Archive for 01 July 2007
01 July
放送時間変更のご案内
FMおだわら(78.7MHz)の放送スケジュール改編にともない、7-9月期の放送時間が以下の通りに変更されました。soulbeauty.net
[放送時間] 毎週日曜 17:00
[再放送] 翌月曜深夜 25:00
⇒ 詳しくはFMおだわらまでお問い合せください
2007年7月〜9月期タイムテーブル
身近にある花
artist file "tanebito" #03 [4/4]
土屋 譲 さん(打楽器プレーヤー)
土屋 譲 さん(打楽器プレーヤー)
土と夕陽
___これからも演奏活動は小田原をメインでなさるんですか?
そうですね。
僕は今、小田原東通りのSPATSをいうライブハウスでミュージック・コーディネイターをしています。そこで、Jazzの大先輩や、これから活躍して欲しい若手のプレーヤーをたくさん呼んで、セッションをしていこうと思っています。
___音楽を通じてネットワークをつくる?
ミュージシャン同士ではネットワークは出来ているんですが、もっともっと広がって行ったら、と思います。
後はもう、僕の目指しているのは「自然」ですから、人も自然に集まると思っています。自分が愛する「自然」というものがあって、それを大事にしている人間であれば、自然と僕の所には来てくれる。
いつも僕は「待ち」なんですが、それで良い人たちと巡りあっているので、それが「自然」かなと思ってます。
___「自然」の中で、リズムセクションとしての立場はどう感じていますか?
自分は「土」かな。「海」にはなれない。名前が「土屋」だから(笑)。
___「土」として「畑」のように育んでいるものがありますか?
瞬間瞬間でいろんなことがあって、その日に感じた事や、過去からずっと思っている事もシンコペーションしてますから、それを全部含めて、僕は演奏の中に取り入れて太鼓を叩いています。だから、何が起こるか分からないですよ。
___毎日の夕陽の色が違うみたいに。。
そう!
毎日同じ人はいない訳だから、毎日同じ演奏をしていたらオカシイんです。だから、その日の自分に素直に演奏することがミュージシャンなんだと、僕は思います。
___お客さんも一期一会の音を聴く。
だと思います。
それを楽しみにしてくれる人が多いので、それが僕の励みにもなるし、楽しい演奏を聴いて帰って欲しいので、精一杯ふりしぼって演奏してます。
全部 脱ぐ
___それが「プロ」?
聴いている人が「今日は良かった」って言って帰ってくれれば、演奏者がプロでもアマチュアでも関係ないんですよ。境目がどこかにあるとしたら、心の中の「自分はアマチュアだからここまででいいや」っていうような思いだけかな。
僕自身は、自分がプロだと思っている以上、とにかく自分にあるものを出し切ってハダカになる。太刀打ち出来ないほど素晴らしいアマチュアの人もいっぱいいるので、アマチュアの人が最後にパンツ穿いているとしたら、自分は全部脱いでもいいかな(笑)。
___自分のコンディションを高めていくために心がけていることはありますか?
全然ないです。(笑)
昔は恋愛をしなきゃいけないと思った時期もありましたが、ホレっぽくて想い込んじゃって、最後はいつもフラレて最悪なので、それはヤメました。(笑)
それでも、「音楽」という道は自分とは関係なくあるし、どんな状況でも演った音は素直に返ってくる。
演奏してる店で、いろんな方と話をします。年配の方も、僕に話しかけてくれる。それが嬉しくて、そんな時は僕も一生懸命に話します。アツ過ぎちゃうのね。
そこで「オマエ、もうちょっと冷静になれよ」と無言で言ってくれたのが「自然」です。
叩けば音は出る
___土屋さんにとって「自然」というのは大きなキーワードですね。
うん、重要ですね。
朝起きてドアを開けた瞬間に、鳥が「チュンチュンチュン」と鳴くだけで、もう「参りました」ですから。それだけの力を「自然」は持っているんです。川の流れや、空気の匂いだとか。すべてが漂っていて、それを感じちゃうと、音を出すのが怖くなる。
