17 August

「ケ」のジュエリー

artist file "tanebito" [Archives #4] 
藤沢 泉さん( izumi ジュエリー・シマノ


___『アクセサリー・スクール』を始めてからどのくらいになるのですか?

 今年で10年になります。

___ 当初から大盛況だったそうですが、延べにすると何人くらいの生徒さんがいらっしゃったのでしょう?

 月30〜40人ですから、年400人、10年で4000人ですね。本当にありがたいことです。
 皆さんとても良い方ばかりで、どこかで繋がりを持ちたいと思いながらもその教室の時間で別れてしまうんですが、教室展やパーティをやることで個人的な繋がりも出来てきて、とても楽しいみたいですね。
 その間ずっと通って下さっている方もいらっしゃいますが、ウチは入会金もなく、コンスタントに通わなくても良いシステムになっていて、どんなに長い方でも一回一回申し込んでいただく形なんです。
 それは私にとっては厳しいことで、作品がつまらないものだったら人が少なくなるだろうし。だけどそれを縛らないで、やりたい時に自由に、という考えです。
 その人の人生において、いろいろ波があると思うんです。すごくアクセサリーを作りたい時もあるし、他のことに興味がある時もあると思うので、長い目で見ておつき合いして頂きたいと思ってこういうシステムをとっています。
 毎月申し込んでいただく方は本当にありがたいと思いますし、子育てで2〜3年休んで復帰される方もいて、それは自由で本当の形かなと思っているんです。それが長く続いた秘訣かな。
 縛らない。自由。(笑)

___生徒さんも、いろいろな体験をなさっているのでは?

 そうだと思います。
 あまりつぶさには聞かないのですが、表情で分かりますよね。自分の力ではどうにもならない、天然の石の難しさに皆さん辟易としていることがあるんですよ。(笑)
 だけど、2時間3時間やっていると、なんとか形になっていく。そうすると、やっぱり、お顔が輝きますよね。
 「本当に来て良かった」「本当に楽しかった」って言ってくださって、その顔を見せていただくと本当に私も嬉しいです。
 石の色を見たり、触ることでその温度の冷たさを感じたり、それがすごくヒーリングになるとおっしゃってくれます。「何を作る」とか「そのアクセサリーが自分に必要か」ではなくて、ただ「石を触りたい」ということで来られる方もいらっしゃいます。

___「作る」という行為の過程では、いろいろな「気づき」があったりしますよね。

 私自身、あんまり考えずに作る時と、デザインを絵に描く時と、いろいろなやり方で作りますが、天然石というのは人間が作ったものではないので、予想外のことがあります。それによって引っ張られて行くようで、スランプがないです。
 もし同じ材料を使って新しいものを生み出そうとしたら、きっとどこかでつまずくんでしょうが、新しい形のものを発見したり、自然から出た色に感動したり、思っていたものと全然違ったり、それが楽しいところですね。

___教室では、自由にやらせることとキチンと伝えることとのバランスがお上手だと感じました。

 聞いていただいたら教える、という感じなんです。
 他所の教室だったら、「先生」と呼ばれて、テキストがキチンとあって、段階を踏んで、というふうにしますけど、できるだけ私は「先生」と呼ばれたくなくて(笑)
 必要なテクニックを必要な時に体得していただくような形が「大人の習い事」なのかな、と思っているんです。

___天然石はブームですが、石選びの相談は受けますか?

 私は、その人がピンと来たものを買っていただくのが良いと思っています。自分が今欲している石を選んでいただく、そういう強さが皆さんにあって欲しい、といつも思うんです。
 ですから、石の効能とか、そういう話はあまりせずに、インスピレーションで選んでいただきたいと思っています。

___教室を始めた10年前というと、ビーズや天然石のブームより早かったのでは?

 ビーズブームが始まった頃でした。私は宝石を扱っていたので、天然石だけを使ったアクセサリーを作る講習会をやってみたらどうか、ということから始まったんです。
 ビーズブームの中で私に期待していたことは、ビーズで編むストラップやネックレスを、素材の良い天然石に置き換えて作る、というニーズだったんですね。だから初めは、天然石なんだけどカットの揃ったものを使って、ビーズで作るのと似たような技法で教えなきゃいけなかったんです。
 でも、私のやりたいのはそれとは違った。

___と、おっしゃいますと?

 天然石である以上、本来その石にあったカットにするべきなんです。例えば、トルコ石だったら、4ミリにカットしたりする必要はなくて、ただゴロゴロとした石をそのまま活かしたい。
 でも流行っていたのは3ミリや4ミリの細かい雰囲気のものだったので、ちょっとバランスをとるのは難しかったです。

___そういう意味では、時代が流れてきましたね。

 そうですね。皆さん、一通りやったと思います。(笑)
 それで今、興味があって残っている方は、もっと上のものを目指してる。そうなると、ちょうどウチみたいに天然石を活かすアクセサリー作りをしてる所へ来るとビックリして、「あ、私のやりたいのはこれだった!」って言ってくださいます。


___これからの展開については、どんなお考えですか?

 ジュエリーが今まで持っていたイメージをどこかで破壊したいような気がいつもあるんです。ジュエリーを買いにいらっしゃるお客さまは、女性だったら働いていてお金を自由に使える方だったり、男性だったら年に一回クリスマスやお誕生日に買いに来るとか、そういうイメージが普通のジュエリーショップだと思うんですけど、全く逆にしたかったんです(笑)。
 そこに情報が集まっていて、毎日寄っちゃうようなお店。

___とすると、どんな方にどんな形で広めていこうと考えてらしたんですか?

 大胆なんですけど、本当に老若男女なんです(笑)。
 カフェがあることで、3歳のお子さんにお気に入りのメニューがあったり、80歳の方も入ってこられるし、お教室もこの空間でやっています。私の思惑通り(笑)。
 これは既存のジュエリーショップには絶対ないことだと思うんです。

___ワクワクしますね!

 常識的には有り得ない、と言う方もいらっしゃいます。でも、そのくらいのインパクトが小田原には必要だと思うんです。
 「ハレ」と「ケ」ということで言えば、ジュエリーは「ハレ」だという感覚があると思うんですが、対極の「ケ」をやってしまおうという感じなんです。だから、普段は買い物をしなくていいと私は思っていて、一週間に何度でもただ顔を出す、という不思議なジュエリーショップ。
 ジュエリーと言っても、3000円のモノから100万円のモノまであって、「あなたに必要なのはダイヤモンドかも知れないけれど、同時に水晶の石ころかも知れない」ということを提案したいんです。それは、日々、毎日のように顔を合わせてお話をしていくことで分かることだろうと思うんです。

