Archive for 13 May 2007
13 May
「つたえる」「もてなす」
フーテンのアーチスト
___最初にくだらない質問ですが、 白澤さんはどうして「traさん」って呼ばれてるんですか?
(tra)
あのね、昔、学生時代にね、僕は旅好きなんでバック持ってよく出掛けてたりしてたのね。で、そのまま居なくなっちゃうワケじゃないんだけど、しばらく消えちゃうって言うか(笑)。
それで、まぁ日本の人は皆「フーテンの寅さん」って言うのが一つあるじゃないですか。あと、ドラ息子って言われてて、その辺が全部混じって、ある時から「トラ」って言われるようになってたの。
ただ、表記は「TORA」じゃなくて「tra」にしてる。これはね、逆から読んでもらうと分かると思うんですけど「ART」。
僕は芸術家じゃないけど、生きてるってことは、 全ての人生がアートだと思ってるし、そういう思いも込めてるんです。
ま、後からこじつけた事がいっぱいあるんだけどね。(笑)
内側から
___小田原とのご縁というと、川瀬学園で教鞭をとっていたというお話ですね。
(aki)
はい。週に一度、友人と4人で「美と健康」と題してクラスを持たせてもらって。
私と白澤さんは「内側からの美」ということで「食」。友人は「外側からの美」ということで、一人はアロマテラピストもう一人はヘアメイク。「美」って、どっちが欠けても完成しないじゃないですか。
私達は、食べてる物が身体に対する影響とか、環境に対する影響とか、そういった所にフォーカスしながら、時にはノンシュガーのケーキを焼いて行って皆で食べたり、玄米のおむすびを食べてみたり。結構楽しいクラスを持たせて頂いてたんです。
___反応はいかがでしたか?
(aki)
かなり良かったみたいですね。
全然興味の無い話とかしてるとバラバラしてるんだけど、ちょっと興味のあるような言葉を出すと、皆の反応がグッと来るのがすごく分かって 、生徒さんの反応ってすごく感じる。
終ってからも聞きに来たりっていうことが毎回のようにあって、2年間って言われて始めたけど「すごく評判がいいので、もう少しやってください」って、学校の方から言われて、トータルで4〜5年間。結構楽しいクラスでした。
(tra)
特に僕らがやっていたのは「マクロバイオテック」。
「マクロバイオテック」って、外国のものみたいに聞こえるかも知れないけれど、もともとは日本から世界に発信されたもので、日本でポピュラーになってきたのはここ数年。「食」を大きな柱として、自由にイキイキと生きる為のひとつの方向を伝えてる。当時はまだ、一般の方は知らない言葉だったと思う。
あと、ファッション系の学校だから、動物愛護とか動物実験とか家畜とか、食物ばかりじゃなくて、自分達の暮らしの中で隠れていることを伝えたりしたんです。
___ 実習もなさったのかしら?
(tra)
実技教室のある学校ではないから、基本的には、方向性とかものの見方や考え方とか。
ただし、それだけだと片手間になっちゃうし、とにかく自分達の日常の生活に役立ててもらいたいから・・
(aki)
家からケーキ焼いて持って行って、「白いお砂糖使わなくてもこんなに美味しい!こんなに甘い!卵使わなくてもこんなにふわふわ!クリーム使わなくてお豆腐でこんなにクリーミー!美味しい!」っていうのを、先ず伝えた。
お砂糖と卵を使って出来るのがケーキだっていう概念みたいなものが、ガラガラ音を立てて崩れていくような感じで。
その後に、卵とか、白い精製したお砂糖とか、ミルクなんかのアレルギーの話をした。
女の子って、おばさんであれ若い子であれ、いつまでも美しくありたいと願っていて、いつも「美」っていうところに繋がるから、それにフォーカスして話をした。
(tra)
「美と健康」って、まるっきり同じことなんだと思うのね。みんな望んでることはその両方だと思うし。
あとは、やっぱり食べ物だからね、それがいくらヘルシーでも美味しくないとね。
食べ物に関しては、まず美味しいってことが一番最初に来て、その美味しいものがヘルシーだったり、ビューティーだったり、もう一歩いけばそれが環境とかにも全部に役立つっていうことを、食べ物を切り口にして話をしたんです。
