Archive for 22 July 2007
22 July
土地の持つ「気」
憩える農園
___開園から3年とのことですが、「無農薬・無化学肥料」や「土地の個性」というメッセージは当初から発してらしたんでしょうか?
当初から発していたのは、「人が憩って楽しめる農園」ということと「無農薬での栽培」の2点でした。
それで、皆で六畳の小屋を建てたんです。その小屋の存在が大きかったです。
___集える場が出来ることは大きいですね。
たった六畳ですが、そこへ東京からもいろいろな方がいらして、皆が憩って行かれた。それで「憩える農園」ということを思い始めたのかも知れません。
開園してからは、集って来た方の風や言葉や感想から、逆に、自分の村の個性に目覚めさせられました。
___これからの展開はどうお考えですか?
出土した重要文化財の土偶も、囲っておくのではなくて博物館に収めた方が良いと思っていましたが、この古い里山を含めたアピールをしたいという時に、やはりこの村で本物の土偶が見れることが一番良いなと、私自身の考えも変わってきました。難しいことだとは思いますが。
この里山の景観を残すということの他に、自分でも思いもよらず、外からの人との交流の場にしたいという願いに導かれています。
この村を輝かせる、と言っても、とにかく人を呼ぶとか何かを造成するというのではなく、自然の「気」を感じれるような場でありたいですね。
土地の「気」
___私ここまで車で来ましたが、現代文明の乗り物で立ち入ることがはばかられるような神聖さを感じました。今の時代は、自然と人間との関わりを模索していますね。
僕が「交流」と言っているのは、それなんです。
主義主張や国籍を超えて、自由に本音で生きる。それを農園祭のスタッフが共有している。一番大事なのは、差別がなく、平和で、戦争がない、ということですから。
___人々が集う、その核になる本質は何なのでしょう?
此所の場合は、土地の「気」でしょうね。
去年の農園祭では、「此所へ来て、こんなに自分が許されて自由な気持ちになったのは初めて」という感想がありました。癒されるとか心地よいとか、それは土地の持つものじゃないでしょうか。
誰かがカリスマ的にトップにいるのではなくて、それぞれが自由な表現をしたりするような、此所はそういう場なんじゃないでしょうか。
___だからこそ、古代に此所に集落が出来た。
昔の人は、良い「気」を感じる力が強かったのでしょうね。
そこで、良い気の場所に神社を建てたりした。しかも、そこを独り占めするのではなくて開放する、という精神だったんです。
また、縄文の世は、戦争の無い時代だったんです。武器が見つかっていないんです。簡単に言えば、人々が仲良く暮らしていた。弥生くらいから、権力のある人が倉庫を作って米を蓄えたりして、上下関係が出来てきたり、争いが起きてきた。武器が見つかって、戦の痕も見つかっている。
縄文というと、土器のことや、食べ物が雑穀だったということも興味がありますが、それ以上に「なぜ戦が無かったのか?」ということが僕にとっては大きなテーマです。
___雑穀ということをおっしゃいましたが、稲作が始まったことの影響が大きいのでしょうか?
そうだと思います。
でも、水田耕作で稲作をしても戦にならないシステムや精神性があれば良いんです。何故争ってしまうのか、それを考えると面白いですよね。
昔の人は、気が良い場所を神社にして共有した。今のように、お金持ちが土地を囲って他人を入れない、というような精神構造ではなかったんですね。
___そういう思いで、この農園を開放なさろうとしてらっしゃるんですね。
理想はそうですね。この村がモデルケースになれば良いです。
憧れと模索
自分で気に入った作品ほどサッと売れて行ってしまうんです。
___藤沢さんのブログは「てしごとDiary」というタイトルですが、ご自身の中で「作家」としての比重は大きいのでしょうか?
「作家」について、いちばん憧れがあるかも知れないです。(笑)
いつも、ちょっとした時間で作ることで「てしごと」を終わらせているのですが、本当はそこに没頭してそれだけで生きて行けたらカッコいいなぁと思う。
カタチとして工房をつくることは簡単なんですが、飽きっぽくてじっと座ってられないんです。(笑)静かに座って思索している人には憧れます。
___驚いたことに、今まで個展をなさったことないんですね。
そうなんです。「何処何処でどんな作品展をやった」というのが作家にとっての経歴なんだ、ということに最近気づきました。私にはそれがなくって。(笑)
___作品展で作品が売れる、ということを考えれば、日々作品展なのでは?
そうなのかも知れないですね。
ありがたいことに、作って出したらすぐに売れて行く。留まっていることがあまりないんです。もう少し作品をためたい気持ちもあるのですが、自分で気に入った作品ほどサッと売れて行ってしまうんです。(笑)