___「ケ」のジュエリーというと、どのようなイメージでしょう?

 宝飾品というと、ダイヤだとかルビーだとかサファイヤだとか、とても高い物ですから、一度買ったらずっと身に着ける。そういうメモリアルなジュエリーというのは、凄く大切で、代々伝えていくような「ハレ」の部分だと思っているんです。
 それに対して、季節季節にジュエリーがあったら楽しいと思ったのが、天然石ビーズを扱っている部分なんです。お洋服より安いかも知れない。それで、時代の気分をいつも纏える。今必要なものを、すぐに、誰でも買える。
 そのビンに入っている石は、宝石と同じものなんだけど、ちょっと濁っているというだけで10円だったりする。それは3歳の子でも買える。
 それが「ケ」だと思っていて、その部分も扱っていきたい。
 今までのジュエリーショップでは分断してしまっていて、その部分はパワーストーン屋さんだったりビーズアクセサリー屋さんだったり、宝石屋さんは別だった。私はその中間に立っていて、どちらも扱って、どちらも同等に素晴らしくて価値のある物だと思って、それが、誰でも来られるということに繋がっています。

___伝統的な宝石というと、権威的な価値観があります。

 今の時代は一つの価値観では計れなくて、個人個人価値観があるし、個人の中にもいろいろな部分があります。
 一人の人の中に、「最高のダイヤモンドを手に入れたい」という気持ちと「この石ころも素敵」という部分があって、キレイなものが好きということでは全然変わりがないと思うんです。
 自分もそうですが、ダイヤモンドを扱っていると「4C(カット・カラット・クラリティ・カラー)」を説明したりするのですが、人間はこれほど素晴らしいカットが出来るということにリスペクトがあって、それに挑戦していく力についても凄く惹かれるんです。それと同時に、何もカットされずに転がっている石の中に「キレイ」を見出すということも自分の中にあって、不思議だなと思います。
 素直になりたいですね。
 高額な宝石を売る為に、権威的な部分に自分がいなければと思って石ころには関わらないというのが、今までの宝石屋さんの考え方だったと思うんです。

___皆さんの反応はいかがですか?

 業界の方は驚いて、「何がやりたいの?」とか(笑)。でも、一般の方は「楽しい」。
 複合ショップをオープンする前、3年間、路面店を休んでビルの3階で事務所だけにしていた時期があるんです。必要最低限の仕事だけをして。
 それが良かったと思うのは、冷静に業界を見ていたんじゃないかな。何か嫌だと思っていた部分がハッキリした。不自然なことをしていた気がするんです。
 その時に、今度やる店は普通の宝石屋さんじゃないだろうな、という気がしていました(笑)。


___ジュエリーショップというと「街」と切り離せない。「街」の中での存在。かたや「スローライフ」など、「街」から離れることへの価値観がある。その辺は、どうお考えですか?

 出来れば「街」から離れたいかも知れない。
 高価なダイヤモンドを見る時も、もっと空気のキレイな所で見た方が良いと思うんです。 アクセサリー・スクールも、すごく風の入る所で出来たら気持ち良いと思う。光とか。空気感。
 ジュエリーショップというと、黒が基調でピンスポットが当たったいるような暗いお店がいっぱいありますが、私は違うと思うんです。もっとナチュラルな場所で見た方が、本当の色も分かるし、嘘がない。そういう所で見た方が良いし、選んで欲しいと思う。

___貴金属についても、「街」を離れて商売が成り立つと思いますか?

 やってみないと分かりませんが、ナチュラルなストーンの場合は、かえってその方が良いと思います。
 都会的なもの、都会にいる人が選ぶジュエリーは、少し難しいかも知れないですが、逆にそれを価値を思って買いに来てくれる人はいると思うので、やってみればまぁまぁ成功の方じゃないかと思います。

___私も美容師として「街」との繋がりはテーマなんです。流行と切り離してのファッションは有り得ないので。
 でも、「美」という精神性が経済システムに取り込まれていることに、違和感を感じています。


 私もそういう仕事に関わっていて、いつも居心地が悪いことは悪いですね。

___藤沢さんの場合は、「天然石」というのが一つの突破口なのでしょうか?

 「自分が息が出来る」というか「自然」になれるところのような気がします。高価な貴金属だけでは息が詰まるところがあって。
 でもかたや「流行」は面白いですよね。都会から切り離された所に移って行ったら、それが新たな悩みになるかも知れないですね。 流行のものを置いてもあまり意味がなくなる。

___ 最先端のものと、地に根を張るもの。 私たちが両方見れるアンテナを持って「媒介」になれば良いのかな?

 そうですね。
 あとは、「街」そのものについても考えた方が良いかも知れないですね。ココにいながら、この街がもっと自然に近づくようなことを考える。
 街の良さは、人がたくさんいて、人が簡単に出逢えたり、情報を直ぐに分かち合えたりすることだろうと思います。街角に店をつくることは、出来るだけ長い時間店を開けて、たくさんの人が入り込めるような場所をつくる義務があるような気がするんです。
 私がココにお店を出して人と人が繋がっていく場所をつくることによって、どういうカタチか分からないけども、自然にみんながこの街を居心地の良い空間にしていくような努力を協力してできるような、そういう流れがつくれたらいいと思っています。

___人が集まる場所を提供するということは、すごく大きな意義がありますね。

 それは商売をやっていく人だったら義務みたいなものだと思っているんです。
 それで私たちも生活させていただいているのですから、いろいろな人と逢う機会があって、より良い何かを生み出す力が生まれるような場所を、いつもここに作っておくということがとても必要ですよね。




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10 August

川の流れの如く

artist file "tanebito" [Archives #3] 
土屋 譲 さん(打楽器プレーヤー)

自然に生かされている。それが僕にとっては一番の深い感覚なんです。
朝、ドアを開けると、鳥が目の前の木にとまって「ちゅんちゅんちゅん」て囁くんですよ。
それを聞いた時に、僕たちが出してる音ってみんな雑音だな、って思いましたね。

___いつもドラムを演奏しながら何を考えてるんですか? 気持ち良さそうに叩いてますネ。

 考えてないですよ、何も(笑)。
 何かの為に演奏する、というのは有り得ないですね。僕は「自然」というのをテーマにしてる。ずぅっと遡って、人類がこの世に生まれる前に「自然」はあるわけですよ。海があって、山があって。人も自然に生かされている。それが僕にとっては一番の深い感覚なんです。
 僕自身、自然の中に行こうと思った時期があったんですよ。寄(やどろぎ)っていう所なんですが、そこで、山の中で暮らそうと思った。音楽だとか考えなくて。
 山があって、川があって、谷の端にログハウスがあって、「そこで暮らせば?」と言われて2年ほど暮らしたんです。丸太の間から隙間風が凄くて、寒いし。でも、朝、ドアを開けると、鳥が目の前の木にとまって「ちゅんちゅんちゅん」て囁くんですよ。その音色がものすごくキレイなんですよ。それが谷間に響くんですよ。
 それを聞いた時に、僕たちが出してる音ってみんな雑音だな、って思いましたね。

