Archive for May 2007
27 May
生活観光
生活観光
___旅に出ると、やっぱり食べ歩きなさるんですか?
(aki)
食べ歩きよりもマーケット。(笑)
一番刺激になるし、いろんなヒントをもらえる。
___ リアルな食生活が見える?
(aki)
見えますね。
そこで売ってるファーマーの方からいろんなアイデアを教えてもらえる。「ウチではこうやって食べてる」とか。目も見開くんだけど、耳もダンボになる!
___どこの国のマーケットが面白かったですか?
(aki)
どこも面白いですね。アジアのマーケットも面白いし、先進国のマーケットもキレイだし。キッチンは元気になりますよね。楽しいし。
野菜とか果物って、アロマテラピーだったり、カラーテラピーだったりって思う。
___ケータリングもなさってるんですね。
(aki)
ケータリングの仕事は、都内が多いかな。あとは、キャンプ場だったり。どこでも料理人デス。
___ケータリングでは、難しい経験もなさったそうですが。。
(aki)
そうですね。こんなの言うのも恥ずかしいんですけども、海外のミュージシャンにケータリングをした時に、仲間のtraさんと喧嘩しながら料理をしたんですよ。
別に、時間に遅れるとかそういうのではなく、料理を提供して、いつもきれいに召し上がってもらえることが多かったんですけど、その時だけは、かなり残っちゃった。
「あぁ〜、思いって手から伝わるんだな」ってなスゴク体感しましたね。
___音楽のアンサンブルのように、一つ一つの楽器がしっかり主張していながら全体にハーモニーを奏でる。
(aki)
私の料理って、DJタイプなんですよ。
あっち行って食べて、こっち行って食べて、それを合わせたり、マイナスしてみたり。
___「コーディネイト」する感じでしょうか?
(aki)
うん。昔ながらの調味料を使って、楽しんで料理をすれば、美味しいものは絶対出来ます!
伝える
___ 今、感じてらっしゃる事をどんな人に伝えて行きたいですか?
(tra)
もう、みんなですね!
だって食べる事は楽しいし、また必要な事じゃないですか。これは、お年寄りから赤ちゃんまで、みんなとシェアしたい事ですよね。
(aki)
特にお母さんかな。 お母さんになる人だったり 。子供って、お母さんが選んだものを食べるじゃない?
(tra)
男の人は植物性のゴハンって聞くと、不味いとか満腹にならないとか、そういうイメージを持つと思うんですが、女の人はヘルシーとか美容とも絡んでくるから興味あると思うんですね。
でも、男の人にも伝えたいですね。
___男の人は、質より量という感じある。。
(tra)
もちろん量も大切ですけど、やっぱり質と両方あった方が良いですよね。
___胃袋が満たされると、心も幸せになるし。
(tra)
そうなんですよ!
逆に、いくら健康に良いと言われても、美味しくなかったら良くないですから。だから本当に、食べ物に関しては「美味しい」が一番ですよね。
アマゾンの大豆
___食べ物っていう切り口は、かなり間口が広いですね。
(tra)
日々、三度三度のものですからね。
食べ物がこれだけ豊かになったのは、人類の歴史でもそんなに古いことではないんですね。
ですから、その時代に生きてる僕らは幸せなんです。
だけど反面、便利が行き過ぎて、生きる為のエネルギーという観点でみると、今の食の便利さがかえってマイナスになってる。それが、僕らにとって、伝えたい一つのテーマなんです。
___その辺が、大きく言えば環境問題に繋がってくる。。
(tra)
そうですね。
食べ物って、身体の健康状態や体内環境にも関係してくるし、もちろん心にも関係してくる。その食べ物が何処からきたのかと外側に考えると、特に日本は今、食卓に並ぶ食べ物の60〜70%は海外ですからね。
じゃあ「海外で作られたものが日本で作るものより安いって、どうなってるの?」って。
リアルに言えば、今、大豆がスゴイんです。ブラジルの熱帯雨林を燃やして、地平線の遥かかなたまで、一面大豆畑になってるんですよ!