___そのうえで、今の地球や社会に対して、ミュージシャンとしてどんなメッセージを送ろうとしていますか?
僕にとっては、目の前で生きている花を感じること。それが「宇宙」だと思うんです。それを感じられない人には、デカイことは感じられない。
音楽も同じで、小さなことから始まるんです。ドラムセットが無くても、その辺を叩けば音は出るでしょ? 「音」ってそういうものなんです。「ポーン」と叩いて、「なんでこんなに響きが良いんだろう」とか感じる。それを拡大すればいいんです。
身の回りには「小宇宙」があるので、それを感じていれば、小さいところから始まると思います。
身近にある花
___一リスナーとして思うことですが、どうしてもっとたくさんの人に聴いてもらおうとなさらないんですか?
(笑)
店に来て聴いてください、って思います。それが一番生き生きした演奏が出来ているから。
僕は、特別有名になりたいとか、すべての人に聴いてもらいたいとか、あんまり思わないんです。まず小田原でも出来ていないのに、東京だとかNYだとか、どこへ行っても無理でしょ。
さっき言った「身近にある花」と同じです。どこかへ行けば何かが成り立つ、という考えではないです。
例えば、僕は小田原で演っていて、日本でも力のあるプレーヤーが来てくれています。それでも、小田原の人は知らなかったりするし、有名な人が来れば良い演奏という訳でもない。要するに内容なので、僕が演奏をまとめて行けば良いし、そういう意味での自身はあります。僕が、呼んだプレーヤーの心を動かして、演奏に変化を出して行けばいい。演奏が終わって、「違う体験をした」と言って帰ってもらえれば御の字じゃないですか。
___「コーディネイター」という立場なんですね?
コーディネイターなんだけど、俺だって冒険しています。無理矢理でなく、自然にね。
相手も予測をしない状態で来ているから、帰る時に「え!こんなヤツもいるんだ!」って思って帰ってもらえればいい。
___小田原に呼ぶミュージシャンは、どのような繋がりなんですか?
木と同じなんです。枝分かれしていて、誰かが誰かを呼ぶ。ミュージシャンの繋がりってモノ凄いんです。一人に電話すると、1時間で100人に繋がるくらい。
そうやって知り合って、信頼し合って、どんどん増えて行く一方です。
___逆に誘われて出て行って演奏することもあるんですか?
もちろん、そういう時は行きます。
僕は今までもほとんど小田原にいて、今は任されている店もあるので、出て行って知り合った人を小田原に呼んで演っています。一番やりがいを持って演っている店なんです。
「子ども」と「生活・文化」
journal & report [1/2]
NPO法人 子どもと生活文化協会(CLCA)
NPO法人 子どもと生活文化協会(CLCA)
「子ども」と「生活・文化」
___CLCA「こどもと生活文化協会」という団体名でらっしゃいますね?
「子供は未来を担う」という意味で、子供たちを元気良く、大人も子供から教わることがたくさんある。そういう思いと、「生活」というのがウチの一番のテーマです。
「生活には、教育的要素がすべて含まれている」という考えがありますから、何かを取り出してその事だけ勉強しに学校に行くとか、専門学校に行くということが教育とは、あまり、、、
もちろんそれも教育の一つだとは思いますが、「生活」の中で学ぶことはたくさんある、という考えですので、とても「生活」を大切にしています。
「文化」というところでは、新しい文化を創造していきたい。昔からある優れた伝統的な文化は、もちろん皆の中にベースにあると思いますが、できればそこから新しい発信を、時代とともに変わって行くその時々にあった新しい文化を皆で創造して行きたいと思って、こういう名前がついています。
___『あやもよう』という冊子を出してらして、「生活というものが今、とても分断されている」という問題意識が前提にあるようですね。
人間の身体も、全部で一つじゃないですか。でも病院に行くと、眼科だとか耳鼻科だとか胃腸科だとか分かれています。だけどそこ一カ所だけ診ても、全部繋がっている訳で、どこか一つ故障してそこだけが悪い訳じゃない。全体を見なくちゃいけない。
