Archive for 21 August 2011
21 August
音楽がつくる空気と勇気
___Newアルバム『Going Up』を6月に発売なさいました。
フルアルバムとしては1枚目ですが、それまでにミニアルバム2枚とシングル2枚を出しています。Natural Recordsはライブバンドなので、とにかくライブに行きたくなるようなアルバムにしようと思って、スタジオ録音とライブ録音と混ざっているんです。
___曲作りはどんなふうになさっているんですか?
僕が作るのが60%で、あとは皆でスタジオに集まってセッションしながら作っています。何十セッションとしたものを全部録音して、それを後から構築していきます。
___Newアルバム『Going Up』の中では、『オレンジとブルー』が私の一番のお気に入りです。
あー、切ないなぁ。あれは夏かなぁ。詩が書けなくて夜中に原っぱで寝転がっていたら流れ星が流れたんです。流れ星が流れたら願い事を言えば叶うってあるけれど、なんだかそれが非常に自分勝手に思えたんです。そんなことよりも、ああやって流れて一瞬で無くなっちゃうんだろうなと思ったんです、自分も。
その当時何人か出逢った人がいて、すごく優しい人だったんですけど、その優しさに辿り着くまでにいろいろあったんだろうなぁとか。楽しい話をして、明るいコトはオレンジに見えるんですけど、バックグラウンドが濃いブルーに見えるというか。それでこのサビが出来たんです。
”愛の言葉は オレンジとブルー / 燃える喜びと淡い寂しさが / 溶け合って揺れている"
優しいけどせつないなぁと思った記憶がこの曲になったんです。
音楽が大事かとか言うより
それによって動いている人間の心が本質だから
それを本当に大切にして行きたいですね
___私が初めて宮さんのライブを聴いた時はウクレレのソロでした。バンドでの音はリズム隊がとてもタイトで全く違う印象です。
ソロとバンドは対極ですね。バンドは「よし!」と斜めに一段上がっていく感じですが、ソロはこうして話しているようなところからそのまま音楽に行き来できるような感じてやっています。
___場の空気と会話しながらアジャストする感じでしょうか?
ソロの時はそうですね。バンドの時は呼吸すると言うよりは、空気を「フワッ!」と作っちゃう感じです。そういうモードの違いはあります。
___あの時は小さなカフェでのライブで、立食パーティのような状況でお客さんの中に分け入って演奏なさっていました。(笑)狭いスペースでほとんど丸腰のような状況で演奏している姿にミュージシャンシップを感じました。
ああいう場面は多いんです。自分でも作っているし。いろいろな所へ行って、ウクレレがあればウクレレで演るし。まぁでもアカペラはないかな。(笑)
やっぱり場を特別なものに一段上げたい願望があって、それが生きている意味のように思うんです。僕が行くことによってどこの場所でも歌う場になる。喜んでくれる人が各地に増えて来てくれているので、だったら一人一人にそれをちゃんと届けていきたい。
___特別な一段。。
音楽って空気だと思うんです。音自体が空気の振動ですから。
空気がフワッと震えると、その震えているのが皆に伝わっているから、同じ波に乗ると思うです。たとえばBGMがかかっているお店でそれが途切れた時に、素になって不安になったり居心地が悪くなったりすることがあると思います。それは音楽が作った空気の波に、いつのまにかみんな乗っていて、それが急になくなるからふっと地面に下がる、そこで不安になっているのです。それと同じように、僕が歌って音楽を奏でることによって、空気の波を作り、そこにみんなを乗せて床から一段あげてしまう。それがお互いにとって心地良いものであればあるほど、皆がフワッと宙に浮いているような気がするんです。
___非日常的な何か、でしょうか?
そうだと思います。音楽は衣食住に入っていないから後回しになるとか言うけど、お祭りとかもそうですが衣食住に入らないからこその非日常であって、それが空気であり、人に伝わって勇気になって行ったりする。そういう要素のものだと思うんです。音楽が大事かとか言うより、それによって動いている人間の心が本質だから、それを本当に大切にして行きたいですね。
___311の後、メッセージを伝える側に身を置く者はいろいろなことを悩んだりしていると思います。
本当にいろいろな価値観が今までよりもハッキリしてきたと思います。
僕らも当日ライブだったんですが、とても会場には辿り着けないしライブは中止になって。ウチのベースが岩手の出身でいろいろ連絡を取ったりザワザワとしました。
5月に震災復興へ向けての義援ライブを東京で企画したのですが、いろいろな人が敏感になっていてそうしたアクション自体も賛否両論が出て、自分としてしっかりと責任を取れることを自信を持ってやって行こうと思いました。自分がそこで説明が出来て、自分発信でやれることがどこまでなのかをしっかり見極めるようになりました。大きいプロジェクトも必要なのですが、他人を巻き込もうとすると価値観の差が出て来てしまうので、そういうことを考えるようになりました。
311に震災があってやっぱり衣食住ありきのものであるということが露呈したんだけれど、じゃぁここから何が必要かと言った時に、人の心が動いて「頑張って行こう」と思える動機づけがスゴク大切だなぁと思うんです。
今はいろいろな価値観が立ち上がってきているから「そうじゃないよ」と言われることもあるんだけれど、人々がそう思ってなくても僕は音楽をやりながらヒュッとボールを投げれるような人になりたいですね。理屈で話して納得しようとしてもなかなか難しいことですから。(笑)
その為には自分で日々呼吸をしながら、いろいろな所へ行って演っていきたと思います。
___ボールを投げる側。。
そうですね。これを生業とするには投げ続けないと。そして投げる球はより磨いて、シンプルにして、無理のないところにして、そして多くの人に受け取ってもらえるようにならないと生きていけない。そういう覚悟はあります。
___それを動機づけているのは何でしょう?
うーん、、、
歳を重ねていって、音楽だけでなくいろいろな業界で僕より10歳上 / 15歳上 / 20歳上の人が本当にやってきているからこうなっているんだという姿に出逢えるようになって、「いやぁ頑張らないとなぁ」って。(笑)「あぁいうふうになれたら良いよなぁ」って。
___どんな方が目標にあるのですか?
Theatre Brookの佐藤タイジさんとか、大きいステージから小さい日常的な現場まで駆け巡れるミュージシャンは凄いと思います。その時に出逢ったその人のことを大事にしていて、そうありたいと思います。
そういうふうにして行けば減らないんじゃないかなぁ。出逢った人をちゃんと大事にしていれば毎日が積み重なって行く。そんな気がするんです。
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