ちょっと前までは、牛肉がそういう形だったんですが、今はそれが大豆まで来ている。日本の食文化は大豆なのですが、自給率は5%を切っている。そうすると、ベジタリアンだと言っても、熱帯雨林がなくなってしまうことに関係しちゃってる。
「じゃあどうしたら良いの?」ということになりますが、それを知っているのと知らないのとでは違うと思う。
___ その問題に対しては、何かアクションは起きているのですか?
(tra)
アマゾンでは、熱帯雨林を自治区みたいにして守る運動が起きてるんです。これ以上大豆畑にならないように、現地の方やNPOの方達が、今残ってる物をまず残そうというスタンスで取り組み始めている。
だけど、今の段階ではなかなか木を植えることまでは出来ないですね。将来には、その大豆畑を何らかの形で戻すようなことも出来てくるとは思うんですけど。
___ 世界的に人口が爆発的に増えている中で、どこかが生産地としての役割を担う必要がありますよね?
(tra)
これはあくまでも数字としての考え方ですが、今、世界では1/3くらいの人が、悲しい話ではありますが、飢えていて、かたや先進国では食べ物の1/3くらいは捨てられている。 すると単純に数字だけ見れば、捨ててる食べ物が彼らのところに行けば、皆が食べられる。
もちろん、政治やら経済やらいろんなものが絡んでくるので簡単ではないですが、基本的にはこの地球に今あるシステムを上手く使えば、まだまだ皆が食べていけるだけの食べ物は出来ると思います。
分配のシステムを確立すれば、充分解決できると思うんです。
丸ごと食べる
___そういう事を知ったうえで、何かキッチンで出来るアクションがあるでしょうか?
(aki)
例えば、冷蔵庫をいっぱいにしない。
無くなるまで買い物をしない。買い置きをしないで、使い切る。そうすれば、新鮮なものを買えるし。
あと、一番良いのは自分たちで食べるものは、少しでも作れるようにする。
(tra)
食材は、すべて使い切っちゃう。「一物全体」とも言いますけど。
(aki)
うん。例えば巨峰とかって、皮と実の間が一番美味しいって聞いたことないですか?それって、
人参にも大根にも言えるし、皮との間に一番旨さが詰まってるんです。
それ丸ごとで人参だから、それを使うことによって旨みもでるし、ゴミもないし、剥く手間もないし、料理の下準備が面倒じゃなくなる。
皮剥かないって 、最初は「え?」と思うけど、すごく美味しいし、楽ですよね。
___野菜の下ごしらえって、結構手間がかかりますものね。
(aki)
お米にしても、玄米を食べだしてからシンプルになった。
玄米ってあんまり洗わないで良いんですよ。白米は濁りがなくなるまでちゃんと洗わないと糠臭くなる、って言われる。でも玄米って、2〜3度お水を替えるぐらいでOK♪。
玄米でも、発芽玄米を自分で作り出してからは、もう全く洗わないで良い。バットに玄米を入れて、水を張って毎日取り替えるだけ。それでもう、取り替えてるのが洗ってる状態だから、あとは炊くだけ!
美味しいし環境にも良いし、一石二鳥どころか、たくさんラッキー♪
(tra)
日々のものだから、楽しさと共に楽さ加減は絶対必要ですからね。
___続けられないと、意味が無いですものね。
(tra)
植物性の料理は、一見手間がかかって大変に思われがちなんだけど、実はどんどん楽になってるんですよね。
(aki)
調理も下ごしらえも、シンプルなのが一番。美味しいし!
