこに気づかなくなってるというのが一番の病気というか、一番癒されなきゃいけないところなんだと思うんです。
 マウナケアは世界でもっとも星がキレイに見える所で、すばる天文台をはじめ世界中の天文台があって、僕も天体観測します。望遠鏡でいろいろな星を見せたりして、星座の話をするんです。その時に「宇宙」の話をすると、みんな宇宙って遠く彼方のことだと思っちゃうんですよ。僕たちが立っているこの地球も星の一つだ、ということを忘れちゃってるんですよね。宇宙旅行に行きたいと言うなら、「はい、ここが宇宙ですよ」って。(笑) それを気づいてないんですよね。
 どうして気づかなくなったかと言うと、例えば都会で忙しい生活をしてると、沈む夕陽を見たり、上る朝日を見たりすることを忘れちゃう。沈む夕陽を見ると、地球の自転を感じるわけなんですよ。「あ、動いてる」っていう変化する自然を感じるんです。そういうことを体感することがとても少なくなっている。それを感じてもらいたい。
 宇宙の中にいて、自分たちが宇宙の一部なんだ、という、それを忘れたことが、おそらく人間の病気の始まりなんじゃないかな、って思うんですよね。今、ココが、宇宙なんですよ。

「自由」という意味


 僕が伝えたいのは「自由」なんです。完全な自由っていうのは、この世の中で身体を持っている以上、実現は出来ないんですが、それでもいいんです。ところが「自由」という意味を、困ったことに皆さんが知らない。

 実は、「自由」という言葉は最近の日本語なんです。明治維新の頃に、福沢諭吉さんが作った。「これから英語を教えなきゃいけない」と辞書をつくった時に「freedom / liberty」に該当する日本語がないので、彼が中国の漢文にあった「自由」を当てはめた。

 けれど、先日ジャーナリストの方とも話したのですが、これは誤訳だと思うんです。
 西洋の「freedom / liberty」って、意識が外に向いている。例えば、肉体からの自由、会社からの自由、「free from 〜」何々からの自由、って。
 これは、本当はあり得ないんです。

 さて、この「自由」は本来どういう意味かと言うと、それが「宇宙」の存在、って話と繋がるんです。
 このことは、なかなかアメリカ人には説明し難いのですが、かえって日本の人には説明しやすい。

 「自由」の「自」は「自分」の「自」ですね。
 ポイントは、この「由」という字なんですよ! 「由」にサンズイ(藷ム)をつけると「油」ですよね。ここに容器があって、その容器に入った液体が「油」なんです。
 では、このサンズイ(藷ム)を取るとすると、この中の水も取ります。すると「空の器」なんです。空っぽの状態なんです。自分を空っぽにすることなんです、「自由」というのは。
 だから、何々からの自由、というのはあり得ないんです。逆に言うと、自分の執着心を取り除くとか、自分を空にすること、それが「自由」という意味なんです。

 「由」は中国では、「源」を意味します。エネルギー源、源泉のことなんです。
 ところが、みんなは「エネルギー」ばっかり気にして「源」には注目しない。オーラのことばっかり話題になるけど、そんなのどうでも良いんです。自然に出てくるものなんだから。
 それよりも、大切なのは「源泉が自分の中にある」と気づくことなんです。それは何かと言えば「空っぽ」なんです。

空のコップ


 コップって、空じゃなきゃ使えないんですね。空で初めて役に立つ。
 よくみなさんが「私、いっぱいいっぱいだから」って表現する。いっぱいいっぱいだったら、もう入ってこないですよね。空じゃないと、必要なものも飲めない。
 どんなにキレイな湧き水も、欲張って取っておけば、一週間後には腐ります。でもそれに執着して、そのまま次に必要なものを飲むとする。そうすると、腐ったお水と新しいお水が混ざって、それを飲んだら当然病気になりますよね。それが今の現代人のあり方なんです。空っぽに出来ないんです。手放せないでいる状態なんです。

 本当は、捨てることは簡単なんです。ガバッとこぼしちゃえばいいわけなんですから。飲み干しちゃえばいいわけなんです。
 ところが今の社会はモノが溢れているから、得ることの方が逆に簡単なように感じてしまって、捨てることの方が大変になってしまう。
 例えば、今トマトジュースが欲しいと言えば、誰かが車のエンジンをスタートさせて、ガソリン代と時間を使って、スーパーマーケットに行ってお金を払って買って来て、また、そのトマトもどこかで収穫されたものが入って来る。。
 得ることってすごく大変なんです。

