Archive for 05 August 2007
05 August
田んぼに行こう
休耕田の再生
___ここの田んぼは棚田になっているんですね。
そうです。東と西が小高い丘に囲まれて、山の上から、海まで見渡せるような素晴らしい所です。日当りも良いし、風も通りますし、農業をやるにはすごくよい所です。
___恵まれた環境にも関わらず、休耕田になっていたそうですが。
日本中で起こっている事ですが、ここの地主の方もお歳を召してらして、3年前から休耕田になっていました。
その前はずっとお米を作ってらして、ここは丘の中腹ですが、上までずっと棚田だったんです。Google Mapでここを探すと、上までキレイに棚田なんですよ。
なので、何年かかるか分からないですが、上まで攻めて行きたいですね。
___メンバーは募集をかけるんですか?
食事をしたり遊んだりしている時に「田んぼやってるんだよ」って話すと、むしろ「やりたい!」って志願してくれる人の方が多くて、どこかしらやってみたい思いとか、農業の行く末についての問題意識とか、安全な食についての危機感とかがあるのでしょう。
まぁでも、そもそも田んぼに入ること自体を楽しみとして演出できるんじゃないかと思っています。
___ここの田んぼのメンバーは、皆さん、東京からいらしてらっしゃるとか?
そうですね。
だいたい20代後半から30代のメンバーが中心で、皆それぞれ平日は会社で働いたりしています。電車や車で一時間くらいですから、週末毎に、来れる時に来て草をむしっています。(笑)
日本のお米は高いか?
___結構大変な労力ですよね。
ええ。
だから、普段接するお米ってスーパーで袋に詰められて5kgで3,000円とかで並んでいて、それを「日本のお米は美味しいけど高い」と言う声もありますけど、実際やってみると、それが本当に高いのかどうか身をもって感じられますよね。
___皆さん、普段はどんなお仕事をなさってるんですか?
私は通信関係のサラリーマンですが、コンサルタントがいたり、農水省や環境省のメンバーもいます。世代が近いという共通点を除くと、いろいろなメンバーがいます。
___ukkiさんにとってのキッカケはどんな事でしたか?
やっぱり食いしん坊から始まって(笑)、安全な食とか、美味しいものとか、あとは、何でも自分でやってみるというのが入り口でしょうか。
それで幸いにもこういう恵まれた環境の田んぼをやってみないかとお誘いを受けて、これはやるしかないなと二つ返事で飛びつきました。
___でも一人では出来ない事ですよね。
そうですね。
最初にこの田んぼを仲立ちしてくれた人にも、出来るだけ機械の使い方を覚えなさいと言われたんです。今、メンバーが集まっているのでほとんど手でやっているんですが、やっぱり自分が疲れないことが大事だと言われました。一瞬で終わるお祭りとは違って、お米を作るというのは一年間通しての作業なので、どれだけ持続できるかというのが大事になりますよね。
幸い、私たちの場合は、今日も10人程のメンバーが来ていますが、「やりたい」と名乗りを上げてくれたのが50人くらいいるんです。だから、週末の作業でも、来られるメンバーが入れ替わり立ち替わり来てくれるので、ありがたいです。
一反の水田
___この田んぼはどのくらいの広さなんですか?
棚田なので真四角ではないですが、だいたい南北に20m、東西に50m、約1,000です。日本の単位で言うと「一反」という大きさです。
___自給ということを考えると、これでどのくらいの人数が養えるんでしょうか?
正確には分かりませんが、だいたい一反の田んぼから7〜8俵のお米が穫れれば合格点と言われています。1俵が60kgですから、400~500kg穫れれば合格でしょうか。少なくとも、ここへ来てくれているメンバーに山分けして、「あぁ自分のお米だ」って思えるような量はあると思います。
___一株の苗でお茶碗一杯分だそうですね?
そうですね。一株で2,500〜3,000粒くらいのお米が実ると言われています。それがちょうどお茶碗一杯分くらいです。
という事は、2〜3粒のお米がお茶碗一杯になるんです。
___そう考えるとスゴいですね!
一人当たり年間1,000杯くらい食べるとすると、1,000株で一人分。この田んぼで何株あるかは数えていませんが。
ここで実は問題に思うのは、例えばこの一反の水田でお米を作って、それをJAに売ったとしても、現金収入で20万円くらいなんです。このサイズの田んぼを一年間やって20万円。大卒のサラリーマンだと、1ヶ月でそのくらいもらえますよね。
それを考えると、後継者問題が出てくるのも分かりますし、農地の大規模化というのも一つの方向としてはあると思います。
でもやっぱり、そもそも「日本人、もっとお米食べようよ!」とか、「もっとお米にお金を払おうよ!」っていう気にはなりますよね。
美しい棚田
___今「大規模化」とおっしゃいましたが、そういう方向性が、結果、農薬ということに繋がる。
そう思います。やはり効率を重視していくと、莫大な広さの田んぼで、草むしりの作業などをとても手でやろうとは思いません。農薬や肥料というところになると思います。
それでも、食の安全だとか、棚田の美しい風景の保全とかを考えると、こういう昔ながらの手作業の活動を後押し出来たら良いと思っています。
___なるほど。棚田という地形では、大規模的なやり方はかえって難しい。
そうですね。大きな機械は入れられないですし、やっぱりトラクターで一回で終われるような所の方がやりやすいでしょうね。
極端な例で、アメリカの農家の田んぼではトラクターにGPSを積んでないと迷子になって家に帰れない(笑)。田んぼの中に飛行場があって、飛行機で農薬を撒くんだそうです。それと較べると、日本のお米が高くつくのは仕様がないと思います。
でも、美味しくて安全なお米って、良いものは価値を認めてお金を払って行くというのが大事かなと思います。