Archive for 08 July 2007
08 July
「天然石」と「習い事」
家族や親戚にはモノを作る人が多いんです。
___お店のジュエリーのうち、手作りのものはどのくらいあるんですか?
ビーズアクセサリーは100%ウチで作っています。天然石に穴が開いたもので、ガラスやプラスチックのものとは全く違うものです。
貴金属のものは、私が注文して他所の工場で作っているものが多いですが、オーダーがあったものは作っています。
___では「作る」と言うより、「デザイン」とか「プロデュース」という感じなんでしょうか?
そうですね。集めてくる、とか。
「ここをウチのお客さまに向けてこうして下さい」ということを細かく注文したり、そういうことでは工夫をしています。
___オーダーの物は多いですか?
半分くらいでしょうか。
毎月新しい作品をつくっていくのですが、それを見て「私にはこれはちょっと重い」とか「ここは気に入っているけど、、」というようなことをお伺いしたら、それをその方に合うように工夫して変えています。
___作家としてこだわってらっしゃる事はありますか?
父は貴金属の彫金の職人で、京都の母方の家に修行に行っていたり、家族や親戚にはモノを作る人が多いんです。ですから、モノを作るということはとても自然なことで、意識をしてこだわっている事は全然無いんです。
頼まれたものを直ぐ形にしたいとか、その人に合うものを作ってあげたいとか、ただ自然の成り行きでそうなっているだけで、自分はこうしたいというのはあんまり無いです。
デザインで感動して欲しい
___天然石はブームですが、石選びの相談は受けますか?
私は、その人がピンと来たものを買っていただくのが良いと思っています。自分が今欲している石を選んでいただく、そういう強さが皆さんにあって欲しい、といつも思うんです。
ですから、石の効能とか、そういう話はあまりせずに、インスピレーションで選んでいただきたいと思っています。
___石とデザインと、どちらが先に決まるんですか?
私の所ではデザインでしょうか。
天然石を扱う人からは、石の効能というようなことをもっと打ち出した方が良いという意見をいただくのですが、デザイン性ということでもっと感動して欲しいと思っています。
縛らない。自由。
___作品をつくる教室もなさっていますが、どんなアプローチをされているのですか?
できるだけ自由にしていただきたいのが本心です。
自分に合う色や、自分の好きな石を自分でお選びになるのが一番だと思っています。けれど、そう言うとなかなか選べないので、初めは提案をして、キットを用意して、すぐに始められるようにしています。
テクニックが身に付いてくれば余裕も出てくるので、石選びも「こうしたい」というのが同時に出て来て、私から見ても楽しく素敵なものを皆さん作ってくれています。押しつけではない自発的なものを皆さんに作って欲しいと思って、この活動を続けています。
___教室では、自由にやらせることとキチンと伝えることとのバランスがお上手だと感じました。
聞いていただいたら教える、という感じなんです。
他所の教室だったら、「先生」と呼ばれて、テキストがキチンとあって、段階を踏んで、というふうにしますけど、できるだけ私は「先生」と呼ばれたくなくて(笑)
必要なテクニックを必要な時に体得していただくような形が「大人の習い事」なのかな、と思っているんです。
___教室を始めてからどのくらいになるのですか?
今年で10年になります。
その間ずっと通って下さっている方もいらっしゃいますが、ウチは入会金もなく、コンスタントに通わなくても良いシステムになっていて、どんなに長い方でも一回一回申し込んでいただく形なんです。
それは私にとっては厳しいことで、作品がつまらないものだったら人が少なくなるだろうし。だけどそれを縛らないで、やりたい時に自由に、という考えです。
その人の人生において、いろいろ波があると思うんです。すごくアクセサリーを作りたい時もあるし、他のことに興味がある時もあると思うので、長い目で見ておつき合いして頂きたいと思ってこういうシステムをとっています。
毎月申し込んでいただく方は本当にありがたいと思いますし、子育てで2〜3年休んで復帰される方もいて、それは自由で本当の形かなと思っているんです。それが長く続いた秘訣かな。
縛らない。自由。(笑)
お顔が輝くと、本当に嬉しいです。
___生徒さんも、いろいろな体験をなさっているのでは?
そうだと思います。
あまりつぶさには聞かないのですが、表情で分かりますよね。自分の力ではどうにもならない、天然の石の難しさに皆さん辟易としていることがあるんですよ。(笑)
だけど、2時間3時間やっていると、なんとか形になっていく。そうすると、やっぱり、お顔が輝きますよね。
「本当に来て良かった」「本当に楽しかった」って言ってくださって、その顔を見せていただくと本当に私も嬉しいです。
石の色を見たり、触ることでその温度の冷たさを感じたり、それがすごくヒーリングになるとおっしゃってくれます。「何を作る」とか「そのアクセサリーが自分に必要か」ではなくて、ただ「石を触りたい」ということで来られる方もいらっしゃいます。
___「作る」という行為の過程では、いろいろな「気づき」があったりしますよね。
私自身、あんまり考えずに作る時と、デザインを絵に描く時と、いろいろなやり方で作りますが、天然石というのは人間が作ったものではないので、予想外のことがあります。それによって引っ張られて行くようで、スランプがないです。
もし同じ材料を使って新しいものを生み出そうとしたら、きっとどこかでつまずくんでしょうが、新しい形のものを発見したり、自然から出た色に感動したり、思っていたものと全然違ったり、それが楽しいところですね。
私のやりたいのはこれだった!
___教室を始めた10年前というと、天然石のブームより早かったのでは?
ビーズブームが始まった頃でした。私は宝石を扱っていたので、天然石だけを使ったアクセサリーを作る講習会をやってみたらどうか、ということから始まったんです。
ビーズブームの中で私に期待していたことは、ビーズで編むストラップやネックレスを、素材の良い天然石に置き換えて作る、というニーズだったんですね。だから初めは、天然石なんだけどカットの揃ったものを使って、ビーズで作るのと似たような技法で教えなきゃいけなかったんです。
でも、私のやりたいのはそれとは違った。
___と、おっしゃいますと?
天然石である以上、本来その石にあったカットにするべきなんです。例えば、トルコ石だったら、4ミリにカットしたりする必要はなくて、ただゴロゴロとした石をそのまま活かしたい。
でも流行っていたのは3ミリや4ミリの細かい雰囲気のものだったので、ちょっとバランスをとるのは難しかったです。
___そういう意味では、時代が流れてきましたね。
そうですね。皆さん、一通りやったと思います。(笑)
それで今、興味があって残っている方は、もっと上のものを目指してる。そうなると、ちょうどウチみたいに天然石を活かすアクセサリー作りをしてる所へ来るとビックリして、「あ、私のやりたいのはこれだった!」って言ってくださいます。