Complete text -- "波乗りと自然農のヨガ的関係"

09 March

波乗りと自然農のヨガ的関係

artist file "tanebito" #14 [2/3] 
野見山 文宏 さん(生理解剖学講師・鍼灸師 / Unplug-lab Japan

100%の自給となると凄くハードルが高くなりますけど、
「その時は買えば良いじゃない」という緩さ、それもバランスだと思うんです。


___伊豆の暮らしはいかがですか?

 気持ちが良いですね。ちょうど今、ようやくその心地良いバランスが取れている感じです。

___農業もなさってらっしゃるのですね。

 自給用の畑なので、自分たちで食べる分だけです。「農業」と言っちゃうと、トラクター買って、とか。(笑)全然そんなのじゃない。
 以前は頼まれたりして送ったりしていたんですけど、最近はごく親しい人にしか送らないし、その為にとなっちゃうと、やっぱり余計なことをしちゃうんですよね。ちょっとでも見栄えを良くしようとか。

___一日の平均的な時間割としては、どのくらいの時間を農作業に費やされるのですか?

 農繁期や種まきの時期は、一週間のうち3日間くらいは畑に行きます。冬場はほとんどすることがないですし、そんなに手が掛からないですから、1週間に1回とか、収穫をするくらいかな。
 だから均して言うと、1週間のうちの2日くらいのペースじゃないですかね。

___と言うことは、例えば週末だけの農作業で自給は賄えるということでしょうか?

 もうそれで簡単にやって行けると思いますよ。
 もちろん、お米も野菜もって100%の自給となると凄くハードルが高くなりますけど、「その時は買えば良いじゃない」という緩さ、それもバランスだと思うんです。自立自給と、何かに頼る、というバランス。8:2くらいです。米は送ってもらってるから6:4くらいかな。それくらいが僕らにとって心地良いバランスですね。

___お米となると、一人では出来ません。

 そうなんですよ。例えば農薬のことも、僕が畑を借りている所は地域でまとめて水や農薬の管理をしているので、自分たちだけ無農薬で作りたいと言ってもなかなか難しいらしいんです。

___他の時間は、サーフィンもなさってらっしゃる。

 だいたい、波が良いとかお天気で海が気持ち良ければサーフィンに行きたいし、あまり波が無い時は畑に行けば良いし、そんな感じでやってます。車で40分〜1時間走ると、コバルトブルーの海が待ってます。(笑)
 サラリーマン時代は茅ヶ崎とか行ってましたけど、今湘南は混んでるしね。伊豆はその点、ピースフルに心穏やかに出来ます。サーフィンは、人とも自然とも争うことなくやりたいですよね。その為の時間ですね。

___湘南ではビーチクリーンのキャンペーンなど盛んですが、この辺の海はいかがですか?

 相当みんな頑張ってビーチクリーンをしていて、それでようやくそれなりのキレイさを保っているという感じです。僕らも毎回サーフィンの後ビーチクリーンするんですけど、それでもゴミが多いですねぇ。ビニール、プラスチック、、凄いですよ。

自然農の畑もサーフィンも同じ感じです。
究極は何もしないことかも知れません。それで見ていることが出来る「器」と言うか。


___サーフィンの為に体を鍛えたりなさってますか?

 まぁ、ヨガやったり、ですね。サーフィンとヨガって相性が良い感じがする。やっていることも同じだと思いますね。サーフィンもヨガであり、瞑想であり、ということだと思います。畑もそうです。自然農の畑もサーフィンも同じ感じです。

___「自然農」というのは、あまり世話を焼かないやり方だそうですね。

 出来るだけ介入しなくて、育っていればそれで良い。例えば、種をまいて芽が出た頃ってまだまだ弱いから、ちょっと何かを世話してあげたりしますけど、出来るだけ外からの介入を少なくして、自然の力とか野菜の力を引き出してあげようという考え方です。
 ちょうど「エッジ」を作り出しているんですよ。