(tra)
だからオーガニックっていうのが大事になってくるんですよね。丸ごと食べるから。
だけど今の時代、百点満点はなかなか難しいですからね。ベストを求め過ぎてしまっては、良いもの食べても楽しそうじゃない。
(aki)
いくらオーガニックだからと言って、萎れたオーガニックは嫌だしね。新鮮な方がいい。
(tra)
僕は昔、自然食品屋もやっていて、北海道や九州から無農薬のオーガニック野菜を仕入れてたことがあるけど、結果として三重苦ぐらいになっちゃうのね。どういうことか言うと、一つは、採ってから日にちが経つので、葉物はやっぱり萎れちゃう。それに、ただでさえコストが高いうえに送料が加わる。
農薬に関しては、お百姓さんが一番分かってるんですよ。だけど、流通とかいろんな仕組みが、結局使わざるを得ない。買う人たちも、頭では分かっていても、スーパーに行けば、萎れてたりいびつではない、見た目がキレイな方を手に取っちゃう。 それはお百姓さんが悪い訳じゃなくて、今のシステムが問題なんです。
だから僕らが勧めたいのは、やっぱり生鮮品は近場のもので揃えるのが一番賢い。値段も安いし、新鮮だし。
小田原とかこの辺は、有り難いことに、お百姓さんがまだいらっしゃるじゃないですか。ですから、近くにいるお百姓さんたちが自分たち用でつくってますから作っているものを分けてもらう ようにするのがひとつのコツですね。農薬的なことも、ある程度コントロールしてるでしょうし。
100点満点は無理にしても、それぐらいが丁度良い加減じゃないですかね。
(つづく)
20 May
「風土」と「food」
『Cooking Live』
___ 熱海の自宅での『Cooking Live』。「お教室」ではなくて「Live」って言う。
(aki)
「Live」です。(笑)
参加してくださる方に、私が料理してるのをお茶を飲みながら見てもらう。それで、食べて帰ってもらう、みたいな。
___ どうしてそういうスタイルを?
(aki)
こういう形って、外国に行くと結構あるんですよ。クッキングクラスって言うと、ライブ型が多い。出来たものを試食程度一口ずつ食べて帰るっていう。
以前は、一からみんなで作るクラスをやったんですけど、なかなか自宅のキッチンなのでやっかいで、ライブ方式にしたら、料理出来る人も出来ない人も楽しめる利点があって。だから食べたいだけの人も参加できるし、夫婦で来てくださったり。
ライブの前に、その時々に使う素材のちょっと真面目なお話もさせて頂いてます。食べ物と身体や環境とのつながりとか、食べ物の神話やいわれだったり。
___亜希さんの作ってる姿がすごく楽しそうで、それを見てるだけでもおご馳走になる。
(aki)
料理、すごい楽しいです! 元気になるし。
野菜って、可愛いですよね。色とか、形とか。天然のアロマテラピーだしカラーテラピーだし。野菜、スゴイな!
___自然の造形ってすごいですよね。
(aki)
もう、あっぱれだし、逆らえないし。スゴイなぁって思う。強いし。ファーストエイドですよね。
キッチンって、その中でほとんどの身体のバランスを整えられちゃう。もちろん、現代医学を否定するわけではないけど、今ちょっと頼り過ぎというか、そっちにウェイトが置かれ過ぎだと思う。
もっと、昔からの知恵みたいなものを日常で使っていけば、ある程度バランスが崩れないだろうし、崩れちゃった時、少しでもゼロに持ってけるような感じのこともできる。
『Air Tropica』
___毎回のライブでのメニューが、またユニークですね。『Air Tropica』という企画で。
(aki)
旅が好きで、行ったこともないのにそこの料理とか紹介しちゃってるんです。(笑)
どこかに行った時に一番楽しいのは、そこの国のマーケットだったり、そこの国の伝統食だったり。 先進国に行ってもそうじゃない国に行っても、そこの国のお母さんが作ってるものとか、ストリートフードとかローカルフードとか、それが大好きで興奮状態になる。
___実際には、今まで、どんな国へ行かれたんですか?
(aki)
東南アジアはすごく多くて、でも何年か前からハワイ島に御縁が出来て、アメリカによく足を運ぶようになりましたね。
アメリカは、ヘルスフードとかナチュラルオーガニックという店は、スゴイですね。普通にあるというか、多いです。
去年の暮れ、初めてヨーロッパに行ったんですよ。逆にヨーロッパって、ヘルスフード屋をあえて探さなくても、例えば普通のスーパーに行っても、オーガニックのものが一緒に置いてある。添加物いっぱいの真っ赤なジュースの隣に、オーガニックな100%のジュースが普通に置いてある。そういう普通さに、結構感激した。