___音楽家の演奏も雑音?

 どんなに上手いクラシックの演奏家でもそこまでは行けないかな。鳥のさえずりを聞いて、僕は愕然としましたね。
 特に僕なんか打楽器じゃないですか。「こんなキレイな自然ってあるんだ」と思うと、到底追いつけないし、しばらく音が出せなくなった。
 参りました m(_ _)m っていう感じ(笑)。

___そのログハウスにはドラムセットを持ち込んだんですか?

 もちろん持ち込みました。
 実は、自分のドラミングや音楽性を変えようとして自然の中へ行ったのに、しばらくはドラムセットに向かえなかった。

___どのくらいの期間ドラムを叩けなかったんですか?

 半年くらいは叩けなかった。
 その間、情けないことに、お酒を飲んだり、川の流れを眺めながら鳥の音を聴いたり、夜はたき火をしたりして。
 本当に「自然」っていうのは無駄な音が無くて、安らいじゃう。でも、だんだんその安らぎが危険だなって思い始めたんですよ。「自分はまた音楽ができるのかな?」って。
 今感じているのは大事なことだけど、「でも俺は音を出して何かやらなければいけないんじゃないか?」って、このままボーッとしたままになってしまうこととの、精神的な戦いになりました。そして、そういうことを感じた土屋譲が良い音を出せばいいんじゃないか、って無理矢理自分に言い聞かせた。

川の流れってJazzのスイング感そのものなんですよ。
決して一定ではないんだけど、流れて行く。そして、優しい。


 そんな体験がすごく役に立っているし、音を大事にするようになりましたよ。
 例えばシンバルって金物系って言うんですけど、キンキンするじゃないですか。でも、叩いてるスティックは木ですよね。木と金属をどうやって交わらせるのか。その間に僕が入って、僕の奏法があれば、絶対に良い音が出せる。
 同じことを、僕は川の流れで感じたんです。川が流れて行く時って「ザァー」って流れて行くんだけど、よく聞くと抵抗もあるじゃないですか。海の満ち引きの音は例えばブラシを使って表現できるんですけど、川の流れってJazzのスイング感そのものなんですよ。決して一定ではないんだけど、流れて行く、そして、優しい。 
 Jazzではトップシンバルを中心に音楽が動いて行くんですが、僕はそのシンバルレガートが川の流れの如く動いて行ければいいなぁって、それをイメージして叩いてきたんです。そうしたら、Jazzだとかジャンルにこだわりが無くなった。自然に音が出ることさえ思っていれば、どんな音楽でも出来るんだっていうことが分かった。
 流れてるでしょ。毎回違うんですよ。変化してるんですよ。川だけじゃなくて、すべて、毎日が、川の流れの如く。時の流れを感じるのかな、川の流れを見ていると。

___「唄心」ということについては、自然の中で暮らすことで変化がありましたか?

 それについては違いはないですね。
 でも、昔は荒かったかな。唄ってるというよりは、単純にリズムを楽しんでるだけだった。結局は今またそこへ戻ってきているんだけど、無駄な音を出すくらいだったら暴走族と同じだろ(笑)。

___それを自己表現だからと許される境目って何でしょう?

 どんな形であれ、他人がうるさいと思うものはうるさいんですよ。ただそれだけ。そこに境目は無い。
 川の流れや、空気の匂いだとか。すべてが漂っていて、それを感じちゃうと、音を出すのが怖くなる。

目の前で生きている花を感じること。それが「宇宙」だと思うんです。
瞬間瞬間でいろんなことがあって、過去からずっと思っている事もシンコペーションしてますから、
毎日同じ演奏をしていたらオカシイんです。


___そのうえで、今の地球や社会に対して、ミュージシャンとしてどんなメッセージを送ろうとしていますか?

 僕にとっては、目の前で生きている花を感じること。それが「宇宙」だと思うんです。それを感じられない人には、デカイことは感じられない。
 音楽も同じで、小さなことから始まるんです。ドラムセットが無くても、その辺を叩けば音は出るでしょ? 「音」ってそういうものなんです。「ポーン」と叩いて、「なんでこんなに響きが良いんだろう」とか感じる。それを拡大すればいいんです。
 身の回りには「小宇宙」があるので、それを感じていれば、小さいところから始まると思います。

___「自然」の中で、リズムセクションとしての立場はどう感じていますか?

 自分は「土」かな。「海」にはなれない。名前が「土屋」だから(笑)。

___「土」として「畑」のように育んでいるものがありますか?

 瞬間瞬間でいろんなことがあって、その日に感じた事や、過去からずっと思っている事もシンコペーションしてますから、それを全部含めて、僕は演奏の中に取り入れて太鼓を叩いています。だから、何が起こるか分からないですよ。

___毎日の夕陽の色が違うみたいに。。

 そう!
 毎日同じ人はいない訳だから、毎日同じ演奏をしていたらオカシイんです。だから、その日の自分に素直に演奏することがミュージシャンなんだと、僕は思います。

___お客さんも一期一会の音を聴く。

 だと思います。
 それを楽しみにしてくれる人が多いので、それが僕の励みにもなるし、楽しい演奏を聴いて帰って欲しいので、精一杯ふりしぼって演奏してます。

もともと日本人はゆったりとした大きいリズムを相として持っているのに、
せわしないリズムに行きたがる。刺激を求めたがるんだと思います。


___人間のリズムの基本は、心臓の鼓動から来ている?

 「ドクンドクン」だから、聞こえている音だけから言ったら2つの音。

___2拍子ですか?

 でもこれは、最後まで聴くと3つになるんです。「ド・ク・ン / ド・ク・ン」という刻みなんです。3拍子。
 僕なんかJazzじゃないですか。Jazzのビートも、基本的には3つなんですよ。その中にいろいろな音符が入っていますけど、構成としては3連符を刻んでる。それが早いか遅いか、というだけ。
 それが、Rockなど8ビートのサウンドが受けている理由につながるんです。
 ヒトが持っている基本的なリズムが3拍子だから、『スケーターワルツ』のような3/4の曲は人が和むんです。で、それに逆らって、1拍の中で「タタタタ」と4つ刻んだら「アレ!?」っと思うでしょ?