なかなか動きが落ち着かないのですが、それは恵まれたことだと思います。
作品づくりは、石に助けられることが多いです。
___その辺り、デザイナーと作家とでは一線がありますね。
そうなんですね。
私には、すぐに作って出さないと間に合わないお客さまが先にいらしたので、その方に合わせて作っているうちに、時々「作家」と呼ばれるようになっていったんです。
___作品づくりのアイデアは、いつもどんな感じで訪れるんですか?
う〜ん、降ってくる時もあるし、苦しんで苦しんで、以前のものの繋ぎ合わせになっている時もありますが、たいていは石に助けられることが多いです。「この石をどうやったら一番たのしく見せられるか?」とか、実際にお客さまがいらっしゃるので「その方をキレイに見せるにはどうしたら良いか?」というように考えると、それほど苦しいことではないです。
ただ、毎月の教室のテーマ作品については、ちょっと大変な時もあります。トレンドを取り入れたい気持ちもありますし、天然石ですから素材を活かしたいし、せっかく習いにいらして下さるので少々難しいテクニックも盛り込みたい。そういうことを考えると、普通にお売りするものと教室でやっているものは少しスタンスが違いますね。
___これからの展開については、どんなお考えですか?
今年はアクセサリー・スクールが10周年を迎えることが出来たので、何かまとまった形で皆で発表するものや、一人で展示するものや、出版物にまとめたりもしたいと思っています。作品集であると同時に、作り方が載っているようなものを考えています。
仕事を最小限にしたら、人との繋がりが最大になった。
15年間小さなお店をやっていて、3年前に主人が大阪に転勤をするというので、一度お店をたたんで、最小限のことだけを小田原で仕事をしようと思ったんですね。20日間は大阪、10日間は小田原。その中で出来るのは、自分の売ったものに対してのメンテナンスと、教室のこと。その2つのことだけをやるためのすごく小さな事務所をつくったんです。
人から見ると、ボロボロのビルの3階に行って「泉さん何してるんだろう?!」っていう人もいたハズなんだけど、結果的には、そこで出来た友達が今をつくっている。
ビルの入居者同士みんな仲が良くて、「長屋」と呼んでいました。朝行けば他の会社の人でも「おはようございます!」から始まって、お菓子をいただけば隣の会社にお裾分けしたり、兄弟のように仲良くなりました。
そこから展開して、いろいろなコラボレーションをしたり、誰かのお手伝いに行ってそこでまた人と出逢ったり。
そんな流れで、今回のお店は出来てしまった感じです。
___今でもその繋がりは活かされている?
そうですね。まだそのビルの中に小さい部屋を残してあります。
今考えるとすごく不思議な3年間でした。自分では仕事を最小限にしたつもりなんだけど、人との繋がりが最大になった。
そこで私が楽しそうにしているから、お客さまもやって来る。 みんなウチの部屋で溜まってました。(笑)
一日中お茶を出さなきゃいけなくて、ずっとおしゃべりして、自分の仕事は夜9時から。9時から12時まで一生懸命作って、昼間は人とおしゃべりをして。そういう感じでした。
___人の繋がりって、財産ですよね。
財産ですね。本当にそう思います。
進化の途中なので、何かメッセージを伝えようというのは、今は無いです。
___今こうして出店なさって、新たなネットワークづくりはいかがですか?
今回の特徴は、パートナーのackeyと年齢が10歳くらい違うことですね。お客さまの年齢層が違うので、それぞれが交流していくことが新しいと思います。年齢も生活スタイルも違う、そういう交流が出来つつあることが、すごく面白い。
___世代を超えて広がって行くことはワクワクしますね。
そうですね。私も若返るというか。(笑)
___世代間で伝えて行きたいことはありますか?
これを伝えて行きたいというのは、もともと無いんです。
黙って見せて、どんな反応をするのか、それを今は観察しているようなところがあって、自分がこれで良いのかも、今は分からないです。私は、ずっと分からないのかも知れないです(笑)。
ついつい難しい方へ択んで行ってしまうところがあって、みんなが「そうだ」と言うと「いや違うかも知れない」と言って、自分一人でまた違う方向へ行きそうな気がします。
進化の途中なので、何かメッセージを伝えようというのは、今は無いです。
___じゃぁこれからが楽しみですネ。
それを楽しんでくれる人が来てくれて、一緒に考えるような所が良いんじゃないかと思っています。
先日も、あるおじいさんが店にいらして、このお店がすごく気になるみたいなんです。3回ほどいらしたんですけど、「今の世の中、みんな迷ってるんだよ!」って言うんです。「迷ってるんだから、決めてやらなきゃいけないんだ!」って。
私が「違うんです!迷ってて良いんです!私は自由だと思うんです!」と言うと、それが楽しいらしくて、「君は面白いねぇ!」って。
哲学みたいでしょ。(笑)
何でそんなことをおっしゃるのか、私もそんなにムキになるのか、でもこのお店についてすごく興味があるそうなんです。
___これからも模索し続ける。
はい!
模索したいですね。好きですね、模索が。(笑)