ハワイなんかも、どんな小さい街に行っても、必ずヘルスストアーがある。
___提供する側が、そういうマーケットを開拓したのかしら?
(aki)
選ぶ側と両方じゃないかな。どうなんですかね。
(tra)
結局、経済とも関係してくるからね。
ヨーロッパって、今の世の中の基本を作って、全部やった後ですからね。ひとつの生き方として、ある程度完成されてる。で、完成されて、お金もあります、何もありますっていった時に、例えばヘルシーとかビューティーとか、お金で買えないものに精神的な意識が行く。だから、普通のお店にクォリティの高い物が並んでる。それでいて、それをチョイスできるのが、今のヨーロッパ。
で、アメリカはその後ですからね。今度はオーガニックが新しいよ、って勢いがある。日本はそのまた後を追っかけている感じですよね。
アジアになると、今やっと経済的に食べれるようになって、物質的な幸せが花開く時。
ザクっと世界を見て周ると分かるのは、やっぱり順番があって、食べる物にも困っている人達にとっては「今日何が食べれるんだ?」っていう意識が高いけど、それが進んでくると、量じゃなくてクォリティ。それは、僕、良いことだと思うんです。
「風土」と「food」
___「 食」は文化とも密接に関わっていますね。
(tra)
「food」と「風土」はイコールだと、僕はいつも思う。どこの国にも食文化があって、好みはあるけど、どこが素晴らしくてどこが悪いってことは一切なくて、みんな理にかなってる。
たとえば日本だと魚主体だったり、寒い国に行くとお肉が主体になったり、暖かい国へ行けばフルーツが主体になったり。まさしくそれぞれの環境と食べ物が一つになって食文化ができてるから、その違いを見るのがてつもなく楽しい。
また、その中に共通したものがあって、例えば新鮮とか採りたてとか季節とか。そういう意味では、食べ方というよりは、共通した所が一番いい所っていう感じかな。
(aki)
必然的に、主食が変わるとおかずが変わる、って感じですよね。
___それぞれの国の料理を食べると、胃袋でその国の文化が分かる気がします。
(aki)
作っててもインド人になったような気分になる。餃子とか伸ばしてると、中国人になったような気分。(笑)
(tra)
食べ物とそこに暮らしてる人と、それが密接っていうのが分かりますよね。理にかなってるし。
「素食」
___では、日本で生まれ育って暮らしていて、どういう所に目を向けて考えていったら良いでしょう?
(tra)
「素食」がひとつ基本ですよね。「粗食」じゃなくて。
もうひとつ、この時代、気をつけなくちゃいけないのは、やっぱり添加物。ほとんどの食べ物に添加物が入ってるから。
(aki)
あと旬、シーズン。さっきの風土の話じゃないけど、人間の身体も自然だし、野菜も自然だし、 その季節に必要だから生る。 旬のものって美味しいし、安い。
択べる時には、択ぶ。択ぶって、楽しいし。
(tra)
みんな毎日毎日、洋服でも音楽でも、今日どこ行こうかとか、チョイスしてる。添加物いっぱいの食べ物と、ヘルシーフードっていうものが2つあるとすれば、ヘルシーフードの方が良いよね。あとは好みもあるから、その中でアレンジして。
だから「チョイスを楽しむ」ってことかな。
(aki)
私、ベジタリアンなんですよ。楽しいし美味しいから。
日本にも、「マクロバイオテック」や「正食」や、そういうレストランがあるんだけど、いつも疑問に思っていたのは、良いものなのにビジュアルが悪い。妙にそれが特別なものにされていたり。
例えばイタリアンレストランに行って、「え、なんで醤油味が無いの!?」とは感じないでしょ?でも、ベジタリアンだって言うと「え、なんで?」って。
「今日、点心食べに行こうよ」っていうのと同じ線上にベジフードが置かれたら、それはすごく楽しい。普通に「じゃぁ、今日はベジにしようよ」って、選択のひとつとしてあったらいいなって、いつも思う。今、だんだんそういう風になって来てるのかな。楽しくなって来た。
動物性のものと言っても、別にお肉が悪いワケではない。島の人だったら、お魚を獲って太古の昔から食べてきてる。だけど今は、お肉を摂り過ぎだったり、工場で牛が作られていたり、そういうのが悪いんであって、過ぎてるだけ。もちろんインパクトが強いものなんだけど。