宇宙について


 空っぽになった状態、これが、僕が言おうとしている「宇宙」なんです。
 「宇宙」という字。ウ冠(宀)は「空間」を意味するんです。「家」とか。「宇」も「宙」もそう。
 「宇」の字の「于」は「刀」の意味で、大きな刀を空間に入れて、宇宙の大きさを表すものなんです。
 じゃ「宙」の字は何だろう、と言うと「自由」の「由」がありますよね。これは空間に「由」を持っていることなんです。それは何か、と言うと「空っぽの器」なんです。「源泉」なんです。

 つまり、人が自由になったら、このエネルギーは無尽蔵に、尽きることなく湧き出流るものなんです。または、外から受けると言うのも良いですよ、器なんだから。どんどん入ってくる、必要なものが。
 空っぽになることの大切さ、つまり源泉を持ってるのが「宇宙」で、それが自分の中にあるんだよ、っていうことが「自由」なんです。

繰り返すこと


___具体的な第一歩としては、どういうことを心掛けたら良いでしょうか?

 じゃぁ「自由」ってどういうことなのかと言えば、人の生き方の問題なんです。
 まず体で感じることなんです。身体で感じて、頭で考える、そして、体で行動する。それを繰り返せばいいんです。
 そしてまた、その結果に感じる。体は正直だから感じるんです。その感じることを忘れない。そしてまたそこから考える。そしてまた行動する。
 これを「reaction / リアクション」と言うんです。「re」繰り返す、「action」行動。

 これ、 実は、宇宙の始まりが「リアクション」なんです。「リアクション」というのは「核融合反応」のことなんですよ。
 宇宙って、始まったとき水素しかなかった。その水素の核融合反応から宇宙が始まった。水素とヘリウムが核融合反応を起こしたことで、いっぱいの物質が生まれたんです。
 宇宙が生まれた時は、星が一個もなかったわけですよね。宇宙空間が「リアクション」とともに「インフレーション」というのを起こして、宇宙が膨張して、小さかった宇宙がブワァーッと大きくなって行くわけなんだけど、もともと何もない真空じゃなくて、物質でいっぱい満たされていた。そこに星が生まれるわけなんです。
 この「リアクション / 核融合反応」で、星が生まれ、星が死ぬ。そして、爆発してまた新しい物質が生まれる。そしてまた星が進化する。宇宙はその繰り返しなんです。

 今、星が爆発することを「死ぬ」って言ったけど、この「死ぬ」ってことをみんな怖れちゃうんです。分からないから。
 分からないから素晴らしいのに、分からないことに怖れを抱いてしまう。死ぬってことは、終わりじゃないんですよね。
 星も、爆発して終わるんだけど、ひとつの星からブラックホールと星間物質と呼ばれる物質たちに大きく分かれて行くんです。そして、ここからまた新しい星たちがいっぱい生まれて、進化をしていくわけなんですね。(ブラックホールからまた新しい宇宙が生まれるというのが、最新の宇宙理論なんですが。)
 これ、素晴らしいことなんですよ!「死ぬ」って。つまり「進化」なんです。
 ひとつの星から、いっぱいになる。

分からない/wonderful


 だから人間も同じなんです。
 僕たちは、未来のことって分からないでしょ。10年後の自分、明日の自分、予想はある程度つくけど、裏切られますよね。分かった気になちゃう。知ったかぶりしちゃうんです。知らなくていいのに。(笑)
 第三者が断定することなんて出来ないですよ。「あなたはそうですよ、こうですよ」と占い師に頼る必要なんて全く無い。分からないことが素晴らしい、というのが「wonderful」という言葉なんです。分かっちゃったらつまらない。

 ほとんど分からない人生で、ひとつだけしっかり分かっていることは、「死ぬ」ことです。それは、神からの(一つの人生で)最後の贈り物なんです。だからこれは怖いことじゃない、素晴らしいことなんです、ご褒美なんです。
 人間って、分からないと不安になってしまう。知らないと怖れちゃう。だから宗教が必要だったのでしょう。宗教は「こうだよ、ああだよ」って、人間を不安から救おうとする。ある時までは、それで良かったと思う。

 あとは、その人次第です。その人自身が感じることしかないんです。あなたが僕と同じように見えているか比べられないし、分らないし、だから分からないままでいいんです。
(つづく)



18:00:00 | milkyshadows | |
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