___刺激的なんだ!

 その通りなんです。
 リズムの発祥地アフリカの「ポリリズム」も3拍子から成り立っているんです。奇数ですよね。8ビートや16ビートは偶数拍ですから、全然取り方が違うから刺激的なんでしょうね。だからみんながそこに惹かれるんだと思います。

___しかもデジタルな社会ですし、、

 余計にそうなんでしょうね。偶数の方がキッチリ行くんですよ、リズムも。

___あぁ、そうか、割り切れますものね。

 奇数の方が難しいんです。ゆったりしてるし。

___オーガニックなのかな?

 そういうリズムは奇数の方が出せるかな。僕の経験の中では、そう思います。自然が3拍子で動いてるとは思いませんが、自然の推移とか、自分の呼吸に逆らわないで出来る。
 8ビートも16ビートも楽しいですよ。でも 3/4の曲を演っている時は気負わなくて済むのが不思議ですね。

___Jazzのスウィング感や「シャッフル」なども、その辺の感覚なんでしょうか?

 「シャッフル」もそうですよね。子供でも分かるように言うと「お馬さんポッコポッコ」ですよ。4本の足でシャッフルで走る。(笑)
 不思議ですよね。(笑)「4」が「3」になってる。「サンバ」ですよ。
 「サンバ」って、「4」と「3」が入り乱れてる。で「どっち行ったらいいんだ?」っていうもどかしさがイイんです。どっちでもOKっていう。
 国によってリズムもいろいろあって面白い。

___そうしてみると、日本のリズムは、どちらかと言うと鼓動を感じませんね。あんまり心拍数が上がらない。

 日本のリズムは、鼓動を感じたうえで演る感じですね。イチイチひっきりなしに演るんじゃなくて、「ボーン」と出したら後は沁みて行くのを感じてる。だから、もっと大きいのかも知れない。
 もともと日本人は、ゆったりとした大きいリズムを相として持っているのに、せわしないリズムに行きたがる。そうやって、刺激を求めたがるんだと思います。自分も若い頃はそうでした。

___一リスナーとして思うことですが、どうしてもっとたくさんの人に聴いてもらおうとなさらないんですか?

 (笑)
 店に来て聴いてください、って思います。それが一番生き生きした演奏が出来ているから。
 僕は、特別有名になりたいとか、すべての人に聴いてもらいたいとか、あんまり思わないんです。まず小田原でも出来ていないのに、東京だとかNYだとか、どこへ行っても無理でしょ。
 さっき言った「身近にある花」と同じです。どこかへ行けば何かが成り立つ、という考えではないです。
 例えば、僕は小田原で演っていて、日本でも力のあるプレーヤーが来てくれています。それでも、小田原の人は知らなかったりするし、有名な人が来れば良い演奏という訳でもない。要するに内容なので、僕が演奏をまとめて行けば良いし、そういう意味での自身はあります。僕が、呼んだプレーヤーの心を動かして、演奏に変化を出して行けばいい。演奏が終わって、「違う体験をした」と言って帰ってもらえれば御の字じゃないですか。


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03 August

「いただきます」

artist file "tanebito" [Archives #2] 
白澤 秀樹 さん & 吉原 亜希 さん(ManaBurgers

「食」という字を見ていただければ、「人が良くなる」と書くんです
生き生きと豊かに生きる大きなポイントの一つだと思います。


___ 「食」という切り口で、いろんなことが見えてきますね。

(tra)
 深いですねぇ。
 「食」という字を見ていただければ、「人が良くなる」と書くんです。それで全てが解決するとは思わないけど、少なくとも、生き生きと豊かに生きる大きなポイントの一つだと思います。
 三度三度のものですし、これが本当に美味しくてヘルシーだったら、これは楽しいですよ。これだけチョイスできる時代は、今までの人類始まって以来ですし、もちろんマイナスの部分もありますが、毎日三回楽しめますからね。

(aki)
 原材料を見るっていうのも、一つの手段。
 植物性とか無添加とか大きく書いてあっても、裏を見るとねアミノ酸って書いてあって、すごくトリッキーなので、大きな表示に惑わされないように注意しましょう!

(tra)
 同じ醤油が二つあるからね。表示が適切に書かれてるかどうかも、問題としてありますね。
 磯部先生という方のおっしゃった『良い食品の4条件』というのがあって、僕はこれが一番の核になるべき物だと思っているんです。
 一つは「 安全であること」。もう一つは「ゴマカシのないこと」。それから「味のよいこと」。最後に「品質に応じた妥当な価格」。
 この四つがね、風土を超えて、本当に食べ物の4条件だと思うんです。 特に、送り手であるレストランビジネスや食品工場は、一番考えなくちゃいけない当たり前のことなんです。
 だけど、この四つを全部加味した食べ物って、あんまり無いんですね。例えば健康食品は妙に高かったり、あるいは不味いかったり(笑)
 食べ物だから、「美味しい」というのが大前提で、残りの三つがそれにくっついてくれば、一番最高だと思う。

___手軽に選べたら良いですね。

(tra)
 これからは増えてくると思いますよ。
 食べ物の世界に限らず大きく二極化してゆく中で、これから益々ファーストフードはある種の必要性を増すでしょうけど、反面、それとバランスとる為のことも益々増えてくると思うし、又そのために自分たちも仕事をしているんです。
 そういう意味では、TVで本当に正しい情報が流れているとは限らないですからね。
 ヨーグルトと味噌汁を比べたら、味噌汁の方を日本の人達には薦めたいですね。日本は発酵文化ですから、日常の中でそういうものを自然に食べれるようになってるんです。漬け物もそうです。
 発酵食品は、腸に何らかの形でプラスですからね。

(aki)
 腸で血液はがつくられてるんです。現代医学だと脊髄でつくるって言うけど、腸が「肝心要」のポイントなんですよね。
 あと、腹筋。椅子の生活や電化製品の普及で、日本人は正座をしなくなったし、床を拭かなくなってきた。その筋肉の弱まりと、お腹の「丹田」、 女の人だったら生理不順とか流産とかは関係してる。
 便秘してるとボーッとするし、腸は脳と繋がってる。トイレにスッキリ行けた時って、頭もスッキリするでしょ? 腸がしっかりしてると、頭がまわる。

___本当に繋がっていることを実感します。

(aki)
 次から次へ繋がっていくから、本当に面白いよね。食べてからの繋がりと、食べる前の物の繋がりとか。

(tra)
 自分の体験から言うと、僕、便秘体質だったんですよ。昔はね、ジャンクフード最高だと思ってましたからね。(笑)
 両極端やったからよく分かるんですけど、植物性主体の食生活だと、便秘はあっという間に治りますね。全然違う!
 便秘の時にはね、自分が便秘だって分からなかったんですよ。前は、一週間ぐらい出なくてもカッコイイと思ってましたからね。(爆笑)
 「オマエ、そんなの時間の無駄!」みたいな。(笑)

___現代生活はスピードや効率が要求されるから、ついつい食事もそうなってしまうんでしょうね。

(tra)
 そうですね。それがまた一つの美徳ですものね。
 音楽だって早いものが流行ってるように、今のリズムはやっぱり確かに早いんだろうけど、 生き物としては、本来の自分達には早すぎるところが確かにあるでしょうね。そのギャップが、いろいろな意味で身体に表れたり、精神に表れたり、歪みがストレスとして表れるんだと思います。