人間の身体もどこか一つ切ってしまえば、腕一本切っても死んでしまう、それと同じことが社会全体、どこかが切れてしまえば社会は発展しないし、元気がなくなっていく。
___「生活」を取り戻そう、というアプローチなのでしょうか?
たとえば『三丁目の夕日』みたいな、昔の三十年代が良い生活だった、という風なこと言っている訳ではありません。この時代に合った生活の取り組み方を皆で見つけて行って、新しい繋がり方を創りましょう、ということなんです。
昔はお父さんもだいたい5時とか6時には帰って来て、お父さんの方が偉くって、オカズも一品多いとか、TVが茶の間の王様、みたいな感じの生活に今から戻れないじゃないですか。
今は今の時代で、子供達も塾に行ったり、女性も働くようになったり、という社会の中で、そうなった為に切れて行った部分が多いんです。でもこの社会の中でもう一度繋がるにはどうしたら良いんだろう、ということに取り組みたいんです。
「生活体験合宿」
___具体的にはどのような活動をなさっているんですか?
まず一番大切にしているのが「生活体験合宿」という、「生活」をするというだけの合宿です。
普通は、イベント的にキャンプをしたり、海の家で何かしましょうとか言うのですが、ウチの場合はただ「生活する」という合宿を月に一度、丹沢の寮で行っています。
___何名くらい参加されるんですか?
多い時で100名くらいです。子供だけでなく、赤ちゃんから大人まで。必ず大人と子供が一緒に、というのがウチの活動の一大特徴だと思います。
普通はそういうキャンプをする時は、年齢を限定して同じような人を集めるのですが、ウチはどんな時でも社会の縮図でいたいので、必ず大人と子供がいて、お互いに対等に学び合う関係を、合宿の中で学んでいってもらいます。
___イメージが湧きませんが、どんな一日の流れなんでしょうか?
築130年くらいの古民家があるんです。それが合宿所の中心で、土間があって、竃でご飯を炊いたり、薪でお風呂を沸かしたり。
あと、ウチは山から皆で木を伐り出して家を作るというようなことをしますので、そうして建てた家が5棟ある施設なんです。そこに、最大100名。だいたい60〜70人の暮らしが始まるんです。
受付をして、それぞれ部屋へ分かれて。家族で一部屋ではなく男女に分かれて、小さいお子さんをお持ちのお母さんの所には何回も参加したことのある女性が入ったり、子供達のグループでしたら、高校生や中学生の子がリーダーになってチビちゃんのグループに入るというふうに部屋割りをして、そこでその日が始まるんです。
