Complete text -- "街角の店"
29 July
街角の店
叩き上げ
___貴金属の世界でも、カリスマ的なデザイナーとかいらっしゃるんですか?
例えば、スペインのホアキン・ベラオさんや、ティファニーにいらっしゃるピカソの娘さん(パロマ・ピカソ)とか。
日本にもいっぱいいらっしゃいます。
ほとんどの方が、専門の学校に行って彫金や石の勉強をしてる方が多いと思うのですが、私は家業だったので、叩き上げのような感じで(笑)。
普通の大学で心理学をやって、卒業したらすぐにこの仕事をやらなくてはいけない状況で、専門の学校に行ったことはないんです。必要な時に必要な部分だけを習いに行くような感じでした。
___教室での教え方にも、それが反映しているように思います。自由にやらせる部分と、ガイドラインをきちんと示す部分と、そのバランスを心得てらっしゃるように見えます。
せっかくいらしていただいているので、一つは技術が上がっていただきたいという思いがあるんです。だけど、楽しいことが一番。楽しく、キレイに、自分が良いと思ったものを作っていく。
なるべく自由に、思ったようにやってもらって、ポイントだけ「工具の使い方はこう!」みたいな時に言わせていただく。
全員に同じことを言っても仕方がないですよね。その人に必要のないことだと覚えられないし。
___教える場面でも個別対応。
個別ですね。私の場合、クラスは8人くらいまでです。
人の始まり
___心理学を専攻されていたということは、先生をめざしていた?
小学校の先生になりたかったんです。
「教育」というか、人の始まりの根底のようなところを一緒に勉強できたらおもしろいだろうと思っていたんです。
___話が大きくなりますが、今の「教育」についてお感じになることなどありますか?
話大きいですね(笑)
「ゆとりの教育」とか言いますが、何か違う気がします。もっと根源的な「自然」の所に連れ出すような時間があった方が良いですよね。
「街」の価値
___ジュエリーショップというと「街」と切り離せない。「街」の中での存在。かたや「スローライフ」など、「街」から離れることへの価値観がある。その辺は、どうお考えですか?
出来れば「街」から離れたいかも知れない。
高価なダイヤモンドを見る時も、もっと空気のキレイな所で見た方が良いと思うんです。 アクセサリー・スクールも、すごく風の入る所で出来たら気持ち良いと思う。光とか。空気感。
ジュエリーショップというと、黒が基調でピンスポットが当たったいるような暗いお店がいっぱいありますが、私は違うと思うんです。もっとナチュラルな場所で見た方が、本当の色も分かるし、嘘がない。そういう所で見た方が良いし、選んで欲しいと思う。
___貴金属についても、「街」を離れて商売が成り立つと思いますか?
やってみないと分かりませんが、ナチュラルなストーンの場合は、かえってその方が良いと思います。
都会的なもの、都会にいる人が選ぶジュエリーは、少し難しいかも知れないですが、逆にそれを価値を思って買いに来てくれる人はいると思うので、やってみればまぁまぁ成功の方じゃないかと思います。
___私も美容師として「街」との繋がりはテーマなんです。流行と切り離してのファッションは有り得ないので。
でも、「美」という精神性が経済システムに取り込まれていることに、違和感を感じています。
私もそういう仕事に関わっていて、いつも居心地が悪いことは悪いですね。
___藤沢さんの場合は、「天然石」というのが一つの突破口なのでしょうか?
「自分が息が出来る」というか「自然」になれるところのような気がします。高価な貴金属だけでは息が詰まるところがあって。
でもかたや「流行」は面白いですよね。都会から切り離された所に移って行ったら、それが新たな悩みになるかも知れないですね。 流行のものを置いてもあまり意味がなくなる。
___ 最先端のものと、地に根を張るもの。 私たちが両方見れるアンテナを持って「媒介」になれば良いのかな?
そうですね。
あとは、「街」そのものについても考えた方が良いかも知れないですね。ココにいながら、この街がもっと自然に近づくようなことを考える。
街の良さは、人がたくさんいて、人が簡単に出逢えたり、情報を直ぐに分かち合えたりすることだろうと思います。街角に店をつくることは、出来るだけ長い時間店を開けて、たくさんの人が入り込めるような場所をつくる義務があるような気がするんです。
私がココにお店を出して人と人が繋がっていく場所をつくることによって、どういうカタチか分からないけども、自然にみんながこの街を居心地の良い空間にしていくような努力を協力してできるような、そういう流れがつくれたらいいと思っています。
___人が集まる場所を提供するということは、すごく大きな意義がありますね。
それは商売をやっていく人だったら義務みたいなものだと思っているんです。
それで私たちも生活させていただいているのですから、いろいろな人と逢う機会があって、より良い何かを生み出す力が生まれるような場所を、いつもここに作っておくということがとても必要ですよね。
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