あとはもう、野菜、美味しい! 軽いし、楽しいですよね、ゆくゆくは野菜を作りたいけど、ファーマーにはなれないな。ガーデンで野菜が出来たら良いなと思う。
___野菜から作ることも考えてるんですか?
(aki)
今、自分で作ってるのはスプラウト。スプラウトは、キッチンで出来る一番小さな畑。新鮮だし、土が無くても出来るし、エネルギーも高い。
スーパーで売ってるスプラウトも、一回日光に当ててあげるとすぐ元気になって、緑色がキュッと強くなる。お日様のエナジーってスゴイから、ちょっと当ててあげると美味しいかな。
___太陽のエナジーをいただく。。
(aki)
お日様はもう万歳ですよね。いちばんダイレクトだし。
「いただきます」
___食生活を変えるというのは、ライフスタイルを変えることになります。習慣を変えるキッカケとしては、どんなところから始めたら良いでしょう?
(aki)
私は伝え手の立場として『Cooking Live』では毎回お話するんだけど、調味料だけは偽りのないものを使ってもらいたいと思う。美味しい調味料を使って、楽しく料理すれば、誰でも美味しいものが出来る。ただ切って混ぜただけでも(笑) これは、一番のポイント。
値段の高いものじゃなくて、ゴマカシの無いもの。例えば、味噌だったらちゃんと寝かして作ったもの、油だったら薬品を使わないで搾ったもの。もちろんそれがオーガニックだったらより良いんだけど、それ以前に、添加物の表示を見る。買い物する時に、表の文字にゴマカされないで、裏の表示を見る。
あとは、その人それぞれのこだわりだと思う。
___とすると、やっぱりお家で作って食べるのが良いのかな?
(aki)
お家のゴハンって、いちばん美味しいと思う。
レストランやラーメン屋さんに行って「不味いからもう行きたくない」って話はボロボロ聞くけど、友達の家にゴハンに呼ばれて「お前のお母さんのゴハン不味いから2度と行きたくない」っていう経験はしたことない。(笑) もちろん好みはあるけど、家庭料理って想いが伝わる。
インドの修行僧の話を聞いたことがあって、ある修行僧が山から下りて次の山に行く間に、町を通って、食事をするのに食堂に入って、そこで出された食事を食べたら、突然、苛立ちを感じたらしいの。で、修行僧だから、「この自分の感情はどこから来たんだろう?」と思って、キッチンを覗いたら喧嘩しながらその料理をしてた、っていうお話。
___その波動をもらっちゃった?
(aki)
やっぱり、伝わる。
自分でも実際に体験したことあるし、もうちょっと向こう側まで見れば、偽りのないものっていう話にも繋がってくる。生産者の顔が見えるもの、とか。
そうやってグルグル考えると、作物は天から降る雨の恵みで出来ていて、その雨がキレイじゃないと、って環境問題に繋がってきて、それが自分の所に返ってきて。。
本当に、キッチンの中でグルグルしてます。(笑)
___そういう大きな「輪」を考えると、「いただきます」っていう言葉はスゴイですよね。
(aki)
マントラですよね!
(tra)
「いただきます」と「ごちそうさま」っていう言葉は、「もったいない」と同じように素晴らしい言葉だと思う。世界中、有りそうで無いよね。長いお祈りはあるけど。
「いただきます」は、「これから食べるよ」っていう合図でもあるけど、「すべてに感謝」っていうのをたった一言で表現しているし、「ごちそうさま」は、食べてお腹いっぱいになった自分の満足を表す言葉でもあるけど、食べるってことは何かの命なりエネルギーをもらうワケだから、それに対する「感謝」ですよね。
それを日常の中で、普通に日々営まれている、っていうのが素晴らしいし、理想ですよね。
___命をいただく。。
(aki)
私たちは食べ物で出来上がってるから。
(tra)
本当に、実際そうだからね。
命にありがとう、命にごちそうさま、って思うんです。
(つづく)