必ず太鼓が合図なんです。太鼓が鳴った時は何をしていても絶対集まるんです。自分が何か用事をしていても、とにかく太鼓は絶対。
___太鼓が鳴る時は、何か緊急事態なんですか?
生活者全員が集まって「ちょっとこれを決めよう」とか、食事や起床の合図です。全員がとにかくその太鼓のリズムにしたがって行くという。
決まりと言えばそれくらいですね。
___薪を拾ってくるところから始まるんですね?
材木屋さんに廃材をいただいて来て、それをちょうどいい大きさにして薪につくっていくんです。
いろんな作業工程があるので、力のある人はどんどんやって、やった事のない人や出来ない子どもたちはそれを見て育つ。そういう環境をいつもつくっているんです。
___そう考えると「生活」の中には果てしなく仕事がありますね。
ありますね。
___それを、大人も子どもも分担して取り組んで行く。
そうです。
___それは豊かな体験ですね!
キャンプだと、出来ない子も全員が同じ体験をするじゃないですか。「薪割りの体験をしましょう」って。でも、ウチは「生活」なのでそういうことはしないんです。出来る人しかやらないんです。
遊びでやっているのではいつまでもお風呂が焚けないじゃないですか。ご飯も炊けなければ食べられない訳ですから、キチンと60人なりの人が満足して食べられるように、炊ける人しか炊く係にはなれない。出来ない人がいくら手を上げても、させない。
それが、小さい子なら「炊けるようになりたい」と憧れを持つ。それが循環していくんです。小さい時にそう思っていた子が、ある年になって、見て覚えて炊けるようになって、初めて手を上げて係を任せられる。その時には、それまでやっていた大きい子が必ず横に着いている。そうやって皆が育って行くんです。
___なるほど。文化って、本来、そうやって受け継がれていくものですものね。
異年齢と大人達との生活の中で、やりたい事を見つけて、やってみたいという憧れや目標を持つ。それが「生活」の中に全部あるので、無理がないんです。
___中にはそういう意欲や意志がない子もいるんでしょうか?
そういう子はそういう子で、何か他にやりたいことを見つけます。例えば「自分は本を読んでいたい」とか。
___それはそれで認める?
そうです。やってはいけない事は一つもないんです。
必ず皆の前で「こういうことをしたい」と自己申告をして、生活者全員がそれを認めたらOKなんです。作業をしないで本を読んでいたら「悪い」ということではなくて、皆の了解が得られればOKなんです。
そういう時には、経験のある指導者がグッと押したり、「そうしていれば」と言ったり、微妙な判断を含んでいる事もあります。
「子ども能」
___「子ども能」ということもなさっているそうで、子どもたちが「お能」をやる?
大鼓の大倉正之助さんという方に出逢ってスタートしました。
たまたま「お能」だったんですが、触れてみたら素晴らしくて、しかも、やって行くうちに子供たちにとって重要なことがたくさん含まれていることが分かって、今度のお祭りでは舞台も作っちゃう。(笑)
___それは、合宿の時のように大人も子どもも一緒に取り組むのですか?
そうです。
「お能」をするにも「生活」がとても大事で、やはり生活を共にして、同じご飯を食べて同じに寝るという仲間が、こういうものをつくる時に、本当に一体感を持って行ける。
また、お稽古に来た時だけの関わりではないので、子どもたちの癖や個性など、状態がすごくよく分かるんです。その子にとって、今はお休みした方がいいとか、加減も分かるので、一緒に生活することは指導して行くうえで効果をあげていると思います。
___舞台には何人くらい出るんですか?
「前囃子」という小さい出し物ですと、15人くらい。
「九頭龍」というオリジナルの「子ども能」を安田登さんという方と作りましたが、これだともっとたくさんの子どもたちが出ます。
___お稽古はどのくらいのペースであるんですか?
月に2回、三の丸小学校のふれあいホールをお借りしてお稽古しています。
その中で、合宿稽古をやっています。強化合宿ではなくて、ご飯を作ったりお風呂を湧かしたり、その中でたまたまお稽古があるという感じです。そうした作業の方が、実は大事だと思っているんです。
___子どもさんたちの反応はいかがですか?
すごく良いと思います。(笑)
___何年くらい続いてるんですか?
今年で9年目になります。文化庁からの助成金をいただいていて、年に一回、3月に発表会をしています。
その間も、いろいろな所に呼ばれて出させていただいています。子ども達にとっても、いろいろな所に行けますし、そこでまた新たな交流も生まれて、良い経験をさせていただいてます。
___その道に進むお子さんもいたりしますか?
不思議と、それはないんですよ。(笑)
逆に、こういうことの経験の上に立って、自分なりの道を見つけています。大学を受ける時でも、ただ漠然と行くのではなく、しっかりと見えていて、別な事に進んでいます。
そこがウチの面白さだと思います。とにかく、いろんな体験をして欲しい。その為のメニューをたくさん用意することがとても大事だと思っています。