アマゾンでは、熱帯雨林を燃やして、
地平線の遥かかなたまで大豆畑になってるんです。



___「食」という切り口は、間口が広いですね。

(tra)
 日々、三度三度のものですからね。
 食べ物がこれだけ豊かになったのは、人類の歴史でもそんなに古いことではないんですね。
ですから、その時代に生きてる僕らは幸せなんです。
 だけど反面、便利が行き過ぎて、生きる為のエネルギーという観点でみると、今の食の便利さがかえってマイナスになってる。それが、僕らにとって、伝えたい一つのテーマなんです。

___その辺が、大きく言えば環境問題に繋がってくる。。

(tra)
 そうですね。
 食べ物って、身体の健康状態や体内環境にも関係してくるし、もちろん心にも関係してくる。その食べ物が何処からきたのかと外側に考えると、特に日本は今、食卓に並ぶ食べ物の60〜70%は海外ですからね。
 じゃあ「海外で作られたものが日本で作るものより安いって、どうなってるの?」って。
 リアルに言えば、今、大豆がスゴイんです。ブラジルの熱帯雨林を燃やして、地平線の遥かかなたまで、一面大豆畑になってるんですよ!
 ちょっと前までは、牛肉がそういう形だったんですが、今はそれが大豆まで来ている。日本の食文化は大豆なのですが、自給率は5%を切っている。そうすると、ベジタリアンだと言っても、熱帯雨林がなくなってしまうことに関係しちゃってる。
 「じゃあどうしたら良いの?」ということになりますが、それを知っているのと知らないのとでは違うと思う。

___ その問題に対しては、何かアクションは起きているのですか?

(tra)
 アマゾンでは、熱帯雨林を自治区みたいにして守る運動が起きてるんです。これ以上大豆畑にならないように、現地の方やNPOの方達が、今残ってる物をまず残そうというスタンスで取り組み始めている。
 だけど、今の段階ではなかなか木を植えることまでは出来ないですね。将来には、その大豆畑を何らかの形で戻すようなことも出来てくるとは思うんですけど。

___ 世界的に人口が爆発的に増えている中で、どこかが生産地としての役割を担う必要がありますよね?

(tra)
 これはあくまでも数字としての考え方ですが、今、世界では1/3くらいの人が、悲しい話ではありますが、飢えていて、かたや先進国では食べ物の1/3くらいは捨てられている。 すると単純に数字だけ見れば、捨ててる食べ物が彼らのところに行けば、皆が食べられる。
 もちろん、政治やら経済やらいろんなものが絡んでくるので簡単ではないですが、基本的にはこの地球に今あるシステムを上手く使えば、まだまだ皆が食べていけるだけの食べ物は出来ると思います。
 分配のシステムを確立すれば、充分解決できると思うんです。

例えば、冷蔵庫をいっぱいにしない。
食材は、すべて使い切っちゃう。
美味しいし環境にも良いし、たくさんラッキー♪


___そういう事を知ったうえで、何かキッチンで出来るアクションがあるでしょうか?

(aki)
 例えば、冷蔵庫をいっぱいにしない。
 無くなるまで買い物をしない。買い置きをしないで、使い切る。そうすれば、新鮮なものを買えるし。
 あと、一番良いのは自分たちで食べるものは、少しでも作れるようにする。

(tra)
 食材は、すべて使い切っちゃう。「一物全体」とも言いますけど。

(aki)
うん。例えば巨峰とかって、皮と実の間が一番美味しいって聞いたことないですか?それって、
人参にも大根にも言えるし、皮との間に一番旨さが詰まってるんです。
 それ丸ごとで人参だから、それを使うことによって旨みもでるし、ゴミもないし、剥く手間もないし、料理の下準備が面倒じゃなくなる。
 皮剥かないって 、最初は「え?」と思うけど、すごく美味しいし、楽ですよね。

___野菜の下ごしらえって、結構手間がかかりますものね。

(aki)
 お米にしても、玄米を食べだしてからシンプルになった。
 玄米ってあんまり洗わないで良いんですよ。白米は濁りがなくなるまでちゃんと洗わないと糠臭くなる、って言われる。でも玄米って、2〜3度お水を替えるぐらいでOK♪。
 玄米でも、発芽玄米を自分で作り出してからは、もう全く洗わないで良い。バットに玄米を入れて、水を張って毎日取り替えるだけ。それでもう、取り替えてるのが洗ってる状態だから、あとは炊くだけ!
 美味しいし環境にも良いし、一石二鳥どころか、たくさんラッキー♪

(tra)
 日々のものだから、楽しさと共に楽さ加減は絶対必要ですからね。

___続けられないと、意味が無いですものね。

(tra)
 植物性の料理は、一見手間がかかって大変に思われがちなんだけど、実はどんどん楽になってるんですよね。

(aki)
調理も下ごしらえも、シンプルなのが一番。美味しいし!

(tra)
だからオーガニックっていうのが大事になってくるんですよね。丸ごと食べるから。
だけど今の時代、百点満点はなかなか難しいですからね。ベストを求め過ぎてしまっては、良いもの食べても楽しそうじゃない。

(aki)
 いくらオーガニックだからと言って、萎れたオーガニックは嫌だしね。新鮮な方がいい。

(tra)
 僕は昔、自然食品屋もやっていて、北海道や九州から無農薬のオーガニック野菜を仕入れてたことがあるけど、結果として三重苦ぐらいになっちゃうのね。どういうことか言うと、一つは、採ってから日にちが経つので、葉物はやっぱり萎れちゃう。それに、ただでさえコストが高いうえに送料が加わる。
 農薬に関しては、お百姓さんが一番分かってるんですよ。だけど、流通とかいろんな仕組みが、結局使わざるを得ない。買う人たちも、頭では分かっていても、スーパーに行けば、萎れてたりいびつではない、見た目がキレイな方を手に取っちゃう。それはお百姓さんが悪い訳じゃなくて、今のシステムが問題なんです。
 だから僕らが勧めたいのは、やっぱり生鮮品は近場のもので揃えるのが一番賢い。値段も安いし、新鮮だし。
 小田原とかこの辺は、有り難いことに、お百姓さんがまだいらっしゃるじゃないですか。ですから、近くにいるお百姓さんたちが自分たち用でつくってますから作っているものを分けてもらう ようにするのがひとつのコツですね。農薬的なことも、ある程度コントロールしてるでしょうし。
 100点満点は無理にしても、それぐらいが丁度良い加減じゃないですかね。

「いただきます」


(aki)
 インドの修行僧の話を聞いたことがあって、ある修行僧が山から下りて次の山に行く間に、町を通って、食事をするのに食堂に入って、そこで出された食事を食べたら、突然、苛立ちを感じたらしいの。で、修行僧だから、「この自分の感情はどこから来たんだろう?」と思って、キッチンを覗いたら喧嘩しながらその料理をしてた、っていうお話。

___その波動をもらっちゃった?

(aki)
 やっぱり、伝わる。
 自分でも実際に体験したことあるし、もうちょっと向こう側まで見れば、偽りのないものっていう話にも繋がってくる。生産者の顔が見えるもの、とか。
 そうやってグルグル考えると、作物は天から降る雨の恵みで出来ていて、その雨がキレイじゃないと、って環境問題に繋がってきて、それが自分の所に返ってきて。。
 本当に、キッチンの中でグルグルしてます。(笑)

___そういう大きな「輪」を考えると、「いただきます」っていう言葉はスゴイですよね。

(aki)
 マントラですよね!

