Archive for 26 August 2007
26 August
「ドーム」の可能性
___ドームハウスの建築は、受注でなさっているのですか?
ここ7〜8年は、多い時で年間10棟くらい建築しました。
昨年は、横浜で学童保育の為の建物を手がけました。直径10mのサッカードームで、正五角形と正六角形のパネルを組み合わせたタイプです。2棟を隣接させて、キッチンやトイレやバスなど家としての機能は片側につくって、もう片側は子どもたちのスペースとして広く空間をとりました。中はどんな区切りにも出来ます。中二階がつくれるほどの高さがありますが、ここではあえてワンルームで使っています。
___広い空間がつくれるだけでなく、天井が高いですね。
天井が高いのは気持ち良いですよ!
国産でドームハウスを組み立てているのは、僕ともう一人九州でやっておられる方と、二人だけなんです。大手の建築会社でアメリカからの輸入物を扱っているところがありますが、輸入物は価格が高いこととサイズが大雑把なものしかないのですが、ウチはバリエーションもあって細かいことも出来るし、しかも安く組み立てることが出来ます。
ただ、なかなか良さを分かってもらえなくて、まだまだ需要が低いです。
___何がドームハウスの普及を阻んでいるのでしょう?
やはり土地が狭いので、四角い土地に丸いドームを作る余裕がないのでしょう。四隅が余ってしまいますから。
今まで僕が手がけた中で一番小さいものは、3坪で直径3.8mほど。半球にしたら高さ1.8mしかないので、垂直な壁を立てて持ち上げて組み立てるんですが、やはりもう少し広い方が良いですね。
施主さんがドームをお好きであればそれでも良いんだということになりますが、直径7m以上が実用的でしょうか。
___ということは、やはり先進的な意識を持ってらっしゃる方に限られてしまう?
そうですね。
ですから、ログハウスとドームハウスとで迷ったり、途中で止めたりする方はほとんどいません。
四角い土地に対応したドームのアイデアも持っているのですが、今は開発途上です。効率が良いとか丈夫だとか、それが全てではないですし、皆さんが四角い建物に慣れてしまっていることは大きいですね。
___四角いドーム?
肉まんを二人で分けて食べる時のように、ドームを直角に分割するんです。意匠登録までは済んだので、これからそれを提案して行こうと思っています。
ドームの一番の良さは開放感ですから、四角い家でも皆が集う部分はドームにしたらいかがですか、という提案です。
___空間が丸いことは、心理的に影響が大きいでしょうね。
ドームを組み立てる時に、最後の頂点の部分は必ず僕が仕上げるのですが、その度に美しいと思うんです。僕は高所恐怖症なのですが、丸い上は大丈夫。(笑)
僕が最初に組み立てたのは四畳半に内接させたドームでしたが、その時は空間の面白さに圧倒されました。
「これだったら孫が来てくれる」と言ってブランコを取り付けた施主さんもいらっしゃいます。(笑)
___なるほど! この空間ならそういうことをしたくなります!
フリークライミングをなさっている方は、内側に上までフックを付けて登れるようにしたそうです。
京都にはライブハウスにしている所があるようです。
___音響効果も良いんですね。
そのままでは反射し過ぎてしまうのですが、それを吸音材などで少し遮れば面白いですね。
アコースティックな小さい楽器のソロ演奏には向いています。独特な反響を利用して、両端で掛け合いの演奏をするのも面白い演出ですし、周囲の壁沿いに客席を置いて中央でパフォーマンスをする設営も良いですね。
但し、大音量の演奏には向かないです。
___ドーム建築の普及のためのキャンペーンもなさっているのでしょうか?
建築ではないのですが、段ボールで模型をつくるようなワークショップはやっていました。
『メビウスの卵展』というイベントに参加してやっていたのですが、主催する自治体の予算の都合で一昨年になくなってしまいました。10年ほど続いた恒例のイベントだったのですが、残念です。
___今仕掛けてらっしゃる展開はないのですか?
いろいろ構想はあります。
「フラードーム」は、世界的にみるとアメリカ・日本・カナダ・オーストラリアに集中していて、アジアや旧共産圏には無いんですね。なぜ普及していないかを調べるところまでは行っていないのですが、むしろ日本よりドームに向く風土があると思うんです。だから、僕はそっちへ行ってみたい。
___なるほど。土地はあるし、かえって環境が過酷な場所の方が威力を発揮する。
実は、縁があってインドネシアへ行く予定だったんですが、津波があって話も流れてしまった。復興の支援も考えたんですが、ツテが無かったことと、準備が足りなかった。
パオのドーム版なども考えていますが、今は設計段階です。