13 May
「つたえる」「もてなす」
フーテンのアーチスト
___最初にくだらない質問ですが、 白澤さんはどうして「traさん」って呼ばれてるんですか?
(tra)
あのね、昔、学生時代にね、僕は旅好きなんでバック持ってよく出掛けてたりしてたのね。で、そのまま居なくなっちゃうワケじゃないんだけど、しばらく消えちゃうって言うか(笑)。
それで、まぁ日本の人は皆「フーテンの寅さん」って言うのが一つあるじゃないですか。あと、ドラ息子って言われてて、その辺が全部混じって、ある時から「トラ」って言われるようになってたの。
ただ、表記は「TORA」じゃなくて「tra」にしてる。これはね、逆から読んでもらうと分かると思うんですけど「ART」。
僕は芸術家じゃないけど、生きてるってことは、 全ての人生がアートだと思ってるし、そういう思いも込めてるんです。
ま、後からこじつけた事がいっぱいあるんだけどね。(笑)
内側から
___小田原とのご縁というと、川瀬学園で教鞭をとっていたというお話ですね。
(aki)
はい。週に一度、友人と4人で「美と健康」と題してクラスを持たせてもらって。
私と白澤さんは「内側からの美」ということで「食」。友人は「外側からの美」ということで、一人はアロマテラピストもう一人はヘアメイク。「美」って、どっちが欠けても完成しないじゃないですか。
私達は、食べてる物が身体に対する影響とか、環境に対する影響とか、そういった所にフォーカスしながら、時にはノンシュガーのケーキを焼いて行って皆で食べたり、玄米のおむすびを食べてみたり。結構楽しいクラスを持たせて頂いてたんです。
___反応はいかがでしたか?
(aki)
かなり良かったみたいですね。
全然興味の無い話とかしてるとバラバラしてるんだけど、ちょっと興味のあるような言葉を出すと、皆の反応がグッと来るのがすごく分かって 、生徒さんの反応ってすごく感じる。
終ってからも聞きに来たりっていうことが毎回のようにあって、2年間って言われて始めたけど「すごく評判がいいので、もう少しやってください」って、学校の方から言われて、トータルで4〜5年間。結構楽しいクラスでした。
(tra)
特に僕らがやっていたのは「マクロバイオテック」。
「マクロバイオテック」って、外国のものみたいに聞こえるかも知れないけれど、もともとは日本から世界に発信されたもので、日本でポピュラーになってきたのはここ数年。「食」を大きな柱として、自由にイキイキと生きる為のひとつの方向を伝えてる。当時はまだ、一般の方は知らない言葉だったと思う。
あと、ファッション系の学校だから、動物愛護とか動物実験とか家畜とか、食物ばかりじゃなくて、自分達の暮らしの中で隠れていることを伝えたりしたんです。
___ 実習もなさったのかしら?
(tra)
実技教室のある学校ではないから、基本的には、方向性とかものの見方や考え方とか。
ただし、それだけだと片手間になっちゃうし、とにかく自分達の日常の生活に役立ててもらいたいから・・
(aki)
家からケーキ焼いて持って行って、「白いお砂糖使わなくてもこんなに美味しい!こんなに甘い!卵使わなくてもこんなにふわふわ!クリーム使わなくてお豆腐でこんなにクリーミー!美味しい!」っていうのを、先ず伝えた。
お砂糖と卵を使って出来るのがケーキだっていう概念みたいなものが、ガラガラ音を立てて崩れていくような感じで。
その後に、卵とか、白い精製したお砂糖とか、ミルクなんかのアレルギーの話をした。
女の子って、おばさんであれ若い子であれ、いつまでも美しくありたいと願っていて、いつも「美」っていうところに繋がるから、それにフォーカスして話をした。
(tra)
「美と健康」って、まるっきり同じことなんだと思うのね。みんな望んでることはその両方だと思うし。
あとは、やっぱり食べ物だからね、それがいくらヘルシーでも美味しくないとね。
食べ物に関しては、まず美味しいってことが一番最初に来て、その美味しいものがヘルシーだったり、ビューティーだったり、もう一歩いけばそれが環境とかにも全部に役立つっていうことを、食べ物を切り口にして話をしたんです。