(tra)
 「いただきます」と「ごちそうさま」っていう言葉は、「もったいない」と同じように素晴らしい言葉だと思う。世界中、有りそうで無いよね。長いお祈りはあるけど。
 「いただきます」は、「これから食べるよ」っていう合図でもあるけど、「すべてに感謝」っていうのをたった一言で表現しているし、「ごちそうさま」は、食べてお腹いっぱいになった自分の満足を表す言葉でもあるけど、食べるってことは何かの命なりエネルギーをもらうワケだから、それに対する「感謝」ですよね。
 それを日常の中で、普通に日々営まれている、っていうのが素晴らしいし、理想ですよね。

___命をいただく。。

(aki)
 私たちは食べ物で出来上がってるから。

(tra)
 本当に、実際そうだからね。
 命にありがとう、命にごちそうさま、って思うんです。




ManaBurgers FUKUOKA 2008.9.吉日 OPEN !

Manaburgersは、ジャンクフードのポップな手軽さと ナチュラルフードの安心とヘルシーを融合した新しいスタイルの楽園バーガーショップです。
100%植物性素材を使い、ローカロリー、ノンコレステロールという驚きの“NATURAL JUNK FOOD!”。
Manaburgersの“MANA”はハワイ語で“エナジー”を 表す言葉。
ハワイ帰りのスタッフと共に、日本初の VEGIE BARGER SHOPが
福岡からスタート!

more info ⇒ ManaBurgers オフィシャルサイト

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27 July

「風にかえる」

artist file "tanebito" [Archives #1] 
伊東 知子 さん(創作ジュエリー作家 / 風にかえるアトリエ

よく「石がすごく生き生きしている」と言われますが、
本当に生き物を扱うように扱っていて、
たぶんお花と同じ様にひとつの命をもって生きてるんじゃないかなって思っています。


___どうして自然石を扱うようになったんですか?

 もともと 天然素材の絹とか麻とかすごく好きでした。自然がつくった造形の中に人間が努力しても到底及ばないような素晴らしい姿を見た時に、あぁもう自然の力の方がスゴイんだって思って。
 そしたらもう、半分は自然に助けてもらいながら、素晴らしい造形の原石を使って創作活動をやっていった方がいいんじゃないかなって。

___きっかけがあったんですか?

 自然石を使ったネックレスを作るお教室があるからと友人に誘われて、そこで教えてもらったのがきっかけです。当時は今みたいに石を売ってるお店が少なくて、だけどその人の家にはいっぱい石が並んでいて、「あぁこんなのあるんだ。いろいろあるんだ」って思いながらひとつ自分のを作って。
 そしたら何故かそのネックレスを着けてる時だけ無性に悲しくなって涙が出たりとかして、「あっ、石って何かあるかも」と思って。それが石の事を詳しく知りたいと思ったきっかけですね。何か心と関係してる気がした。
 今もそうなんですけど、私が図書館みたいに満遍なくすべての石を揃えるっていう必要はなくて、自分がいいなと思う石を仕入れてきたら、それを求めてくる人と私が出会うという流れです。
 よく「石がすごく生き生きしている」と言われますが、本当に生き物を扱うように扱っていて、たぶんお花と同じ様にひとつの命をもって生きてるんじゃないかなって思っています。結晶するのに百年単位で何ミリって結晶する石もあれば、鍾乳洞みたいにどんどん成長する石もあって、やっぱり人間の目に見えないレベルで成長してると思うんですよね。ある時色が変わったり、あるお客様が来ると急に綺麗になったりとか、そういうのを見ているとやっぱり「あぁ、生きてる!」って。

___だから「パワーストーン」と言う?

 やっぱり生き物同士だから、反応するのでしょう。
 人間同士でも、素敵な人と出会うと心がすごく高揚したり、自分がパワーをもらえたって思う様な事がありますが、それと同じようなことだと思います。
 たぶん一番は、美しいものと出逢ってそれを自分が手に入れる事ができて、それを見た時に「あぁ美しい、綺麗だなぁ」と思う事が、すごく魂の栄養なのかなって気がしています。だから、あんまり、パワーストーンの種類とか作用とかはブッ飛んじゃって「あぁキレイ♪」ってウットリするのが、いちばん心が満たされる事なんじゃないかなと思います。
 私が表だと思って飾っているものを、お客さまは反対側が美しいと思って、帰りに反対側を表にして置いていったりとか・・(笑)それもアリだなと思う。あぁこんな美しさを発見した、って。
 私に合う石を探してくださいっていう事もすごく多くて、そういう出逢いをプロデュースすることも私の仕事でもあって、それは楽しい。魔法みたいで。(笑)

「人間にとって一番身近な風は、自分の呼吸だよ」って言われて、
この空とこの海とこの原生林の自然のリズムに戻りたいって思った。


___どうして真鶴だったんですか?

 真鶴に遊びに来てるうちに、「あぁ、この空とこの海を毎日見ていたら、私の作風はもっと変わるかも知れない」と思って、新しい自分を見たくなったんです。

___土地と作品の関係性って面白いですね。

 舞台のときも、いろんな人の舞台を観察して、いちばん大事なのは湿度かなって。例えば『アラジンの魔法使い」っていう砂漠のお芝居を観る時に、その乾いた風を衣装で表現できるか、装置として表現できるか、って。 お客さんがそれを感じることができるとすごく良いなって思った。

___肌触りですね。

 はい。空気感。感じる世界。
 この話で思いついたのは、私の石が「生きてるね」ってよく言われるのは、何か命っぽい呼吸してるような風を感じるのかも知れない。乾燥したただの石じゃなくて。