___「エッジ」?

 つまり、僕たちが介入してコントロールすることと、野菜や畑の自然の力、自発との、その「エッジ」です。コントロールし過ぎると無味乾燥な畑になっちゃうし、かと言って全部を自発に任せていると、やっぱり野菜も育たなかったりする訳です。だからその中間点、ちょうど心地良いところを見つけて行こうという感じです。
 究極は何もしないことかも知れません。それで見ていることが出来る「器」と言うか。。(笑)
 最初の頃はかなり世話してましたね。甲斐甲斐しく。それが段々分かって、「これでも大丈夫なんだ」と信頼感が出来て来る。そうして段々と、自然のままに任せようという感じになってきました。

___そのスタンスがヨガに通ずるということですね。

 そうです。
 サーフィンもそうだと思います。人間の力で「こっちへ行こう」とするコントロールと、波の力に委ねることと、そのバランスだと思うんですよ。そんなことを通じて、自然の力を信頼出来るようになってくる。コントロールを手放せるようになってきた気がします。頭で考えるんじゃなくて、何回も何回も繰り返して、実感して。
 同じことを、僕はヨガでも学んでいる気がします。

体が動いていると自然に出て来るんじゃないですかね。
頭で考えるのではなくてね。


 自分のしてるワークショップも「ファシリテーション」と言えばいいでしょうか。どっちかと言うと僕も講座自体をコントロールして一生懸命伝えようという、「僕が伝えたい!」という想いが先になっちゃうんですけど、そうじゃなくて参加者が自ら感じてもらう、気づいてもらう。特にシェアの時間を多くすると、すごく変わりました。

___感じたことや気づいたことを「シェアする」という作業は、最初は戸惑う方が多いのでは?

 慣れていないと、そうかも知れません。

___それを、ワークショップの中ではどのようにリードなさるのですか?

 体が動いていると自然に出て来るんじゃないですかね。話だけの講座だと、いきなり「シェアしましょう」と言われても無理に作って喋る感じでしょうけれど、体が動いた後だと自然に出て来る気がしますね。頭で考えるのではなくてね。

___体の感覚はリアルですものね。

 そう思います。
 もちろん頭では分かっているし、体験からも分かっているけれど、特に今回は「コントロールを手放す」ということを、身をもって、腑に落ちるというのが良かったですね。

___その後は、体を動かす時間を多くなさっているのですか?

 もともと『生理解剖2』という講座はほとんど動くような講座なんです。ですから、体を動かす時間を増やしたというよりは、シェアの時間を増やした感じです。僕もすごく楽になりました。(笑)
 それまでは、一生懸命やり過ぎて、終わった後放心状態になる感じだったんですけど、それが無くなりました。楽しいですね。

___それはサーフィンで波に乗るような感覚なのでしょうか?

 まさにそうだと思います。あれだけシンドイことをやっていても疲れないですからね。
 サーフィンを客観的に考えたら、2時間も3時間も泳ぎっぱなしで、しかも足を使わないで手だけで泳いでいるようなものですからね。結構大変なことをしているはずなのに疲れないですからね。よく似てますね。
(つづく)



[野見山 文宏 さん / プロフィール]

1966年、神戸市生まれ。
某大手銀行に就職後、全国トップセールスに輝くほどに都会でのサラリーマン生活を極めるが、1998年、過労で倒れたことを機に「生きること・働くこと」の意味を考え、退職。東洋医学を学ぶべく鍼灸師へ転身。地球環境や有機農業などを含め大いに学ぶ。
2001年、ホリスティックな治療を学ぶべく、伊豆/安らぎの里へ夫婦で就職。治療と同時に、ヨガ・食養生・呼吸法などの指導を担当。
2005年、「unplug」によって人は変わることをつたえたくて独立。塩見直紀氏の「半農半Xという生き方」に大いに感銘を受け、自然農の畑で食糧を自給しつつ、後の半分は魂の輝く仕事をしようと「里山リトリート」をスタート。
2006年、「日本一わかる!生理解剖学講座」を全国で開催。自然やカラダの素晴らしさを伝える。
 
18:00:00 | milkyshadows | |
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