うれしい、楽しい、幸せ
___亜希さんは昔から料理が好きだったのかしら?
(aki)
料理が好きというか、手から作る物が小さい頃から好きだったみたい。
振り返るとわかるような事がたくさんあって、料理が好きっていうのもあるんだけど、 何かを作って人に食べてもらったり、人が喜んでる姿を見るのが楽しくて。
今、料理を道具として、人が幸せそうに喜んでる姿を見るのがめちゃくちゃ楽しい。
大きなケータリングの仕事で、会場まで持って行ってそこで終わり、っていうのが一回あったんです。作る段階はすごい楽しかった。大きなお鍋で、魔女になったような気分で! でも、最後まで顔が見えないでプツンと切られちゃった。
そのケータリングを経験して、「あぁ、作るのも楽しいんだけど、やっぱり喜んでる姿を見たかったぁ」って思った。美味しいとか不味いとかじゃなくて、食べ物ってみんなを幸せにする。
___エネルギーって「行って戻って」でひとつのサイクルだから、作りっぱなしだと完結しない、、
(aki)
「つまんない!」って言ったら変だけど「見たかった!」って感じかな。それが作り手にとって、一番のデザートですよね。
だから、私は料理で包丁を道具としてるんだけど、もと佳さんは美容師でハサミ、刃物同士(笑)
で、私もそうなんだけど、 たぶん女の子は髪を切ってもらってキレイになったら嬉しいし、その嬉しい姿っていうのを生むのが楽しいんじゃないかなって思う。
___それがガソリンですよね。
(aki)
人が喜んでる姿って、ホント幸せになるから、皆が幸せでいてもらいたいな。そういう意味じゃ本当に世界平和願いますよね。(笑)
くるくるの円
___traさんは、家業が「伝統食」だった?
(tra)
うちの実家は、熱海の方で、伊豆や箱根のホテルや旅館の下請けみたいな仕事なんです。懐石料理の、季節感を表す脇役を作るんですね。
元々そういう環境で育ってるから、食べ物っていうのが生まれた時から身近にあって、それを特に意識したことも無かったんだけど、学校を出てしばらく音楽の仕事をやって、いろいろあって家業を継いだ時に、改まって面白い事やってるなぁって思った。うちの仕事って「伝統食」じゃんって。すごく発見だったんですよ。
だけど、 やっぱり旅館の下請けですから、食品を扱ってるとは言いながらも、最終的に食べてる人の顔は見えないワケですよ。
で、ある時家業から抜けて、その後、自分なりに「自然食」だとか「ベジタリアン」っていう植物性主体のライフスタイルになったり、一本つながって深く広くなってるんです。
食べ物っていうのは、やっぱり「作り手」と「食べ手」っていう意味ばかりじゃなくて、相乗効果のエネルギーの円によって、楽しくなったり、美味しいモノを作ろうとか、そういうものが出てくると思うんです。
そういう意味ではね、家業の伝統食がキッカケではありますけど、それから随分スタイルそのものは変わっているし、自分にとっては理想に近づいている感じかな。
___「つたえる」「もてなす」というコンセプトは、その辺にルーツがあるのでしょうか?
(tra)
そうですね。
たぶん、料理する人って自分のために料理しないと思う。亜希さん見ててもそうだけど、やっぱり食べる人がいるから作る人がいて、作る人がいるから食べる人がいる。
そういう意味で、「つたえる」「もてなす」って一見別の言葉に聞こえるかも知れないけど、基本は「一緒に卓囲んで、楽しい時過ごそうよ」っていう思いなんです。
___亜希さん、 一人だとどんなもの食べてるの?
(aki)
リンゴがあればいい。(笑)作ろうと思わないですよね。火も着けない。切らない。
___私も自分の髪は後回しで、自分では切れないし、やっぱり気持ち良くないですよね。事務的に邪魔だから切るぐらいの感じ。
(aki)
私もそう。「お腹が空いたから食べる」みたいな。 ちょっと、動物みたいだよね。(笑)
___やはり、そこに料理する人の「気」が入るというか、その有り無しは大きいなと思う。
(tra)
それがある種、LIVEみたいなものですからね。
___共同作業ですよね。作り手と食べる人との。
(tra)
ですよね。
これはもう、どんなことでも本当はそうなんだと思うんだけど、相手がいて自分がいて、それが限りなく、別れてるんじゃなくて、円になってるような、そんな感じだと思うんです。
(aki)
くるくるだよ。アートって。
(tra)
そうだね。エネルギーって。
(つづく)