___だから『風にかえる』?

 それは後づけでね。そうかも知れない。
 この場所の名前を考えているときに、原生林の近くの海を見下ろせる所に座っていたら、凄く大きな風が吹いて、高いところにある楠の葉っぱがフワァって落ちてきて、一枚一枚がくるくるくるくる回りながら、目の前をヒューって横切っていたの。
 「あぁ風だぁ」って思って、『風のアリトエ』にしようかなって思った。
 その帰り道にカエルに会って、最初『風とカエルのアトリエ』にしようかと思ったんだけど、ちょっとモジッて『風にかえる』にしてみた。
 名前を『風にかえるアトリエ』にした後に、整体をやってる方に「人間にとって一番身近な風は、自分の呼吸だよ」って言われて、「あぁ風にかえるっていうのは、自分の呼吸に戻るって意味があるなぁ」って。私自身も、自分の呼吸を取り戻したくて真鶴に来たようなところもあって、なにかこの空とこの海とこの原生林の自然のリズムに、私が戻りたいってすごく思った。

___ カエルのメッセージだったんですね! カエルは、南米ペルーでは神聖な動物とされているそうですね。

 音楽をやってる人は、ゲコゲコ鳴くからか「音楽の神様」って言う人が多い。「癒しの神」と言う人もいて、カエルが鳴くと浄化の雨が降るって言う。
 たぶん、かえる、元に戻る、っていうのは癒しでもあるし浄化でもある。その象徴っぽい気もする。でも「自分の呼吸に戻る」っていうのが、今の私には一番ピンと来てるんだけど。

癒しも、その創造力の一部分ですよね。
明日の自分を創っていく力。


___海の波の回数は、人間の呼吸の周期に近いんですってね。

 日常であれほどゆっくり呼吸するのは、なかなか出来ないですよね。
 現代社会では、早く呼吸することを求められる。早足で歩くことを求められるから、その期待に応えるように、だんだん呼吸も早くなっていって、吐き出すのが少なくなって、溜まっちゃうんですね。

___ それに気づいたら、自発的に改善するコツがあるかしら?

 自分の呼吸を意識することも、ひとつのコツかな。
 私、作業中に息を止める癖があって、最近は作業が一段落したときに深呼吸するようにしてる。酸欠になればなるほど、妙にトランスに入ってくみたいなところもあって、その呼吸が作品のリズムになってくる。

___呼吸のリズムと言えば、海の波の回数が呼吸と近いから同調していくように、石にも波動があるんですよね。

 そうですね。波にさざ波があったり大きな波があったりするように、石にも、形によって色によって違ういろいろな種類のリズムがありますね。

___石に触れるといろいろな感覚を感じるということは、やっぱり人は何処かでそういうことを感じるセンサーがあるということなのでしょうか?

 情報は受け取っていると思います。意識のあるなしに関係なく。
 例えば、ゆっくりおおらかに過ごしたいのに周りの環境はそうではないという時に、ゆっくりおおらかな感覚のする石を自然に手に取っちゃう。それで、その石を握ってるとなんとなくリラックスする感じがする。

___潜在意識で先に気づいているんですね?

 はい。だから、石を直感で選んでもらうのは、今自分にどんな石が必要なのか潜在的に答えがあるからこそ、そこを手がかりに石を選んで欲しいからなんです。
 潜在的なパワーや、自分を創っていく力って、本当に凄いですね。

___ 自分を創っていく力。。

 はい。創造力。明日の自分を創っていく力。だから、癒しも、その創造力の一部分ですよね。

___たしかに「癒し」と「創造」は、そこで起こる出来事が同じドラマだと思います。

 そうなんです。
 古いものが片付いたとたんに、ドアがバーンと開いて新しいものがバーッと入ってくるのは、ほとんど同時に起きてきますよね。だから「癒す」というのはドアの前の荷物を片付けることで、片付いてドアが開けば新しい出会いやお金の流れだとかワーッと自然に入ってきちゃう。
 お金持ちになりたいとか、ビジネスを成功させたいと言うのなら、最終的に、流れを止めているドアの前の荷物を片付けなくちゃいけない羽目になる。で、片付けると新しいものが始まる。

勇気はね、プログラムされてるんだよね。誰にも、もれなく!(笑)
選ばれた人だけが持つものではなくってね!


___ところで、3年前のコラム『SoulBeauty』について聞かせてください。「そもそも“美”は、衣食住に対してどういう位置づけなんだろう?」という問いから始まったのですが、書いていていかがでしたか?

 今読み返すと、よくまとまってると思う。びっくりするくらい。
 ある石をお客さんが見つけて「あぁ綺麗」って言う時に、そのお客さんも綺麗なんですよね。石とお客さんと両方が綺麗だ、って思っていて、あのコラムでは、そういう日々感じているけど言葉になっていなかった事をまとめさせてもらったって感じです。

___書きながら気づいた事も多かったですよね。

 テーマ毎にそこから引き起こされるものもあって、「海の思想」がそうでした。それがキッカケになって、ひとつのまとまりのあるものがそこから触発されて、それが今すごく大事になっている。

___「海の思想」がピンと来たのは、どういう部分だったのですか?

 アクアマリンという、「海の女神」と呼ばれている石があるんです。
 海って何でも受け入れちゃうでしょ。その中に魚も住めば、船が行ったり来たりもしてて、ダイバーがその中を泳ぐし、大型タンカーが座礁しても、それすらも海は「どうぞ」みたいな。そういう存在って凄いと思う。川のように上から下に流れるわけでもなく、すべてを内包してる。

___すべてが繫がっている。

 たぶん空気もそうなんだと思うんだけど、地球の裏側までずっと空気だから繫がってるんだけど、あんまり実態がないから意識できない。海っていうのは、命のつながりをもっと理解しやすいかな。

___母性とも繫がりますよね。生命を育んだ海。

 そうですね。「母なる地球」って言うけど、「父なる地球」って表現はない。すべてを受け入れる、って母性っぽいですね。

___どうして「父なる地球」って言わないんでしょうね?(笑)

 ね(笑)。命を自分の中に宿す、という感覚は「母」っぽいよね。そこがとっても重要なんだと思う。
 自分の中にはヒーラーや神はいないと思っちゃうのがそもそも間違いで、自分の中に答えも、創っていく部分も、癒していく部分も、全部その力はあるんですよね。自分の命をまるごと受け入れる感覚からスタートする。

___ 例えば、宇宙船が地球から離れて遠くまで飛ぶためにそれなりの体裁を整える必要があるように、男性性っていうのは、一旦宇宙のリズムから切り離された合理性があると思う。それが良さで、種という形にして遠くまで運ぶ。

 多分、感覚的なシステムとか、身体やホルモンのシステムが違うんでしょうね。 それ故、すごく大きな仕事が出来る力になる。

___きっと今の時代は、着陸地点を求めてるのかも知れないですね。 運ばれた種が着陸して、母性的なエネルギーでそこからまた新しい次の芽が開いていくという。

 宇宙船に例えるとしたら、外からエネルギーを入れないと走らない宇宙船だったのが 自分の中で燃料を創り出せるタイプに変わる時なんじゃないかな。

___環境問題も、きっと突破口はその辺ですね。

 そうだと思う。外側から入れて外のものを食べ尽すというスタイルじゃなくて、自分の内側のエンジンや燃料が働いて循環していくシステムになっていくんじゃないかな、人間も。
 