うれしい、楽しい、幸せ
___亜希さんは昔から料理が好きだったのかしら?
(aki)
料理が好きというか、手から作る物が小さい頃から好きだったみたい。
振り返るとわかるような事がたくさんあって、料理が好きっていうのもあるんだけど、 何かを作って人に食べてもらったり、人が喜んでる姿を見るのが楽しくて。
今、料理を道具として、人が幸せそうに喜んでる姿を見るのがめちゃくちゃ楽しい。
大きなケータリングの仕事で、会場まで持って行ってそこで終わり、っていうのが一回あったんです。作る段階はすごい楽しかった。大きなお鍋で、魔女になったような気分で! でも、最後まで顔が見えないでプツンと切られちゃった。
そのケータリングを経験して、「あぁ、作るのも楽しいんだけど、やっぱり喜んでる姿を見たかったぁ」って思った。美味しいとか不味いとかじゃなくて、食べ物ってみんなを幸せにする。
___エネルギーって「行って戻って」でひとつのサイクルだから、作りっぱなしだと完結しない、、
(aki)
「つまんない!」って言ったら変だけど「見たかった!」って感じかな。それが作り手にとって、一番のデザートですよね。
だから、私は料理で包丁を道具としてるんだけど、もと佳さんは美容師でハサミ、刃物同士(笑)
で、私もそうなんだけど、 たぶん女の子は髪を切ってもらってキレイになったら嬉しいし、その嬉しい姿っていうのを生むのが楽しいんじゃないかなって思う。
___それがガソリンですよね。
(aki)
人が喜んでる姿って、ホント幸せになるから、皆が幸せでいてもらいたいな。そういう意味じゃ本当に世界平和願いますよね。(笑)
くるくるの円
___traさんは、家業が「伝統食」だった?
(tra)
うちの実家は、熱海の方で、伊豆や箱根のホテルや旅館の下請けみたいな仕事なんです。懐石料理の、季節感を表す脇役を作るんですね。
元々そういう環境で育ってるから、食べ物っていうのが生まれた時から身近にあって、それを特に意識したことも無かったんだけど、学校を出てしばらく音楽の仕事をやって、いろいろあって家業を継いだ時に、改まって面白い事やってるなぁって思った。うちの仕事って「伝統食」じゃんって。すごく発見だったんですよ。
だけど、 やっぱり旅館の下請けですから、食品を扱ってるとは言いながらも、最終的に食べてる人の顔は見えないワケですよ。
で、ある時家業から抜けて、その後、自分なりに「自然食」だとか「ベジタリアン」っていう植物性主体のライフスタイルになったり、一本つながって深く広くなってるんです。
食べ物っていうのは、やっぱり「作り手」と「食べ手」っていう意味ばかりじゃなくて、相乗効果のエネルギーの円によって、楽しくなったり、美味しいモノを作ろうとか、そういうものが出てくると思うんです。
そういう意味ではね、家業の伝統食がキッカケではありますけど、それから随分スタイルそのものは変わっているし、自分にとっては理想に近づいている感じかな。
___「つたえる」「もてなす」というコンセプトは、その辺にルーツがあるのでしょうか?
(tra)
そうですね。
たぶん、料理する人って自分のために料理しないと思う。亜希さん見ててもそうだけど、やっぱり食べる人がいるから作る人がいて、作る人がいるから食べる人がいる。
そういう意味で、「つたえる」「もてなす」って一見別の言葉に聞こえるかも知れないけど、基本は「一緒に卓囲んで、楽しい時過ごそうよ」っていう思いなんです。
___亜希さん、 一人だとどんなもの食べてるの?
(aki)
リンゴがあればいい。(笑)作ろうと思わないですよね。火も着けない。切らない。
___私も自分の髪は後回しで、自分では切れないし、やっぱり気持ち良くないですよね。事務的に邪魔だから切るぐらいの感じ。
(aki)
私もそう。「お腹が空いたから食べる」みたいな。 ちょっと、動物みたいだよね。(笑)
___やはり、そこに料理する人の「気」が入るというか、その有り無しは大きいなと思う。
(tra)
それがある種、LIVEみたいなものですからね。
___共同作業ですよね。作り手と食べる人との。
(tra)
ですよね。
これはもう、どんなことでも本当はそうなんだと思うんだけど、相手がいて自分がいて、それが限りなく、別れてるんじゃなくて、円になってるような、そんな感じだと思うんです。
(aki)
くるくるだよ。アートって。
(tra)
そうだね。エネルギーって。
(つづく)