___それは、気づけばできるでしょうか?

 もちろんです! 本来、そうした方が、たぶん気持ちイイ。
 初めて自転車に乗るときみたいなんだと思う。最初は乗り方が分からなくて転んだりするけど、乗ったら「ナンだ、こんな簡単♪」って感じ。

___人類が初めて二本足で歩いた瞬間もそうだったかも知れないですね。きっと周りはびっくりしただろうし。

 赤ちゃんが歩く時、どうして歩きたいと思うかと言うと、お母さんが喜ぶからじゃなくて、 別な目線で見られるとか 好奇心の方がメインなんですって。ハイハイで床に近い目線だったのが、ちょっと高い所から見ると世界が広がる。

___自発的な動機なんですね。

 例えば好きなぬいぐるみがあって、そこに行くまでに、今までのハイハイで行った方が絶対早く取れるのに、 あえて難しい作業なのに立って行こうとする。 もちろん、 お母さんが喜んだ方が早くマスターするらしいんだけど。
 だから勇気あるんだよ!やっぱり。未知の方へ、本能が自然とかりたてる。

___勇気、ありますよねぇ!しかも、そういうことに気づくというのは、プログラムされたかのような奇跡ですよね。

 うんうん、奇跡!
 勇気はね、プログラムされてるんだよね。誰にも、もれなく!(笑)選ばれた人だけが持つものではなくってね!



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20 July

僕らと宇宙人


1.


「宇宙人とコンタクトを取れる図形」と彼に説明されたが、
僕にはただの落書きにしか見えない。
1時間程掛かって、漸くそれが出来上がった。
グラウンドいっぱいに書かれたのは、不思議な模様だ。
「本当に来るの?」
不満げに石灰を撒く僕を見て、彼はにっこりと笑った。
「当たり前だろう。本に書いてあった」
その顔は真っ白だ。ホラー映画のメイクのようで可笑しい。
彼が爪先で引いた線を目印に、大きな袋から少しずつ石灰を撒く。
結構な重労働で、どうにも上手くいかない。
僕は額に流れる汗を両手で拭う。
徐々に気温が上がってきた。
早朝から始めたのに、太陽はもうすっかり姿を見せている。
「実はまだ、これで宇宙人と出会えた人は居ないんだ。」
彼はバスタオルで顔を拭いながらそう言った。白いのは取れていない。
「それは何処からの情報?」
「本に書いてあった」
彼ともう少しつき合いが長ければ、お前は本に書いてあれば何でも信じるのか、と責めたところだ。
「だから俺が目撃者1号だ」 
「でも、誰も会ってないんじゃ、この方法で来るかどうかもわからないんじゃないの?」
「来るに決まってる」
謎の同級生は、ぎらぎらと目を光らせながらグラウンドを見ている。
こうしていればUFOが来ると、きっと本には書いてあったのだろう。


2.


「宇宙人の目撃者第2号にならないか。」
正面からそう声を掛けられても、僕に言われたものだとわからなかった。
「おい、待てよ。何処行くんだ」
脇を擦り抜けようとした僕を、彼は慌てて呼び止めた。
「僕?」
他に誰が居るんだ、という顔をされた。昼休みの購買だ。
「嫌そうだなあ。宇宙人は嫌いか?」
「別に、そういうわけじゃないけど」
この人は何者だろう、興味は少しそそられたけれど、
危ない人に絡まれた、と苦笑いをするしかない。
「じゃあ決まり。明日の4時、グラウンド集合。ちゃんと来いよ」
彼はそれだけ言うと、踵を返して去って行った。
「待ってよ! 4時って、夕方の4時だよね?」
慌てて言葉を返したけれど、無駄な質問だったと、すぐに悟った。
だから僕は、夏休み最初の日、
朝の4時から、学校のグラウンドで石灰と格闘している。
夏の陽は、朝からでもじりじりと皮膚を焼いて行く。
宇宙人は来ない。
その、当たり前の現実から逃げ出すように、僕は立ち上がった。
「ちょっと、ジュース買ってくるよ」
無駄な時間を使った。
スポーツドリンクを2本買って戻ろうとすると、
彼が僕を呼ぶ声がした。
小走りにグラウンドへ戻って、その光景を見た途端、
僕は苦笑いをするしかなかった。
彼の横に先生が立っている。
僕の姿を見つけると、こっちへ来いと、手招きしている。
僕の口の中は、砂のように干上がり始めた。


3.


宇宙人だなんて、馬鹿な話ですよね。
先生は、僕たちの話を聞いている間中ずっと険しい顔だった。
炎天下の立ち話なんて、早く終わらせたかった。
僕も、彼も、先生も汗だくだ。
「おい、宇宙人だよ!」
僕たちの横から、声がした。
僕は彼と顔を見合わせて、声の方へ振り返った。
野球部のユニフォーム姿の生徒が、目を丸くして立っていた。
振り返った僕たちの顔を見ると、野球部は腹を抱えて笑い始めた。
清々しい程の爆笑だ。
「お前、顔が灰色だぜ。ソックリだよ、あの頭のでかい宇宙人に!」
確かに、僕たちは薄汚れた石灰が顔中に溶けて広がっていた。
偉そうな相棒は、目だけがギラギラと光って、本当に宇宙人みたいだ。
可笑しくなって、僕は吹き出した。
「ふん!お前は目撃者2号だからな」
彼はそう言って、どこまでも偉そうに、僕を指差した。


4.


「宇宙人とコンタクトを取れる図形」だなんて、
いったい彼は、どんな本を読んだんだろう。
汗と石灰にまみれて、炎天下で先生に説教をされて、
夏休みの最初の朝は、とんだ始まりだった。
「じゃあな」
道の途中で、僕たちは笑い合って別れた。
次に彼と会うのは、きっと夏休みが明けてからだろう。
ぼんやりと見上げた夏の空は、狭くて近かった。
青を取り囲むように、白い雲がそびえている。
きっと今日は、もっと暑くなるんだろう。
その時、
厚い入道雲の中から何かが飛び出した。
ハッとして振り返ると、
彼と別れたばかりの道に、人影はなかった。
彼を呼ぼうとしたけれど、口から声が出ない。
そういえば、僕は彼の名前すら知らなかった。
もしかしたら、
宇宙人目撃者の第1号は、僕だったのかも知れない。
script / 木村 静花


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